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日経メディカルへの寄稿記事

以下は日経メディカルへの寄稿記事です。

腎移植患者のフォローは腎臓内科医が担うべき
あなたが末期腎不全になったら透析を選びますか、それとも腎臓移植を選びますか?
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こんなアンケートが米国の腎臓内科医に対して行われました。結果はどうだったと思いますか。ほぼ100%の人が腎臓移植を選びました。日本の腎臓内科医に同じアンケートをしても同じ結果になるのではないでしょうか。それにもかかわらず、日本の透析患者さんの中には移植というオプションを説明されていない方が少なからずいます。ご存知のように腎臓移植医療に関しては残念ながら日本では米国ほど普及していません。

私は日本の大学病院で研修医時代を過ごし、その後、市中病院で数年臨床に携わりました。その後,米国に渡り、米国でも大学病院と市中病院の両方で臨床医として働きました。日米両国の医療を経験し、それぞれに良し悪しがありますが、日本の腎臓内科が発展する上で重要なのは、教育の充実、腎臓内科による腎臓移植の普及、そのためのシステムの構築だと考えています。

まず教育という観点から、米国の内科診療について説明します。米国の内科診療の大きな特徴は、コンサルト制度にあると思います。日本でもコンサルト制度は存在しますが、どちらかというと通常の診療を行いつつ他科の症例も診るといった感じではないかと思います。米国では、コンサルトサービスが独立しています。
その意味をご理解いただくため、フェローの1日そして、研修体制を簡単にご紹介しましょう。フェローは患者の多少にもよりますが、朝の7時前後に病棟で患者さんのデータ集めやカルテを読み始め、遅くとも10時ごろまでには一人で担当患者さんの回診を終え、必要な指示を出していきます。その後、指導医との回診を行います。研修を受けるプログラムによりフェローの人数は異なるのですが、大きいところで10人近く、小さいところでは数人です。
ローテーションは1カ月単位となっていることが多く、どのフェローも均等に各ローテーションが割り振られ、研修の機会が偏らないように工夫されています。

私が現在働いているミネソタの病院も施設内に大きな病院が3つあり、指導医とフェローがペアになり各病院のコンサルトを受け持ちます。最も忙しい大学病院では大体コンサルトの患者リストは20ー30人ほどで、毎日新たなコンサルトが4~6件あり、かなり忙しくなります 。
米国の大学病院も日本の大学病院も同じ教育施設という役割があると思いますが、米国での回診は基本的にフェローと指導医の2人という少人数で行っている点が大きな特徴だと思います。指導医がたとえ著名な教授であっても、それは変わりません。教育を受けるフェローの側にしてみると、とても貴重な経験となります。
回診時には治療方針を自由に議論する雰囲気があり、卒後わずか4~5年目のフェローと学会の会長をしているような医師が、治療方針を文字通り議論しながら回診をしていきます。こうした教育システムにより、米国では一定レベルの専門医が育成されているのだと感じています。

もう一つ腎臓内科医に限って考えると、日米の腎臓移植をめぐる環境の違いがその教育、仕事に非常に大きく影響しています。
日本での腎臓移植件数は2006年にようやく年間1000件を超えました。一方、米国では年間1万6000件ほどの腎臓移植が行われています。米国の人口が日本の2.4倍であることを考えても、大きな違いです。こうした環境の差があるため、腎臓内科医に求められる役割も日本と米国で若干の違いがあります、必然的に腎臓内科医として受けるトレーニングも異なってくるのです。

こうした大きな差が生じている理由は、献腎(死体腎)移植に対する考え方にあります。日本では9割近くが生体腎移植であるのに対して、米国では生体腎移植と献腎移植が約半数ずつ。最も異なる点は、日本は献腎移植のうち脳死の占める割合はわずか1割以下なのに対して米国では逆に脳死が9割以上を占める点です。
ちなみに、ドナー不足は日本と同様、米国でも問題となっており、ドナーを増やす様々な工夫がされています。米国では日本と異なり 血縁や親族でもない人をドナーとして腎臓移植を受けることができます。教会で知り合った人、知人、全く知らない人がドナーとなっています。以前に比べると待機期間は延びてきていますが、血液型により若干異なるものの、3~5年で移植を受けられます。
これに対して日本では献腎移植の待機時間が15年と米国とは比較にならないほど長くなっています。透析患者さんの5年生存率が60%であることを考えると、多くの透析患者さんが、移植を希望しても、その前に亡くなってしまうというのが現実です。

腎臓移植患者の管理は腎臓内科医の仕事になります。米国は日本に比べて患者さんの入院日数は極端に短かく、腎臓移植患者も順調であれば手術後5日ほどで退院していきます。その間、移植外科医と腎臓内科医が同時に患者さんをフォローし、免疫抑制剤、降圧薬などの薬剤管理を共同で行います。
無事に退院後は、基本的には腎臓内科医の外来に通院することになります。移植後、5年、10年といった長いスパンで患者さんを診ること、その間の高血圧、糖尿病などの管理を行いながらフォローしていくのが、米国では腎臓内科医の重要な役割の一つになっているのです。

