「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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なぜ腎臓内科医になりました?

米国における腎臓内科の人気のなさは以前にも触れましたが、2012年度のnephrology fellowの応募状況をみてもその様子がうかがえます。私のいるプログラムでは今年は40%程度応募者が減ったようです。これは全国的に共通しているようでASNのkidney news でも取り上げられていますが、内科のsubspecialtyのfellowshipのポジションは2002-2009年にかけて全体では増加したものの、腎臓内科と老年医学のみ、AMG(American medical graduate)の比率は減少しています。この理由はいくつかあると思いますが、大きな理由がお金と医師としてのquality of life(QOL)だと思います。
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アメリカでは医学部(medical school)に入るためには、4年制の大学を卒業することが必要で、仮にストレートでその後medical schoolに入学したとしても卒業するころには年齢的には26-27歳になります。実際、大学卒業後にmasterやdoctorのdegreeを取得したり、いったん就職してからmedical schoolに入学する人も多々いることを考えると、医学部卒業後、研修医を最短3年行い(家庭医学や内科、外科は最低5年)、さらに専門研修を2-3年すると(腎臓内科は2年、循環器や消化器などは3年)一般大学を卒業してから自立するまでmedical schoolを含め10年以上の研修期間がある計算になります。またAMGは平均して医学部を卒業する段階で学費ローンが2000万円近くあるとされますから、家族や子供がいてローンを返済し、安定した生活を送るためにはよりよい報酬とQOLを望む気持ちもわからないでもありません。

米国に来て思ったことの一つとして、資格を必要とする仕事とそうでない仕事の給料格差です。資格を取得するために要する研修期間と給料が比例しているかどうかはわかりませんが、少なくとも研修期間が1年の仕事と5年の仕事では後者の方が断然高い給料を通常望めます。日本では必ずしもそうでないですよね。むしろ資格を取っても、それ相応の給料をもらっていない職種も多い気がします。何年研修し、特殊な技能をつけたのだから、それだけ良い給料をもらえるという考え方はとても単純でわかりやすいですし、そうあるべきだと思います
医師はお金儲けが主要な仕事ではないですから研修期間と給料を関連付けることはあまり良くないかもしれないですが、こちらでは医師の仕事も3年余計に研修するからそれ相応の報酬を期待するというのが一般的な考えのようです。ところが腎臓内科医として働くのと一般内科医とさほど給料の差がないとなると、みな専門研修を嫌う方向に向かいます。また同じ3年の研修でも循環器などは給料が格段に良いという事実があるため、循環器のフェローにマッチするには外国人にとっては年々狭き門になっています。

給料や研修期間にそれほど差のないOncology、Endocrinology、Infectious diseaseや Rheumatologyなど他の専門と比べなぜ腎臓が人気ないのか?これは実際よくわかりませんが、当直で緊急で患者をみる機会の多いのが腎臓内科(透析関連)なのでそういったQOLの部分で少し人気がないのか?私と同じ同僚の話では透析患者はひと癖ある人が多いからI guess they don't want to deal with themと冗談交じりで言っていましたがそうかもしれないです。腎臓病学に興味はあるけどQOLと給料がいまいちと考える学生が多くいることは事実で、ある放射線科医は「私は好きで一日中地下の暗闇でMRIを読んでいるんじゃない」と真剣に話していたのを思い出しました。アメリカ医学会の大きな問題だと思いますが、専門の決定に学問でなくお金が大きなウェイトを占めていることに加え、アカデミックに働こうとする人の減少と強い開業志向は医学の発展に支障を来すことになりかねませんし、危機的な問題だと思います。

T.S
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