「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
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ドーパミンの利尿作用

ドーパミンはdopaminergic effect (dopamine receptor)とadrenergic effect (αとβ receptor)をあわせもつ昇圧剤ですが、利尿作用もあります。この図からわかるようにL-dopaは近位尿細管の尿細管側(apical)と血管側(basolateral)から取り込まれ、ドーパミンに変換されると、細胞外に分泌されG protein coupled receptor (GPCR) であるドーパミンレセプターに結合します。この結果Na+cotransporter、 Na+K+ATPaseが阻害され、尿細管におけるNa+の再吸収を阻害することにより利尿をもたらします。したがってドーパミンは尿細管ではパラクリン作用があるといえます。
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少量のドーパミンはdopaminergic effectによる血管拡張作用とadrenergic effect心拍出増加(β)及び renal perfusion増加(α)作用に加え、上記の利尿作用を期待できることから、少量点滴(0.5-3ug/kg/min)を用いてさまざまなstudyが過去には行われましたが、結論からいうと少量のドーパミンやFenoldopam(D1 receptor agonist)はsepsis、心臓手術後、contrast inducedなどに伴う乏尿性のAKIには利尿効果がみられない上、AKI、生命予後を改善しないため、現在ではその使用は推奨されていません。ICU管理されるようなAKIは概して交感神経系がすでに過剰に亢進している上に、ATNなどにより尿細管のmembraneが損傷していることまたドーパミンが正常な状態で尿細管にとどかないなどさまざまな理由が考えられます。また少量でもむしろ腸管壊死を招きやすいなど副作用も指摘されています。ただしループ利尿薬ほどではないですが、正常の腎臓にドーパミンを使用すると高い利尿作用が上記の機序から期待できます。

T.S

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HCV Cyclosporine

サンフランシスコのカリフォルニアパシフィックメディカルセンターで消化器内視鏡フェローをしている橋本裕輔と申します。現在1日10件ぐらいの治療内視鏡を中心とした研修をしています。仕事は週4日内視鏡を中心としていて遅ければ9時まで働いています。週1回リサーチのための時間が設けられており、充実した時間を過ごしております。
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今回は、私の経験から先生方が精通しているサイクロスポリンについて話をしたいと思います。実はサイクロスポリンは新たなHCV(肝炎ウイルス)治療薬となる可能性があります。HCV治療はインターフェロンとリバビリンと思われるかもしれません。また、なぜ免疫抑制剤を使用するのかという素直な疑問がわいてきます。私が勤めていた昭和大学の分院で劇症肝炎を扱っていました。劇症肝炎というと米国では通常移植の適応であり、他に手だてがないというのが現状です。しかし日本ではそういう訳にはいきません。同院では20年前から免疫応答が異常に爆発している劇症肝炎の患者さんにステロイドパルスや血漿交換などの治療を行っておりました。もちろんそれに加え、B型肝炎であれば抗ウイルス薬(現在はエンテカビル)、C型肝炎であれば(インターフェロン)というのが常でありました。さらに免疫を抑え、肝炎を鎮めるのに使われたのがサイクロスポリンでした。

HCV劇症肝炎患者の治療に伴う血中HCV濃度を検索したところ、明らかにサイクロスポリンを投与した症例の方が血中濃度が優位に低く、サイクロスポリンA (CsA)がHCVの増殖抑制をしていることがわかりました。さらにその後の研究によって、サイクロスポリンA(CsA)は宿主である我々のタンパク誘導を抑制することで複製を制御することがわかりました (CyPカルシニュリン(CN)/NF-AT経路P―蛋白質A)。サイクロフィリンBがHCVの複製を行っているある蛋白の活性化に必要であることが分かり、CsAは環状ペプチドでサイクロフィリンの結合部位を有していることも分かりました。つまり宿主でのHCV―RNA複製機能を抑えるのです。ただし、これだけでは複製機能を抑えるのみであり、ウイルス排除を期待できません。そのため同時にインターフェロンを投与することが必要でした。