私は、このような日本と米国で腎臓内科をめぐる状況の違いを踏まえ、黒川清先生に顧問になって頂き、同志数人とともに「日米腎臓内科ネット」を今年、立ち上げました。腎臓内科における臨床教育、研究、移植の発展に興味を持つ日米の腎臓内科医が、メーリングリストやブログ、セミナーなどを通じて情報交換をしています.
メーリングリストには全国の腎臓内科や腎臓移植医療に興味のある医学生、研修医を中心に既に約100人の方に加盟して頂いています。さらには、聖マリアンナ医大の安田隆先生の御協力をいただき、日本腎臓内科学会の卒前卒後教育委員会のメーリングリストとも情報を共有させていただいています。
ブログでは、腎臓内科についての話題はもちろん、イベントや書籍のご案内、日本・アメリカそれぞれで活躍するメンバーのエッセイなど、様々な情報を発信しています。興味のある方はぜひ参加いだければと思います。

今井直彦
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Re:(2) 腎代替療法のオプション提示について

August 14, 2010
日本大学医学部附属板橋病院 腎臓高血圧内分泌内科 岡田一義

田川(村島)美穂先生へのコメントと追加(2)

1)ボタンホール挿入
現在、投稿中の内容ですが、オープンにします。昨日、Twardowskiらの方法と當間らの方法を組み合わせた簡易ボタンホール作製法を紹介しましたが、この方法では、同一スタッフが同一部位に同一方向で通常の穿刺針を数回反復穿刺しボタンホールを作製するため、穿刺孔広がりの可能性およびボタンホールが完成するまでの穿刺スタッフ固定の短所があります。そこで、初回穿刺は通常の穿刺針を用いて行い、次回穿刺以降いきなりボタンホール専用針を用いて挿入しても87.5%で成功しました(小川千恵、岡田一義、他:日本透析会誌 投稿中)。本当に簡単にボタンホールを作ることができます。

2)腎臓内科医からの腎移植情報提供の少なさ
 私は、腎移植についても適切に説明をしているつもりでした。しかし、私が診る腎移植術後の患者は、拒絶反応や感染症などで入院し、透析を開始した患者だけですので、腎移植によい印象を持てない現状もあります。腎代替療法の中で、腎移植は生存率が最も高いですが、重症感染症などにより死亡する患者も少ないながらいることも事実です。患者に腎移植が最も生存率がよい腎代替療法であると情報提供をしていますが、重症感染症のことが気になっています。
一方、透析についての情報提供では、感染症は透析患者では発症しやすいのが常識であるため、詳しくは情報提供していませんが、透析患者の約20%が感染症で死亡しています。また、腎移植では拒絶反応も気になりますし、透析に移行して大変落ち込み、自殺しようとした患者もいました。一方、内シャント閉塞は、経皮血管形成術や再造設術を行えば問題は少なく詳しくは情報を提供していません。また、腹膜透析継続は5年程度が目安なことを詳細に情報提供していますので、腹膜透析から血液透析に流れ作業的に問題なく移行しています。

今回コメントを書いている中で、腎代替療法選択時に、腎移植術後の再移植については情報提供していないことに気付きました。腎移植術後の再移植は、内シャント閉塞や腹膜透析から血液透析への移行と同じ範疇に入ることであり、明日から情報提供しますが、最高何回腎移植を受けた患者がいるのでしょうか。
長浜先生が指摘していますように、腎臓内科医から腎移植の情報提供が少ないのは、腎移植医が術後の診療も継続していることが理由ではないかと思います。移植医ではなく腎臓内科医または透析施設担当医が術後を診療するようになれば、腎臓内科医または透析施設担当医が持っている腎移植に対する負の部分を取り除くことができ、保存期CKDと同レベルの管理も必要な術後診療は腎臓内科医のほうがより適しているのではないかと思います。
ところで、日本で腎移植後の患者を腎臓内科医が診療することはほとんどないと思いますが、実際のデータをご存じでしたら、教えてください。米国では、100%腎臓内科医が診療するのでしょうか。

3)質の高い終末期医療
多くの医師は尊厳死を支持していますが、私は日本でより受け入れやすい尊厳生という概念を提唱しました。今まで終末期患者にどのような言葉をかけたらよいかよくわからなかった医療従事者から、尊厳生という概念を知り、患者にかける言葉が見つかったと感謝されています。
最も大きな問題は、多くの医療従事者は事前指定書が重要と認識していますが、ほとんどの医療従事者は事前指定書を実際に書いていないということです。医療従事者自身が事前指定書を書いていないのに、他人に書きましょうとは言えるはずがありません。5年前の当院全看護師(816名)への意識調査の結果、0.2%が「事前指定書を書いて、持っている」、0.6%が「事前指定書を書いたことがあるが、破棄した」との散々な結果でした(岡田一義、他. 日大医誌 64: 15, 2005)。日本で、実際に事前指定書を書こうとした場合、日本尊厳死協会と日本レットミーディサイド研究会の2種類の事前指定書がよく知られています。私には内容が適切とは思えなかったため、2003年に尊厳生の事前指定書を作成し、いろいろな意見を取り入れ、今までに9回改訂しました(http://www.ckdjapan.com/)。よい意見がありましたら、取り入れさせていただきたいので連絡してください。
米国では、事前指定書を書いている人は希望した通りの治療やケアを受けられると思っていましたが、その約1/3しかいないと以前聴いたことがあります。米国では、実際、国民のどのくらいが事前指定書を書いて、実際にどのくらいが希望した治療やケアを受けられているのでしょうか。

