「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
<< March 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

ループ利尿薬が強力なわけ

ループ利尿薬サイアザイドよりも利尿効果が高いのはどうしてなのでしょうか?
urination.jpg
腎髄質の浸透圧は通常countercurrent multiplicationにより高く保たれていますが、ラシックスなどのループ利尿薬によりthick ascending limb (TAL) でのNaの再吸収が阻害されると腎髄質の浸透圧は当然下がります。したがって最終的に水の再吸収が行われる集合管でも浸透圧が下がるため、浸透圧勾配にしたがって移動する水は再吸収されにくくなる結果、尿量は増加します。ところがサイアザイドやスピロノラクトンなど遠位で作用する利尿薬は腎髄質の浸透圧に影響を来しませんのでループ利尿薬ほど尿量の増加が見られません。

ちなみに急性尿細管壊死(ATN)は近位尿細管やTALの障害ですので、ATNが回復する際に多尿が見られるのはTALでの尿細管細胞の機能が正常化してないため、ループ利尿薬同様、Naの再吸収阻害に伴う腎髄質の浸透圧低下が原因と考えられます。またサイアザイドはループ利尿薬に比べ低Naが多く見られますが、その一因としてこの機序が関与していると考えられます。

T.S
固定リンク | この記事を編集する | comments(0) | trackbacks(0)
< Angiogenesis: Friend or Foe? | Pendrin >
ARCHIVES
OTHERS