私はこの治療を10例ほど経験しました。サイクロスポリンは血中濃度が条件によって左右されやすく、副作用も強いため血中濃度モニタリングが常に必要で、臨床的に困難でありましたが、通常の治療で失敗したジェノタイプ1の患者さんで持続的にウイルス排除できた方がいらっしゃいました。現在、副作用の少ないサイクロフィリン結合に焦点をおいた薬品がヨーロッパで臨床治験中と聞いております。欧米では抗ウイルス薬が第3,4世代と進んでいるため(非常に有効と聞いています)、将来実際に日本やアメリカの臨床の場にでてくるかどうかは現時点ではわかりません。今回は、サイクロスポリンの異なった作用について書かせていただきました。

橋本裕輔
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Potpourri

今回はサイエンスと関係なく、日米医療のプラクティスの違いに関して、雑多に気づいた点をあげてみます。あくまで自分の経験に基づいた感想で、良し悪しの判断に客観的根拠はないことばかりです。

1)  Intermittent hemodialysis:
血液流量:米国でのhigh blood flowには最初驚かされました。自分の知っている限り、多くの透析施設での平均的な血液流量は400 ml/minです。アクセスがカテーテルでも同様です。米国では1980年後半か1990年ごろから多くの施設がhigh blood flowを信仰するようになったそうです。
透析針:金属針のみです。日本のようなテフロンの外套を使用している施設を見たことがありません。米国でのアクセストラブルは日本よりはるかに多いように感じます。なぜ金属針しか使用していなのか理由は知りません。
動脈表在化:日本ではシャントに適した静脈がないとか、心不全だとかいう理由で動脈表在化というオプションがありましたが、米国では見たことがありません。動脈穿刺なんかして正気か?と驚かれます。シャント静脈の表在化は行われています。

2)  Continuous renal replacement therapy(CRRT): CVVH, CVVHD, CVVHDF, SLEDなど、施設によって好みが違います。病院に置いてある機種によって選択が限られることもあります。私が現在所属している施設ではもっぱらNextstageという機種を用いてCVVH (hemofiltration)です。置換液流量は、体格によりますが、3000 ml/h前後で開始することが多いです。 血圧にかかわらず血液流量は 350 ml/minあたりが平均的です(Prismaflexなど機種によってはチューブの圧などの理由で血流が180 ml/minあたりまでしか許されていません)。抗凝固薬はまず使用しません。大学病院では平均して7,8台のCVVHが常時回っていますが、昨年一年間を通して、どうしても抗凝固薬を使用しなければいけなかったのは1, 2例しか経験しませんでした。NKFやASNなどの学会でCRRTに関する話を聞くと、University of AlabamaのAshita Tolwaniなど、citrateを使っているグループが多いような印象をうけますが、全米を平均すると1/3がヘパリン、1/3がcitrate、1/3が抗凝固薬なし、だと以前聞いたことがあります。

3) Home hemodialysis: 米国では家で透析する患者は少なくありません。自分、もしくは家族が穿刺して、除水量や透析時間も各自で調整しています。Nextstageを使っています。何十年も前からhome hemodialysisは米国でなされていますが、近年home hemodialysisを選択する患者が増えています。
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4)  Transplant: 
Chain donation: Chain donationいうのは米国にきて初めて経験しました。通常何組かのABO不適合夫婦などがお互いの腎臓をスワップして移植の輪が完結します。 これを一日で完結せずに、だらだらと続けていくこともあるようです。米国ではABO不適合の移植はめったにみません。
Multivisceral transplant: 長年の中心静脈栄養プラスCrohn病などで多臓器不全になったときに、胃、小腸、肝臓、膵臓などを全て移植してしまいます。たいてい何らかの理由で腎臓も悪くなっているので腎臓移植も行われることが少なくありません。長期予後は不明です。小腸の拒絶を除外するために術後頻繁に小腸生検が必要だったり、そもそも移植適応基準があいまいだったりと、よくわからないことが多いです。

波戸 岳
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日本の移植医療における内科医の果たすべき役割

1月26日から28日に開催された「日本臨床腎移植学会」の発表スライドを添付します。

長浜 正彦
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なぜ腎臓内科医になりました?