4)日本での腎代替療法の選択肢説明方法
各施設で腎臓教室などを充実させる必要がありますが、すべての腎代替療法を行える施設はほとんどないので、地域として取り組み、市民公開講座を行うことが重要と考えます。患者中心の医療の中で、CKD患者の意思決定を尊重するじんぞう病治療研究会を立ち上げ、市民公開講座を開催し、参加者から在宅透析および腎移植を選択する患者が増えています。市民公開講座で講演を行いますと、参加者の質問を受ける時間が少なく、大勢の前では質問できない参加者がいる問題点があります。そこで、気の弱い参加者にも質問がしやすく医療従事者が参加者と対面方式で対応して、さらに理解しやすいようにポスターや機器(公正競争規約厳守)なども展示しています。これが次回のプログラムですが、まだ後援依頼をしている最中なので、ホームページにはアップしていません。すべての腎代替療法、保存期CKD治療、CKD連携について講演会と展示会の両方で情報提供していますので、地域で同様なことを行いたい場合にはお力になれるかもしれませんので連絡してください。
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Re: 腎代替療法のオプション提示について

August 13, 2010
日本大学医学部附属板橋病院 腎臓高血圧内分泌内科 岡田一義

田川(村島)美穂先生へのコメントと追加

1)腎代替療法の情報提供と選択
腎代替療法には、施設血液透析、在宅血液透析、腹膜透析、血液透析と腹膜透析の併用療法、生体腎移植(血縁間、非血縁間、pre emptive)、献腎移植(心停止、脳死)があります。透析者数は年々増加し、2009年末に290,675人(施設血液透析者 280,590人、在宅血液透析者 229人、腹膜透析 9,856人)となり、透析者の95%以上が透析施設に通院するか入院をして血液透析を継続しています。一方、腎移植患者数は、1,302人(生体腎移植 1,113人、心停止献腎移植 175人、脳死腎移植 14人)です。2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に施行され、日本で初めて、本人の口頭意思表示と家族の承諾により、交通事故で脳死となった20代の男性の移植が2010年8月10に実施され、今後、年間70例の脳死移植の増加が予測されています。日本腎臓学会・日本透析医学会・日本移植学会・日本臨床腎移植学会が2009年に作成しました「腎不全の治療選択 あなたはどの治療法をえらびますか?」では、残念ながら在宅血液透析について触れられていませんでした。

在宅血液透析のメリットは、十分な透析量が確保でき、貧血・心機能・栄養状態が改善し、生存率は腎移植とほぼ同等とも報告されています。また、ライフスタイルに合わせて周囲に気兼ねしないで透析を実施でき、通院が月1回程度であり、家族と接する時間も増加し、精神的な安定が得られます。活動的な生活も可能となり、フルマラソンにも挑戦している患者もいます。施設のメリットとしては、大きな設備投資が不要であり、透析室ベッド数や透析スタッフを増やすことなく、患者を確保することが可能になります。

在宅血液透析のデメリットは、透析者と介助者への教育期間(自己穿刺、透析回路組み立てなど)が必要で、在宅血液透析の長期化とともに透析開始のための準備と透析終了後の処理などに時間を要するため介助者のストレスも増加します。経済的には、設備工事費、自宅改修費、透析に伴う水道光熱費の自己負担などがあります。施設のデメリットとしては、経済的には、在宅血液透析の保険点数は施設血液透析より低く、透析液供給装置加算は、透析装置などのレンタル費と保守管理費などに充てられているため、収入がより低くなることなどです。

在宅透析(在宅血液透析、腹膜透析)と腎移植にはデメリットもありますが、医療従事者は、患者中心の医療のために、施設血液透析だけではなく、QOLをより向上できる在宅透析と腎移植を実施できる体制や紹介ルートを早急に整備し、腎代替療法の適切なインフォームド・コンセントを行い、患者にすべてを正しく理解できる教育を提供し、患者が腎代替療法を自己選択することが重要です。

