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透析患者の降圧薬(その1)

透析患者の血圧薬の使用は患者さんが至適体重(dry weight)に達していることや塩分制限ができていることが条件ですが、週3回の血液透析では降圧薬を必要をするのは一般的です。降圧薬を処方する際、透析に関連した薬の薬物動態といくつかのスタディーを知っておくと良いのでおさらいします。
medsindialysis.jpg
レニン-アンジオテンシン系阻害薬はその安全性と忍容性から透析患者には第一選択薬になります。ここで知っておく必要があるのはACE阻害薬(ACE-I)の多くは、透析患者では半減期が長くなることと透析で除去されることです。一方、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)は除去されません。したがって透析中に血圧が下がる患者さんにはACE-Iはよい選択となるでしょうし、透析中の高血圧が問題なら透析で除去されにくいfosinoprilやARBを使用すると良いと思われます。ACE-Iは透析で除去されますが、透析後に投与することにより血圧を比較的良くコントロールできたことをこの小さなstudyが報告しています。ACE-I以外の降圧薬(2剤まで)を内服中の透析患者11人に透析後lisinoprilを追加投与して血圧をABPM(24時間血圧測定)で観察した結果、4週間後には平均血圧が22/11mmHg低下したとしています。ACE-Iを透析患者に投与する際、高K血症は考える必要はあるのでしょうか?腸管からのK排泄は透析患者では通常よりも高く[8 (non HD) vs 20 mmol (HD)/day]ACE-Iが腸管からのK排泄を阻害するかは定かではありませんが、一般的に無尿の透析患者でもACE-Iによる高K血症には注意する必要があるようです。
ACE-Iの透析患者の予後についてはこのstudyをみてみます。Fosinoprilかプラセボを400人近い透析患者に使用しプライマリーエンドポイントである心血管関連eventを2年間観察した結果、fosinopril投与群はコントロール群に比べ降圧効果がよかったのと、有意差はなかったものの心血管関連eventを低下したとしています。
ARBの透析患者への影響ですが、この日本で行われたopen label study (valsartan, candesartan, losaratan対プラセボ )によると360人ほどの透析患者をARB を含んだグループとそうでないグループに分け3年間観察した結果、両グループとも降圧を達成できたもの、生命予後に差はなくARBグループは心血管関連eventの低下をもたらす可能性があるとしています。

ACE-I/ARBの透析患者への使用は降圧効果と心血管eventの低下に関連している可能性があり第一選択薬として推奨されています。ACE-Iの多くは半減期の延長と透析で除去されるのが特徴である一方、ARBは透析では除去されません。次回はカルシウム拮抗薬、β受容体阻害薬や他の降圧剤について触れてみます。

T.S
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透析膜の再使用

米国の透析が日本と異なる点はいくつかありますが、特に驚いたのが「透析血流の速さ」と「透析膜の再使用」です。透析膜の再使用は日本では認められていませんが、米国と多くの発展途上国ではよく行われています。
血液透析が一般に普及されはじめたのは1960年代ごろからですが70年代後半より尿毒性物質の除去に優れるとされるハイパフォーマンスの透析膜が登場しました。ところが、この透析膜は当時とても高価であったためコスト削減目的で、透析膜を廃棄する変わりに、洗浄・消毒をしたのち再使用をはじめました。再使用はさらに医療廃棄ごみの削減と新しい透析膜を使用する際にしばしば起こったエチレン・オキシドという消毒剤によるfirst use syndromeを予防できることから盛んに行われるようになりました。しかし2012年現在、ハイパフォーマンス透析膜が通常の透析膜を使用した場合に比較して、生命予後に関して明確な利点が証明されていないことと、ハイパフォーマンス透析膜が安価になってきていること、またエチレン・オキシドが製造の段階で使用されなくなった今、再使用が本当に必要なのかどうかと思います。