米国における腎臓内科の人気のなさは以前にも触れましたが、2012年度のnephrology fellowの応募状況をみてもその様子がうかがえます。私のいるプログラムでは今年は40%程度応募者が減ったようです。これは全国的に共通しているようでASNのkidney news でも取り上げられていますが、内科のsubspecialtyのfellowshipのポジションは2002-2009年にかけて全体では増加したものの、腎臓内科と老年医学のみ、AMG(American medical graduate)の比率は減少しています。この理由はいくつかあると思いますが、大きな理由がお金と医師としてのquality of life(QOL)だと思います。
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アメリカでは医学部(medical school)に入るためには、4年制の大学を卒業することが必要で、仮にストレートでその後medical schoolに入学したとしても卒業するころには年齢的には26-27歳になります。実際、大学卒業後にmasterやdoctorのdegreeを取得したり、いったん就職してからmedical schoolに入学する人も多々いることを考えると、医学部卒業後、研修医を最短3年行い(家庭医学や内科、外科は最低5年)、さらに専門研修を2-3年すると(腎臓内科は2年、循環器や消化器などは3年)一般大学を卒業してから自立するまでmedical schoolを含め10年以上の研修期間がある計算になります。またAMGは平均して医学部を卒業する段階で学費ローンが2000万円近くあるとされますから、家族や子供がいてローンを返済し、安定した生活を送るためにはよりよい報酬とQOLを望む気持ちもわからないでもありません。

米国に来て思ったことの一つとして、資格を必要とする仕事とそうでない仕事の給料格差です。資格を取得するために要する研修期間と給料が比例しているかどうかはわかりませんが、少なくとも研修期間が1年の仕事と5年の仕事では後者の方が断然高い給料を通常望めます。日本では必ずしもそうでないですよね。むしろ資格を取っても、それ相応の給料をもらっていない職種も多い気がします。何年研修し、特殊な技能をつけたのだから、それだけ良い給料をもらえるという考え方はとても単純でわかりやすいですし、そうあるべきだと思います
医師はお金儲けが主要な仕事ではないですから研修期間と給料を関連付けることはあまり良くないかもしれないですが、こちらでは医師の仕事も3年余計に研修するからそれ相応の報酬を期待するというのが一般的な考えのようです。ところが腎臓内科医として働くのと一般内科医とさほど給料の差がないとなると、みな専門研修を嫌う方向に向かいます。また同じ3年の研修でも循環器などは給料が格段に良いという事実があるため、循環器のフェローにマッチするには外国人にとっては年々狭き門になっています。

給料や研修期間にそれほど差のないOncology、Endocrinology、Infectious diseaseや Rheumatologyなど他の専門と比べなぜ腎臓が人気ないのか?これは実際よくわかりませんが、当直で緊急で患者をみる機会の多いのが腎臓内科(透析関連)なのでそういったQOLの部分で少し人気がないのか?私と同じ同僚の話では透析患者はひと癖ある人が多いからI guess they don't want to deal with themと冗談交じりで言っていましたがそうかもしれないです。腎臓病学に興味はあるけどQOLと給料がいまいちと考える学生が多くいることは事実で、ある放射線科医は「私は好きで一日中地下の暗闇でMRIを読んでいるんじゃない」と真剣に話していたのを思い出しました。アメリカ医学会の大きな問題だと思いますが、専門の決定に学問でなくお金が大きなウェイトを占めていることに加え、アカデミックに働こうとする人の減少と強い開業志向は医学の発展に支障を来すことになりかねませんし、危機的な問題だと思います。

T.S
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Membrane transport

腎臓内科を選択した理由として、込み入った腎臓生理が好きだから、という先生方は少なくないと思います。実際歴史的にみても、腎臓生理に関わってきた先人達が、魚を中心に多くのチャンネルやトランスポーターの働きを解明してきました。
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Aquaporin channelなどいわゆるチャンネルは、細胞膜内外での選択的な物質のやり取りが、濃度勾配とelectrochemical potentialに従って行われます。チャンネルが開いているか閉まっているかの確率により、物質のやり取りの程度が大きく左右されます。一方、 Na+-Glucose transporterなどいわゆるトランスポーターは、ある選択的な物質がトランスポーターのconformational changesを引き起こし、その物質(とそれにカップリングした物質)の膜内外での移動が起こります。これにも濃度勾配が必要で、そもそものdriving forceは Na+- K+-ATPase (pump)であることは言うまでもありません。ちなみに、チャンネルの性質を持ち合わせるトランスポーターなども指摘されており、チャンネルとトランスポーターの違いは微妙です。また、例えば、Urea transporterは実際はチャンネルですが、誰もUrea channelとは言いません。昨年のASNで、Urea transporterの蛋白構造を解析したグループのlast authorが、トランスポーターで今まで通ってきたから今もトランスポーターと呼び続けている、と話していました。