2)ボタンホール挿入
血液透析患者は、透析毎に内シャントを穿刺されています。私は、シャント穿刺部位は毎回違う部位に刺すように先輩から指導を受けましたが、Twardowskiらは、透析毎に内シャントの穿刺部位を変えるのではなく、同一部位に反復穿刺することにより、穿刺痛が軽減される上、合併症の頻度が低下し開存率が向上することを報告しました(Twardowski Z. Dial Transpl 24: 559, 1995)。ボタンホール穿刺と命名されましたが、穿刺孔が広がる可能性があり、普及しませんでした。Tomaらは、血管表面近くまでしか到達しないポリカーボネイト製のスティックと先端が鈍の穿刺針を考案し、穿刺孔は一点しかできないボタンホール穿刺法を確立しましたが、あまり普及していない現状があります。ボタンホール穿刺は、感染症発症率も通常穿刺と同様である上、痛みも少なく、理論的には大変よい方法であるため(當間茂樹.腎と透析 58: 416, 2005)、我々は當間先生にボタンホール穿刺の研修をさせていただき、Twardowskiらの方法と當間らの方法を組み合わせ、特別な器具が不要な簡易ボタンホール作製法を報告し、ボタンホール挿入と呼んでいます(飯島真一、岡田一義、他. 日本透析会誌 in press)。透析開始時通常の穿刺針で穿刺し、次回以降の透析開始時、穿刺孔に形成された痂皮を剥がし、前回と同じスタッフが同じ穿刺針を用いて同一部位に同一方向に反復穿刺します。この穿刺作業を担当した1人のスタッフが穿刺抵抗の軽減を感じるまで繰り返し、穿刺抵抗が軽減した時点をルート完成と判断し、次回透析より通常のカニューラ穿刺針は使用せず、先端が鈍の穿刺針を用いて挿入を行う簡便な方法です。
ボタンホール挿入と通常穿刺の痛みを比較すると、ボタンホール挿入によりまったく痛みを感じないか軽減する患者が60~80%、同様の患者が10~30%、強く感じる患者は約10~20%であり、中には痛みが増強する患者もいますが、針刺し事故の防止にもつながるため、医療従事者はボタンホール挿入をまず研修し、技術を習得することが必要です。

3)透析療法の中止・未開始
 私の考えは、日本透析会誌に書き、私案(透析中止のガイドライン、透析延期のガイドライン、延命治療不開始のガイドライン、延命治療中止のガイドライン)を提示していますが、日本透析医学会は学術小委員会血液透析療法治療ガイドライン作成ワーキンググループ「導入基準・非導入・中止グループ」を立ち上げ、検討を開始しています。
質の高い在宅医療および終末期医療を確立するためには、すべての国民が日本国憲法13条で認められている個人として生きる権利を行使し、終末期にも自分が考える尊厳ある生き方を貫くということから始め、多くの国民が事前指定書を尊厳維持のために必要であると認識することが重要なステップです。生前の自己意思表示である「尊厳生」による事前指定書を作成し、普及させるために、じんぞう病治療研究会のホームページに掲載し、ダウンロードできるようにしています。
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腎代替療法のオプション提示について

 慢性腎不全が進行してきて、いよいよ”透析“をしなくてはならない時期が近づいてきた患者さんに対して、みなさんどのようにお話をしているでしょうか?私がここであえて”透析“としたのは、「本当に透析だけが選択肢なのか」ということを皆さんに一度考えてほしいと思ったからです。日本ではどうしても「透析」という言葉が「腎代替療法」という言葉より頻繁に使われます。それは慢性腎不全の患者さんの選択肢として透析しか医療スタッフの側も患者の側も浮かばないということにつながっているのではないでしょうか?一方で腎代替療法という言葉の中には、血液透析、腹膜透析だけではなく、腎移植も含まれています。進行期の慢性腎不全の患者さんを前にして、これらの「腎代替療法」の選択肢について、偏りなくその長所、短所を日本の医師はきちんと説明できているでしょうか?
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 私が、今度9月2日に依頼されて行う講演のスライドを添付します。ここで、私が取り上げた症例の中に、50歳の男性で一家の大黒柱として働いてきた方で、腎不全で「腎代替療法」を考えなくてはいけない状態になった方を紹介しています。他院でこの方は「今すぐ入院してシャントを作って血液透析を始めないといけない」と言われ、「週3回も透析の為に病院に通っていては職場からくびをきられてしまう、透析以外の選択肢はないのか?」とおっしゃって私の外来に自分の血液データをコピーした一枚の紙切れを持っていらっしゃいました。残念なことにこの方は、腹膜透析についても、腎移植についても、さらにもっといえば在宅血液透析についても一切説明をうけていらっしゃいませんでした。私の外来で1時間近く時間をかけて、冊子やDVDを用いて血液透析、腹膜透析、腎移植についての説明を行い、腹膜透析を選択されました。1年あまりたった今もお元気でお仕事を続けられており、献腎移植の登録もされました。この方のように、「腎代替療法」の選択をきちんと説明されていないのではないかと思う症例はたくさんあります。

添付のスライドの中に柴垣先生が報告されたアンケート結果を引用させていただいていますが、実際に腎移植を受けた方のなんと50%は腎臓内科医から腎移植の説明を全く受けたことはなく、自分で調べて移植の道を選ばれたようです。これはかなりショックなことではないでしょうか?もちろん、実際移植をされた患者さんですから、移植に対する禁忌(例えばすごく高齢であるとか悪性腫瘍などで予後があまりよくない)があった方ではありません。