米国の透析膜の再使用の頻度をグラフに示します。米国の透析はDavitaとFreseniusという2大透析会社を中心に展開しています。Freseniusは2002年から透析膜の再使用をなくしましたがDavitaはいまだに再使用をしています。したがって米国はいまも40%近くの透析施設で再使用が行われています。
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使用済みの透析膜の消毒方法ですが、以前は発がん性作用を持ったホルムアルデヒドを使用していましたが、現在はほとんどperacetic acid (過酢酸)です。透析膜の再使用回数は施設にもよりますが、一つあたり10-70回ほどです。患者に使用後、2時間以内に過酢酸で消毒したのち透析膜のtotal cell volumeを測定し、物理的な損傷がないことを確認します。その後、10時間ほど消毒液に浸すと使用可能な状態になります。一般的に水道水を浄化したのち透析液を作る血液透析は完全な無菌ではありませんが、このような方法で消毒した透析膜を使用し感染が起こらないのが不思議に思うほどです。

透析膜の再使用とそうでない場合の透析効率に関するデータはHEMOスタディーのサブ解析が示しています。この試験では透析膜の種類と消毒方法によって、尿毒性物質(尿素、β2ミクログロブリン)の除去率が消毒回数とともにどのように変化するかを観察しました。その結果、透析膜の種類に限らず10回程度の過酢酸消毒では小分子である尿素の除去率は1-2%程度低下しました。一方、中分子のβ2ミクログロブリンの除去率はポリスルフォン(PS)膜(F80A)では変わらなかったもの、ハイパフォーマンスセルロース膜(CT190)では30-40%低下しました。また過酢酸に加え透析膜を漂白するとクリアランスがあがります。この理由ははっきりしませんが、1) セルロース膜は血中たんぱくと結合しやすいため透析膜孔を閉塞するためクリアランスが低下する 2) PS膜は血中たんぱくを結合しにくいか、過酢酸によりよりダメージを受けやすいなどの理由が考えられます。一方、漂白剤はポリマーを除去するので、より透析膜孔を大きくしクリアランスを良くする可能性があります。

再使用により透析患者の生命予後への影響ですが、再使用膜vs新しい透析膜によるランダム化された前向き臨床研究はありませんが、この比較的大きな後ろ向き研究報告によると、どちらを使用しても生命予後にあまり差はないとされています。

米国で透析膜は一つ10ドル以下です。透析膜が仮に10ドルとして、100人いる透析施設で、週3回透析での年間のコストを簡単に計算してみます。52週x 3回透析x10ドルx100人=156,000ドル。一方、再使用の方ですが、平均20回再使用したとすると、年間156回の透析で1人が10本使ったとしても透析膜に関しては10本x10ドルx100人=10,000で済みます。ただしこれに加え、消毒液、消毒施設の管理費、技師さんの給料(平均年収35,000ドル)がかかってきます。仮に消毒のためだけに技師を3人雇ったとしても35000x3人=105,000ドル、消毒液2000ドル程度、施設管理費を含めてももしかしたら、再使用の方が少し安く上がるのかもしれません。ただし、その差は極めて小さなものとなってきていることは事実です。

Davitaは透析膜の再使用を行っている代償として?使用済みの透析関連ごみをリサイクルするプロジェクトを昨年発表しました。医療廃棄物をリサイクルし、非医療のプラスチック製品などに再利用するようです。まずはカリフォルニアにある106の透析施設でパイロットスタディーをするようですが、年間160トンものごみの削減につながると予想されています。

以上、透析膜の再使用は日本では禁止されているのでなじみがありませんが、発展途上国では日常行われていますし、先進国の米国でもいまだに行われています。KDOQIは再使用に関しては推奨も否定もしていません。米国で再使用が始まった経緯と消毒剤による透析膜クリアランスの変化と患者への影響などを中心におさらいしてみました。

T.S
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Computing

臨床にせよ、研究にせよ、生命科学においてノイズはつきものです。それゆえ、データを処理、解析する作業は必須です。ちょっとしたデータ処理を自分で行えるようになることは、長期的にメリットがあると思います。昨今、インターネットを介して得られる情報量は莫大で、様々なツールも無料で入手できます。今回はフリーでできるcomputingの一例を挙げてみます。
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無料テキストエディタ 
テキストエディタにてテキストファイルを変換する“トリック”は、情報処理において幅広く利用できて、便利です。例えば、数百人分のIDや様々な検査結果がエクセルシートにまとめられているとします。このデータを使って統計処理する際、まず最初に、手元にある統計ソフトにフィットするように、データの形を整えないといけません。例えば、データAとデータBの間は、,(カンマ)で区切らないといけなかったりして、数百人分のデータ一つ一つにひたすら,(カンマ)を付ける単純作業をする必要があるかもしれません。データの抜けているところを自分の目で一つ一つ探して、特有の記号に置き換える必要もあるかもしれません。数百人の臨床データなら力技で押し通せるかもしれませんが、何千個にも及ぶ遺伝子発現のデータなどとなると、お手上げです。
一例として、ここにあげるテキストファイルデータ(ProximalTubuleData xx)はMark Knepperの管理するNIHのウェブサイトから引用したものです。
大量の文字や数字が並んでいますが、よくみてみると所々データが抜けていたり、遺伝子の説明があったりなかったり、それも” ”で囲われていたり囲われていなかったりで、これをそのまま統計ソフトに読み込むことはできません。そこで、テキストエディタを使えば、自分の必要とするデータを必要な配列に、例えばこのように(ProximalTubuleData xx b)瞬時に変換することが可能です。

