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Countercurrent multiplication

腎臓は1日あたり180Lもの濾過機能を有しますが、その1%前後しか尿として排出しません。その理由は水と電解質のほとんどは主に近位尿細管とヘンレのループで再吸収されるためです。体液バランスの変化に対応するため、人は尿を血漿浸透圧の1/5程度まで希釈したり、最大1200osmol/kg前後まで濃縮することが可能です。尿は浸透圧の高い尿細管間質と平衡状態に達することにより濃縮されますが、間質は一体どうやって高い浸透圧に達するのでしょう? これにはヘンレの太い上行脚 (thick ascending limb: TAL) における countercurrent multiplication というネフロンのユニークな機能が関与しています。
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TALは水に透過性がありませんので糸球体で濾過された尿が285mmOsmであると仮定すると、この図 から分かるようにTALではNaClのみが再吸収され、その結果、尿細管腔は低浸透圧になり、間質は高浸透圧になります。その後、下行脚の尿は浸透圧の高い間質と平衡状態に達します。この過程が繰り返し行われ最終的には髄質では高い浸透圧を作ることができます。したがって遠位尿細管に尿が達するころには尿は極めて希釈された状態であることがわかります。もし水をたくさん飲むと、水は腸管から吸収され、血漿浸透圧は低くなりますので、下垂体からvasopressin (ADH) の分泌が抑制され、集合管における水の再吸収が抑制され、上記の希釈尿はそのまま尿として出ていきます。一方、塩分負荷は血漿浸透圧を上昇させ集合管でのADHの作用から、アクアポリン (AQP2) が尿細管腔側に誘導され水を多く吸収することにより尿は濃縮されます(実際は口渇中枢が刺激され水を飲むためvolumeが負荷された状態になります)。また、ureaは集合管髄質遠位部で濃度勾配によって受動的に間質内にurea transporter(UTA1)により取り込まれますが、これはまた別の機会に話します。
このように最終的な尿の濃縮調整は集合管におけるADHに依存していますが糸球体で濾過された水と塩のほとんどは近位尿細管やレンレのループで再吸収されています。それを可能にする countercurrent multiplication はとてもユニークなネフロンの機能です。

T.S
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