また、最近、当院に見学にいらっしゃる学生さんたちにいつも聞いてみるのですが、「大学の授業で日本の腎移植の成績(1年及び5年生着率)を学んだことがあるか?」と聞いてみると、みなさん「聞いたことがない」との答えです。また、腎移植の1年及び5年生着率を予想してもらうと50%とか、30%などといった数字がしばしばでてきます。ところが、スライドにも示しているように、日本の最近(タクロリムス導入後)の移植の成績は1年生着率は95%、5年生着率は90%と非常に良好で、確立された医療といって問題ありません。ところが、このような大事な情報が、学生さんや若い研修医の先生方になかなか浸透していないようです。とても残念なことです。この大事な情報を知らなければ患者さんとお話をするのも困難になってくるでしょう。

一方で、先ほどの血液透析しか説明を受けていなかった患者さんを担当していた他院の前医の立場を考えてみましょう。私も日本の現場で医師をしている人間なのでよくわかるのですが、外来で1時間も時間をかけて「腎代替療法」の説明をするのは極めて困難であり、ほとんど不可能です。日常業務は非常に忙しいですし、「今すぐ血液透析をしないとだめ」と5分で説明をしても1時間かけて一生懸命いろんな選択肢について話し合っても、医師に与えられる評価は「外来再診料」としての700円だけです。一方で病院経営にとっては、この患者さんが血液透析をしてくれれば、月約35万円の診療報酬が得られるのに対し、大学病院に紹介して、移植をしてしまえば、病院の収入は0ということになってしまいます。そういった悪循環が日本で「腎代替療法」オプション提示がきちんと行われない一つの理由ではないかと思います。

アメリカでは、診察の際に、どれくらいのレベルの診療をしたかによって診療報酬がかわります。いくつもの問題について評価を行い、患者に説明を行ったかによってレベル1からレベル5までの評価があります。また、透析施設で透析をしている患者さんのうち腎移植の適応のある患者さんのうち何%が献腎移植に登録をしているかでも診療報酬の点数が変わります。もちろん、日本とアメリカの文化の違いや法律の違いも大きいのですが、こういったシステムがアメリカで日本よりはるかに腎移植が多い理由の一つかと思います。一方で、このシステムをみて、思ったことは、診療報酬からくるプレッシャーの為に、とにかく誰でも移植登録をということで、糖尿病で脳梗塞を起こしていて、ASOで下肢を切断していて、コンプライアンスも悪く、予後が悪く、手術のリスクも高いと思われる患者も移植登録をされてしまうということがありました。そうすると、移植登録の待機リストの患者数が増加し、若くて、元気な最も移植によってメリットを受けるべき患者の移植待機時間が長くなるという矛盾を経験しました。ですので、こういったシステムにももちろん重大な倫理的、社会的問題は大きいと思います。腎代替療法の選択肢説明に対する説明に対して、もっと経済的、社会的評価が欲しいという一方で、アメリカの方法をそのまま、日本に持ち込むことは不可能ですし、問題点も多いと思います。日本としてどのような方法をとっていくのか、今後、考えていかないといけないと思います。

もうひとつ、「腎代替療法」という概念の中に含まれているのかどうかわかりませんが、私が提言したいのは、「透析をしない」という選択肢についてです。高齢であったり、悪性疾患、他の多くの合併症をかかえていたりする患者さんで、透析を開始した途端、一気にADLが低下し、残念な転帰をたどる症例は少なからずあります。「透析をしない」という選択肢を患者や家族に提示することも医師としての大事な役割ではないかと私は思っています。一方で、他の先生とお話をしていると、「透析をしないと死ぬとわかっていて透析をしないというのはどうか?」というご意見もあります。これはなかなか難しい問題だと思います。添付したスライドの中に「透析をしない」という選択をされた患者さんの症例を紹介しました。皆さんはどう思われるでしょうか?

田川美穂
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第11回臨床研修医のための腎臓セミナー

2010年8月7日(土)~8日(日)札幌で行われました腎臓セミナーから
長浜正彦 先生による、低・高Na血症のレクチャースライドをアップします。
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血漿交換ガイドライン2010(その2)

 Category 1(血漿交換が標準的治療として推奨される)に分類された疾患はこの表のとおりです。
今回のガイドライン改定で腎臓に関して新たにcategory 1に加わったのは下記です。
1) 透析を要するANCA腎炎、
2) 腎移植後の再発性FSGS
3) Complement factor H (CFH) 関連のHUS

1)ANCA血管炎に伴う急速糸球体腎炎の治療の原則は、副腎皮質ステロイド・サイクロフォスファマイドですが、それに血漿交換を併用したスタディーがいくつかあります。いずれも血漿交換併用による患者死亡率の改善は見られなかったのですが、最近のこの研究からもわかるように、Cr>5.8や透析を要した患者をサブ解析した群では血漿交換の併用による腎予後の改善がありました。

