
我々人間は、ornithine-urea サイクル経由で産生された尿素を介して、窒素の大部分を排泄します。核酸プリン体はアミノ酸と代謝経路が異なり、尿酸として排泄されますが、絶対量は多くありません。大部分(95%) の窒素排泄物はたんぱく質、アミノ酸由来です。もちろんクレアチニンなど他の物質としての窒素排泄も存在しますが、絶対量は微量です。他の動物に目をむけると、クモやダニなどはguanineとして排泄したり、ダンゴムシ(pillbug)のようにアンモニアガスを噴出したり珍しいものもいます。しかしながら、広く一般的に動物の窒素排泄方法は、以下の3つにまとめることができます。
1.アンモニア/アンモニウム、2. 尿素、3. 尿酸
1.アンモニア/アンモニウム
最も原始的な排泄方法です。周知のとおり、アンモニア/アンモニウムは体に蓄積すると有害です。理由の一つとして、アンモニウムとカリウムは水の中で似た特性を持つために、Na-K-ATPaseを含めたトランスポーターに非特異的に入り込み、その結果、特に脳神経細胞において問題となります。“似た特性”というのはionic radius, hydrodynamic radius, mobility to H2Oなどを指し、私の理解の範囲を超えます。アンモニアそのものの毒性よりも、アンモニア過多によりglutamateとalpha-ketoglutarate間の反応のバランスがglutamateに傾くことがトラブルの原因ともよく言われています。例えば、1)glutamateが浸透圧物質として作用すること、2)glutamateが脳のNMDAレセプターを刺激すること、 3)TCAサイクルの一物質であるketoglutarate減少によるATP欠乏、などがあげられます。
アンモニアはトラブルのもとにもかかわらず、多くの魚にとって、アンモニアが窒素の最終代謝産物です。理由は1)アンモニアは尿酸や尿素をつくるよりもエネルギー効率が良いこと(少ないATPで産生可能)、2)魚は水中で生活するので、常に鰓からアンモニアが拡散するため、体内への蓄積が抑えられる、の2点があげられます。魚は哺乳類よりはるかに高濃度のアンモニアに耐えられる、といわれていますが(2 mM versus 50 uM/L)、臨床的意義は不明です。
上記のアンモニウムとカリウムの類似性は、必ずしもネガティブな影響を及ぼすわけではありません。腎臓の近位尿細管でつくられたアンモニアが遠位尿細管にたどりつくためにも、アンモニウムとカリウムの互換性が利用されていると考えられています。
次回は2.尿素、3.尿酸についてふれてみます。
波戸 岳