それにしてもチャンネル/トランスポーターの物質の選択能力の高さとスピードは驚異的です。例えば、potassium channelは最初バクテリアで解明されましたが、そのチャンネルは一秒間に10の8乗 ものpotassium ionsを通すようです。このチャンネルの中心部分は非常に狭いので、potassium ionが一回につきようやく一個通る隙間しかありません。稀にはNa+の通過も起こるようですがK+と比較すると10の4乗回に一回かそれ以下の頻度でしか起こらないようです。Na+のサイズは半径0.95 AでK+のサイズ(1.33 A)より小さいのになぜ Na+がはじかれてK+が通れるのでしょうか?

前述のように、チャンネルのコアとなる部分は非常に狭いので、K+のまわりの水分子はK+と一緒に通ることができず、はじかれなければいけません。その脱水の過程でエネルギーが必要になりますが、Potassium channelは(水の酸素分子のかわりに)Carbonyl groupの酸素分子をその狭い隙間に完璧な間隔をとって配置することによって、脱水のエネルギーを代償しています。一方、Na+はサイズが小さすぎでCarbonyl groupとの絶妙な距離を保つことができません。結果、脱水が起こらずNa+と水分子はくっついたままになるため、サイズオーバーで通ることができません。イメージとしては、煙突の中を両手両足を側壁に押し付けて這い登っていく感じでしょうか。手足が短すぎても長すぎてもうまくいきません。ジャストフィットなサイズが必要です。最近はYoutubeによくこの手の映像が載っていて我々の理解を促進してくれます。

波戸 岳
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腎不全教育目的入院

最近、日本のいろいろな病院の腎臓内科のホームページをみていると、「腎不全教育目的入院」についての記述がよく見られます。食事療法や、腎不全についての一般的な内容を医師や看護師がレクチャーしたりすることを組み合わせて行われていることが多いようです。日本で腎臓内科をしている先生方には、日常かもしれないこの「教育目的入院」ですが、アメリカでの医療を経験した人間からいうと、「とんでもなく特別なこと」です。アメリカでは、保険がカバーする医療を規定しています。保険が入院費をカバーする為には、入院していなくてはいけないと明らかに考えられる医学的理由がなくてはいけません。例えば、持続点滴が必要であるとか、人工呼吸が必要であるとか、24時間連続の心拍監視が必要とかそういったことです。例えば、肺炎で入院しても点滴の抗生剤から内服の抗生剤にきりかえた瞬間、退院しないと入院費の支払いを保険が拒否します。日本のように内服に切り替えて2,3日熱が出ないことを確認したら退院なんて悠長なことはあり得ません。そういう世界ですので、食事療法の体験や、腎不全の教育を行う為の1-2週間の入院なんてありえない話なのです。
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 ところで、私も教育目的入院をやっていて、思うのですが、教育目的入院を行うと、食事療法を体験してもらうとか、スタッフによる指導ができること以外に、患者さんの性格や家庭環境や社会的状態などが非常によくわかり、有用です。外来での数分の会話では、きっちりした性格でしっかり病気や薬のこともわかっていると思っていた患者が全然、薬をきちんと飲めていなかったり、家族の協力が得られず、コンビニ弁当で食いつないでいたりしたことに気づくということもまれではありません。薬を一包化して、コンプライアンスを改善したり、腎臓食の宅配を紹介したりしています。

 アメリカと日本の医療を両方経験すると、こういう「教育目的入院」が認められる日本のシステムというのはとてもすばらしいと思います。日本の腎不全患者や透析患者の死亡率や心血管系イベント率が低いことがDOPPSをはじめとする様々なデータで、注目されていますが、その一因として、教育目的入院に代表される日本の医療の地道な努力と、患者さんの側のコンプライアンスや努力があるような気がします。「教育目的入院」というのは日本でしかできない貴重な医療ですので、いつか、多施設の大規模前向きコホートを作り、「教育目的入院」が腎不全の進行予防にどれだけインパクトがあるかというようなデータを世界に発表したいなと思います。