2)FSGS→腎不全患者における腎移植後のFSGS再発率は20-30%で、グラフトの予後もあまりよくありません。血漿交換は原発性FSGSには無効ですが、なぜか腎移植後の再発性FSGSには有効です。その機序はよくわかっていないのですが、血清中のcirculating permeability factorを除去するからではないかと推察されています。この後ろ向き研究からは、FSGS→腎不全で腎移植を受け、のちにFSGSが再発した患者50人程度にcalcineurin inhibitor、ACE阻害薬に加え、血漿交換を行うと、再発性FSGSの8割を完解(かそれに近い)に持ち込めたと結論しています。
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3)CFHは補体(alternative pathway)の活性を抑制する働きをもっていますが、なんらかの原因で抗CFH抗体ができるとCFHが消費され、補体の活性異常を招き、血管内皮細胞障害を呈します。ところで、category 1に位置づけられているTTPですが、これはADAMTS13と呼ばれる酵素が関与しています。ADAMTS13は血管内皮細胞にあるvWFを開裂する作用をもっていますが、何らかの原因でこの酵素に抗体ができADAMTS13が消費されるとvWFに血小板が異常凝集を起こしTTPを発症します。CFH抗体によるHUSはTTPに類似していますしmedical emergencyの一つです。

遺伝的にCFHが欠損もしくは減少することにより生ずるHUSがありますが、これはcategory 2に入ります。CFH 欠損のHUSはCFH遺伝子のheterozygous mutationにより発症します。また、とても稀なのですが、以前MPGN type2と呼ばれていた疾患は現在ではDense deposit disease(DDD)と呼ばれ、CFH遺伝子のhomozygous mutationによることが分かっています。 この図からもわかるように、CFHが欠損または減少するとC3bがfactorBを介しC3bBbを形成しますが、このC3bBbはなぜかDDDでは安定化してしまい、最終的にはMembrane attack complex (MAC) へと変わり内皮細胞障害をおこします。またDDDの80%以上にC3bBbを安定化させる、C3NeF抗体の存在が確認されています。

興味深いのが、マウスのCFH遺伝子をノックアウトするとDDDをおこすのですが、このマウスのfactorBも同時にノックアウトするとDDDは発症しないそうです!このあたりに治療のターゲットが潜んでいるかもしれませんね。実際C5 inhibitorを用いた実験ではよい結果が出ているようです。DDDは基本的には小児の疾患で、小児ネフローゼ症候群の1-2%程度と稀ですが、腎移植による疾患の再発率は100%で、CFH遺伝子異常によるHUSも高率に移植後、TMAをおこすことが知られています。

次回はcategory 2 の腎疾患について書いてみたいと思います。

T.S
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血漿交換ガイドライン2010 (その1)

米国アフェレーシス学会のApheresis(血漿交換)に関するガイドラインが新しくなりました。
Category1(血漿交換単独もしくは補助的治療として推奨される)に位置付けられた疾患が多く驚きました。
FFP.JPG
そもそも血漿交換とはいつどのように行うべきものなのでしょうか?
以下3つを理解していないといけません。
1) 血管内の液性因子が病態に関与していること
2) その液性因子が血漿交換により除去されること
3) 臨床的に改善することが医学的に証明されていること

またApheresisといってもさまざまな交換があります。
血漿交換、各血球除去(白血球、赤血球、血小板)、脂質、photopheresis、免疫吸着など。
そこで主な血球の比重は知っておく必要があります。
例えば、急性白血病の治療に白血球除去を行うことがありますが、この場合
白血球でもblastが多くを占めていないだめであることがこの表から分かります。(通常blast>50%)
その理由はblast以外の白血球を除去しても医学的に効果が不十分であるほか、
血液を分離する際、通常の白血球(band and segmented neutrophils)は赤血球と極めて
比重が近いため、白血球の分離は困難であるからです。

また
1)How much to take out?
2)What to take out?
3)With what to replace it?
という質問はしばしばフェローは受けます。

1)ですが、血漿は1.5L以上交換しても
グロブリンの除去率はあまり上がらないことがこの表から分かります。したがって通常は毎回1-1.5L程度の血漿交換を目安とします。

2)はどの液性因子が血管内にどの程度存在して、間質からどのくらいのスピードで
血管内にrefillしてくるかなどおおよそ知っておくことは大事です。
この表から分かることはIgMは最も血管内に多く存在していて、ほかのグロブリンに比べ早く除去できることが分かります。また、血漿交換後にグロブリンは血管内にrefillしその血中濃度はすぐに増加しますから、このグラフが示すように通常どの疾患でも効果を最大限に引き出すには、毎日、血漿交換を行う必要があることが分かります。

3)どのような方法を用いるかにもよりますが通常、5%アルブミンかFFP(Fresh frozen plasma)で
交換します。いずれもクエン酸を含んでいて、クエン酸はカルシウムと結合しますので
カルシウムを補う必要があります。
原則FFPには300ml中63mlのクエン酸が含まれています。
1mlのクエン酸に対し1mgのカルシウムを補いますので
10% Calcium Gluconateでカルシウムを補う場合 10ml中に94mgのカルシウムが含まれますので
それに見合う量の補充が必要です。

次回は今回新たにカテゴリーに追加もしくはランク上げされた疾患を取り上げてみます。

T.S
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降圧目標は130/80?

