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サイアザイドについて

JNC7によると、リスクファクターのない高血圧症に推奨される第一選択はサイアザイドです。サイアザイドにはhydrochlorothiazide (HCTZ)、chlorthalidoneそしてmetolazoneといった種類がありますが、半減期の違いだけで、いずれも遠位尿細管のNa+-Cl-transporterのCl-側を阻害します。ループ利尿薬同様、低K血症を呈することがありますが、ループ利尿薬とは逆にCa2+排泄を低下(遠位で働くため、ヘンレ上行脚ではNa+やCa2+が取り込まれる)するため、腎結石(カルシウム)などの治療に用いられます。
hctz.jpg
サイアザイドはループ利尿薬ほど強い利尿薬ではありません。このstudyは人でサイアザイドとアミロライドの作用を実際に試したのです。
この図によると、HCTZを使用して3日程度まではNa+排泄が増加しますが、その後は低下しています。(braking effect)またK+排泄は最初の数日は排泄傾向にありますが、14日程度すると投与前とほぼ同様の状態に落ち着くことがわかります。利尿薬を開始しK+値を測定するなら2週間程度してからするべきとされる理由がこれからわかります。

16日目に今度はamilorideを投与します。Amilorideは集合管主細胞にあるENaCチャネルを阻害するため尿中Na+排泄は増加し、その引き換えにK+を保持することがこの実験からわかります。

ちなみに利尿薬による低K血症の機序は
1) Na+のdistal delivery(集合管主細胞のENaC でNa+/K+の交換が行われる)が最大の理由です。介在細胞でH+/K+の交換も関与しています
2) その次にVolume↓によりレニン-アンジオテンシン系の亢進です。

腎不全になるとサイアザイドは効かなくなるからループ利尿薬に変更することも多いかと思いますが、その一つの理由は、サイアザイドは糸球体で濾過され遠位尿細管に到達しますが、ループ利尿薬はほとんどが尿細管分泌されるためといわれています。でも効果の違いを人で証明したstudyはないと思います。実際Metolazoneは腎不全患者でもとてもよく効きます。

T.S
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