田川美穂
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Kt/Vと透析量

HEMO study ではさまざまな理由から頻繁透析の有用性が証明されなかった
わけですが、NEJMにFrequent Hemodialysis Network (FHN)Daily Trial が発表され通常透析(3回)と頻回透析(週6回)では死亡率、左室肥大率や様々なsecondary outcomeが頻回透析の方がよかったとしています。夜間透析と通常透析を比べたstudyも近いうちに発表されると思いますが、血液透析は時間を長く、頻繁に行う方が予後はよさそうです。ここで問題になるのが、透析量の測定法です。
KT/Vは透析量を推測するために用いられますが、最近はこの概念が正確ではないかと言われています。Kt/Vは透析前後の尿素窒素の値で透析量を予測します。
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ところがこの単純なstudyによると、KT/Vは透析時間を延長すると実際の透析量を反映しない可能性が示されています。

Geniusという透析器は血流量と透析液量の比が固定されていますが、この透析器を用いて透析患者さん9名をそれぞれ4,6,8時間と透析しました。ただし、時間が長くなるほど、血流量・透析液量を低く設定し、合計の透析液量が4,6,8時間透析で同じになるようにし、透析液は全て回収され、その内容と透析前後の血液値を調べたそうです。
その結果、4,6,8時間ではKT/Vは同じであったそうですが、尿素窒素、クレアチニン、リンや中分子のβ2グロブリンは長く透析するほどクリアランスが高かったと示しています。つまり、合計透析量が同じでも時間を延ばして達成した場合、透析により除去された小分子や中分子は増加しますがKT/Vには反映されないという結果です。
この理由ははっきりしませんが、低血流透析は血液中のureaの値が高く、組織から血中への小分子の移動がよいことや、時間が長いほど産生されるureaは多いことなど推測されますがこのあたりはよく調べる必要があります。またUF (除水)によるconvectionはureaを取り除きますので除水量が多いほどureaのクリアランスは上がることも重要です。いずれにしても長く透析すると、FHNのstudyが示すように生命予後の改善を導き、その理由として高い透析量の達成があるはずですが、KT/Vだけではこの透析量を必ずしも正確に反映しない可能性があることは覚えておく必要があります。

T.S
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Acute Kidney Injury, GFR

急性腎不全の診断をいかに迅速につけるかは、臨床腎臓領域の重要な課題のひとつです。以前にもふれましたが、例えば、CT造影剤によるAKIをきたした患者は、造影剤投与直後にGFRが低下しています。しかしながら臨床の現場では、実際にcreatinineの上昇としてAKIの診断がつくまでに数日もかかります。心筋梗塞時のEKG変化やtroponinのようなマーカーが腎臓領域にも必要です。
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数多くの基礎、臨床系の研究室がNGALやKIM-1といった“AKI marker”の研究に関わっています。Proteomicsとその周辺の技術を使った臨床研究は今後もさらに出てくると思われます。例えば、私の知っている限りでは、VA/NIH ATN Studyで最終的に透析に至って回復しなかった群と回復した群に分けて、保存されている血液や尿を”-omics”にかける計画があります。

Paul Palevsky, Mark Okusaらなど多くの著名人が指摘していますが、prospectiveな研究デザインであろうとなかろうと、creatinineの上昇をAKIの診断に用いる限り、多くの例で、本当の急性期を見逃していることになります。Creatinineの上昇が見られ、スタディーに登録された時点ではすでに進行したATNになっており、どんなインターベンションも”無効“になってしまうことが懸念されます(集中治療領域の臨床研究でよくあると感じています)。それゆえ、例えば今年KIにでたNew Zealand発のprospective臨床研究では、AKI患者を早期に捕らえるために、独自のbiomarkerの組み合わせを使ってAKIを定義しましたが、こうなると患者は本当にAKIだったのかどうかという疑問がでてきます 。ちなみに、この研究で使われたerythropoietinは動物実験では過去に多くのポジティブな結果がでています(動物実験では多くの場合、AKIをおこす前にerythropoietinが投与されていますが)。