血圧が腎不全の進行に大きな影響を与えることは以前にも取り上げましたが、どこまで降圧するべきか?という指標は実は明確ではありません。高血圧は140/90mmHg以上と定義されますが、糖尿病や腎臓病がある場合130/80mmHg以下を目標としています。ところでこの数字はどうやって決められたのでしょう?
このreviewからは目標血圧135/85以下vs.140-160/90-100mmHgで治療した場合、現在あるデータからは生命予後に明確な差は結論付けられないとあります。また最近発表されたこの文献は2型糖尿病における目標血圧を140以下120以下で比較したところ心血管系、脳血管系eventに影響がなかったと結論付けていますし、この文献からは糖尿病患者でかつ冠動脈病変のある患者における血圧を130未満と通常の降圧140未満で比較した結果、心血管系eventに関してその差はないと結論付けています。
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タンパク尿のある糖尿病性腎症の降圧はCKD の進行を抑制することは多くの文献が示していますが、高血圧性腎症における降圧に関してはよくわかっていません。黒人には高血圧がとても多いので彼らを集め行ったAASKというstudyがあります。CKD(GFR20-65ml/min)の黒人患者1000人ほどを目標平均血圧(MAP)を102-107か92以下のグループに分け各々ACE阻害薬/カルシウム拮抗薬/βブロッカーで治療した結果、腎予後に差はみられませんでした。ただしACE-Iを使用した患者はタンパク尿の減少が見られたため、このstudyはさらに期間が延長され、ほとんどの患者にACE-Iを投与して合計10年ほど観察した結果、54%の患者が適切な降圧にかかわらず腎臓のendpoint(透析、死亡)に達しました。高血圧性腎症の治療は降圧だけでは不十分であることがこのstudyからは示唆されます。

また一方で、外来で測定する血圧だけではその人の本当の血圧を知ることができないのも事実です。ABPM(ambulatory blood pressure monitoring:24時間血圧測定)を使用したstudyからはnon dipperの存在が明らかになっています。これは夜間血圧が日中に比べ10%以上、下がらない人のことを指し、とくにCKD患者には多くみられることが分かっています。このstudyからnon dipperは「腎機能の低下した患者」と「タンパク尿のある患者」と相関することが分かり、腎機能低下とタンパク尿に関連した心血管系のeventにこのnon dipperは重要な要素となりうることを指摘しています。

AASKから学ぶことはレニンアンジオテンシン系の阻害と適切な外来血圧コントロールにかかわらず長期的には腎機能が低下するという事実で、ABPMを用いた24時間血圧のコントロールや適切な降圧目標は重要な要素です。またこの黒人にはFSGSがとくに多いのも事実で遺伝的要素、を追求する研究は現在とても盛んに行われています。

T.S

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透析はいつ導入しますか?

透析がESRD患者に導入されはじめて50年以上がたつ今も、適切な導入時期に関しては議論が多いです。NKF-KDOQIによると、透析の開始はGFR=10.5ml/minを一つの目安とし、それ以下でも体液量や栄養状態、尿毒症がなければ、導入を遅らせてもよいとなっています。
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早期vs晩期透析導入に関する以前の文献はretrospectiveで、主に1980~90年代にかけては早期透析導入による利点を示したものが多く、いずれも年齢や合併症によるadjustmentがなされてなかったわけですが、早期導入は患者の栄養状態を改善し、入院率の低下およびコスト削減につながり、死亡率の低下につながったというものでした。

2000年以降は逆に透析早期導入の利点はなしという報告が多く、理由は過去の文献には「lead time bias」があったため正確な生命予後を予測できないとされています。「lead time bias」=Error occurs when patients are entered at different stages in the course of their illnesses. Prolonged survival may simply be due to earlier registration of patients by recording a longer lead time.
この文献はlead time bias を除外するため透析患者の腎機能をe-GFR=20ml/minからさかのぼり計算した結果、早期でも晩期でも透析導入時期にかかわらず生命予後に有意差はみられないとしています。ただし、DMなどの基礎疾患があり、状態の悪い患者が早期に導入された場合やlate referralの患者は除外されています。
また最近のこの文献はcomorbidityがあると早期導入の傾向がある可能性があることを示しています。