リアルタイムなGFRを急性期臨床の現場で(ベットサイドで)測定できるようにしよう、という試みは何年も前から行われております。イヌリンのような糸球体を自由にろ過する物質と、分子量の大きいしばらくは血管内にとどまる2つの蛍光抗体物質を血管内に投与し、高分子物質の濃度から血液ボリュームを定義し、低分子物質の濃度低下速度からGFRを測定する、というのが大まかな原理です。コンセプト自体は20世紀前半から存在しています。蛍光抗体を付与した糖物質などを投与して、それを持続的に末梢静脈や皮膚などから測定できるポータブル機器は既に開発されており、現在ブタやラットなどを使って研究が進められています。当然この方法にはボリュームの定義などいくつかのpitfallsがあり、ヒトで臨床応用され、急性期のAKIの診断に使われるようになるにはあと何年もかかると思われます。ちなみに、GFRは正常腎でもかなりの幅をもって変動することが知られています(朝空腹時と食後など)。実際にGFRが迅速にモニターできるようになったら、腎臓内科フェローはICUから頻繁に呼ばれて大変なことになりそうです。

波戸 岳
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ループス腎炎 その2

ループス腎炎の維持療法は寛解状態を維持し、再発や再燃、慢性炎症に伴う臓器障害を予防するために行われます。免疫抑制剤は長期使用による副作用が問題になるためrisk とbenefitを患者さんの状態と照らし合せ選択するべきです。
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副腎皮質ステロイドはループス腎炎の維持療法には必須で、多くの臨床医はステロイドを1-6カ月の間にtaperし中止する場合が多いのですが、そういった効果を示したstudyは現在のところ示されていません。ただし、投与量の制限や長期投与による骨粗鬆症の予防薬の投与は行うべきです。寛解導入で頻繁に使用されるcyclophosphamideは維持治療では長期使用(6カ月以上)はIVや経口ともに避けるべきです。主な副作用は脱毛、出血性膀胱炎、膀胱ガン、早期閉経、生殖器障害です。

MMFとAzathioprine (AZA)はともにループス腎炎の再発や再燃を予防する有効な薬です。最近のOpen labeled randomized trial (MAINTAIN)ではLupus nephritis(ISN 3-5)の患者さんをcyclophosphamideで導入治療をしMMF(平均2g/day)とAZA (平均124mg/day)で維持療法を行い3年観察した結果、寛解維持率、再燃、ステロイド使用量に差はないとしています。一方、Aspreva Lupus Management Study maintenance resultsによると同じような設定で最大3年まで観察した結果MMFのほうがAZAと比較してrenal benefitがあったとしています。 MMFかAZAかの答えははっきりしませんが覚えておくべきことは、MMFはcylophosphamideと比較して感染症の合併が少なく薬価はMMF>>AZAであり、MMFは妊婦には使用できないということです。

ISN5は膜性腎症です。WHO分類のClass 5(WHO Vc Vd)は膜性腎症に増殖性変化(現在ではISN3か4に含む)を呈していた腎炎も含んでいたことによる理由から過去のデータを見るとLupusのクラス5の予後はさまざまです。最近のISN5におけるstudyは原発性膜性腎症と同じ治療法に準じています。このstudyは42人のISN5患者を1) steroid+ cyclosporine 2) steroid + IV Cyclophosphamide/隔月 3) Steroids (隔日)で治療した結果、1年寛解は1)83% 2)60% 3)27% となっています。MMFとIV cyclophophamideで寛解導入を比較したstudyのサブ解析によるとISN5の患者(84/510人)の寛解率、再発率、臨床経過に差はないとしています。

また興味深いことにMNだけではないですがネフローゼ症候群全般への効果が発表されているのがACTHです。蛋白尿を減らす機序は不明ですがこのstudyからもcyclophosphamideとACTHいずれもMNの蛋白尿を減少させたとしています。今後RCTがその効果のほどを証明してくれると思われます。
日本ではステロイド単独でも腎予後は比較的よいのですが欧米での結果はいずれも不良であることが分かっています。人種の違いからなのでしょうか?
そのほか、immunomodulatorは主にISN3や4を対象に適用されますがそれ単独では使用せずMMFやcyclophosphamaideなどに加えて相乗効果を試したものが大半です。B cell をターゲットにしたrituximubについては前述したとおりです。B cellではなくT cellをターゲットにした薬剤もループスにためされています。抗原提示細胞(APC)はT cellに情報を伝達する際、T cell receptorのほかco-stimulatory signalを必要としますがこのpathwayを阻害する作用をもっていて、リウマチに効果のあるabatacept(APCのB7へ結合)は現在2つトライアルが進行中です。

T.S
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