先月NEJMにはじめて透析導入時期に関するrandomized control study(RCT)が発表されました。進行性のCKD患者(800人ほど)の腎機能をCockcroft-Gault (CG) equationにより算出し(MDRDよりもGFRは20%程度高めに算出される)
1) GFR=10-14ml/min での早期導入と
2) GFR=5-7ml/min での晩期導入
の2つのグループにランダムに患者を振り分け3年以上観察した結果、死亡率、合併症に関して差は見られなかったという結論です。ただし、多くの晩期導入患者は尿毒症や肺水腫などの症状が見られたため、実際は平均9.8ml/minでの導入だったそうです。そもそも一般的に栄養状態の悪いESRD患者では腎機能の指標としてCrを使用したe-GFRはMDRDでもCGでも正確性を欠くので、早期と晩期導入のGFR2-3ml/min程度の差に果たして意味があるのかという疑問もあります。またこのスタディーはオーストラリア・ニュージーランドの施設で行われたものですが、半分近くは腹膜透析患者であることも、一般の透析人口とは異なります。

早期導入は患者のQOLの低下や医療費の増大につながるという欠点もあり、晩期では尿毒症状や栄養状態の悪化などがありますので、適切な透析導入のタイミングを設定することはとても大事なことであると考えられます。このNEJMのスタディーからはタイミングに関して答えは出ませんでしたが、今後はcystatinCなどCr以外のマーカーを使用した、RCTが必要なのかもしれません。またESRD患者のe-GFRは正確性を欠くことはお覚えておく必要があり、あくまで、透析の導入は患者さんの症状で判断することは言うまでもありません。

T.S
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腎結石update

腎結石は腎臓内科より泌尿器科にお世話になることが多いですが、先日ニューヨーク大学腎臓内科のD. Goldfarb氏がMUSCにいらした際、腎結石についてのとてもよいレクチャーをしてくれました。彼の専門はシスチン結石に関してですが、腎結石全般に関してとてもよいupdateをしてくれましたのでその内容をshareします。

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一般的に、腎結石の約85%はカルシウム結石で残りは尿酸結石と尿路感染に関連したstruvite結石、遺伝性の結石などです。カルシウム結石の80%はシュウ酸カルシウム結石、20%はリン酸カルシウムです。平均気温の上昇、肥満の増加、ERにおける CT scan施行率の増加などからか? アメリカでは腎結石は増加傾向にあります。

急性背部痛の腎結石患者さんが救急外来に来たら、たくさん点滴をして排石を試みたいと思っている人は意外に多いのではないでしょうか? しかし実際、尿管につまった結石は周囲組織の浮腫を誘発するため、NSAIDなどの抗炎症剤を投与し、適度な点滴でみるのが効果的のようです。腎結石の排石率と痛みのコントロールを大量点滴vs少量点滴で治療した結果、効果に差がないことがこの文献により示されています。シンクが詰まったら強制的に流そうとしても流れないのと同じですね。またNSAIDに加えtamsulosinを使用すると排石率が上がったという報告もあります。Tamsulosinは、前立腺肥大に使用されるα拮抗薬ですから、女性の結石患者に使用する際は薬剤師を説得する必要がありますが。。。

腎結石のほとんどはカルシウム結石ですので、食事によりカルシウムを制限すると再発予防は可能でしょうか?腎結石再発の既往がありかつ高カルシウム尿症を呈した患者を集めておこなった唯一のrandomized control trialによると、正常カルシウム/低塩分食vs低カルシウム食で5年間比較した結果、正常カルシウム食群はむしろ結石の再発が低いことが分かっています。その理由は、カルシウムは腸でシュウ酸と結合するため、低カルシウム食は、シュウ酸の吸収をむしろ増加させ、尿細管へシュウ酸の排泄を増加させたためです。また、低塩分も結石の再発防止に役立ったと思われます。理由は尿細管でNaの再吸収が行われる際、Caも同時に再吸収されるからです。

Oxalobacterをご存じでしょうか? Helicobacter pyloriに関する論文は3万もあるのに対して、Oxalobacterに関してはたった100程度しかないそうですが興味深い菌です。このoxalobacterは大腸に生息する嫌気性菌で、シュウ酸を代謝します。もしかしたら昨今の過剰な抗菌薬の投与によりこの菌が減少しその結果、腎結石の増加に関与している可能性もあるのではないかとも言われています。ただシュウ酸の吸収は小腸で行われるので大腸にしか生息しないOxalobacterがカルシウム結石にどの程度関与しているかは今後調べる必要があります。

最後に尿酸結石について。痛風患者さんは尿酸結石をつくりやすい? というのはまったくの誤解で、シュウ酸カルシウム結石が最多です。尿酸結石患者の約60%は糖尿病の既往がありますが、その理由としてインスリン抵抗性による尿細管障害が原因の一つとされます。。
集合間の介在細胞でのアンモニアの排泄能が障害され尿をアルカリ化できないことが主たる原因です。すなわち尿のpHを5.5から6.5に上げるだけで、尿中の尿酸値にかかわらず、尿酸結石の生成を予防できます。尿酸結石には尿のpHが最も大事であることがこのとても素晴らしいreviewのfigure2にすべてが集約されています。治療はcitric acid などの尿アルカリ化です。

腎結石に関して知らないことばかりでしたので大変に勉強になりました。

T.S
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