無料統計ソフト R
Rは過去10年ほどで飛躍的に成長している無料の統計ソフトです。Rはプログラミング言語の一つで、R特有の表記を学ぶ必要がありますが、Rの基本となるベクターの働きを理解すると、データ処理に非常に優れている言語であることが実感できます。特にグラフィックの面で優れています。以前CQIのところで紹介したデータも全てRを使いました。

注:上記の無料テキストエディタの欄ではWindowsにて、フリーのNotepad++を使用しました。Search→replaceを選択し、search modeにてregular expressionを選択し、Find whatに  (\d+_\w+)\t(\w\w_\d+)\t(\d+\.\d+)\t([^\t]+)\t([^\t]+)\t([^\t]+)\t(.*)\t([A-Z]{10,})
を入れ、replace withに \2\t\3\t\5\t\6\t\"\"\t\8 を入力しました。Regular expressionは他のソフトでも広く共通して使え、Mac OSやLinuxではTextWrangler、gedit、jEditなどがNotepad++の代わりに無料で使用できます。Regular expressionの説明はここでは省略しましたが、興味のある方は、インターネット(無料)や関連する本(例えば、Practical computing for biologists, Steven Haddock, Casey Dunn, SINAUER Associates, Inc.)を参照してください。

波戸 岳
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尿細管性アシドーシス(RTA)part 2

RTAは腎臓が原因で高Cl-性代謝性アシドーシスをきたす病態であるとPart 1で書きましたが、厳密には“正常または正常に近い腎機能”で酸の排泄障害がある病態を示します。高Cl-性代謝性アシドーシスの原因で大事なのは慢性腎臓病(CKD)です。特にGFRが40ml/min以下になるとネフロン数の減少からアンモニアの産生が低下するため、腎臓は体内で作られた酸を十分に排泄できなくなり、高Cl-性アシドーシスを呈します。GFRが20ml/min以下とさらに低下すると陰イオンを排泄できなくなるため、「アニオンギャップ」(=通常計測されない陰イオン)が増加します。したがって通常CKDでアニオンギャップがみられるのは腎機能が進行した場合であることがわかります。

3型RTAは1型と2型RTAが混在した小児にみられる稀な病態です。

RTAで最も多いのが4型RTAです。病態は“低レニン性-低アルドステロン症”です。臨床上1) 軽度のCKD 2) 糖尿病3) 高K血症4) 高Cl-性アシドーシスを呈していることが多いです。4型RTAの正確な機序は不明ですが以下のことが指摘されています。

腎臓:低レニンの機序は不明ですが、それに伴う低アルドステロンは高K血症をきたします。腎機能が正常だと高K血症そのものが集合管からのK排泄を促すため高K血症は改善しますが、CKD(特にGFR 40ml/min以下)ではネフロン数の減少から高K血症とアンモニアの減少からアシドーシスをきたします。またCKDは体液過剰にある場合が多く、これがレニンの分泌を抑制していることが考えられます。その証拠に、利尿剤などでhypervolemiaを改善するとKや血圧は正常化します。ただし、両側の腎臓を摘出してもアルドステロンは産生されることと高K血症がアルドステロン産生を刺激することから、低レニンだけが4型RTAの原因とは考えらていません。

副腎:糖尿病によるインスリン抵抗性からか、副腎のzona glomerulosaの機能障害を引き起こしアンジオテンシンII不応の低アルドステロン症を呈します。
実際このstudyではACTHによるアルドステロンの分泌は正常であったため、DMは副腎におけるpost receptor defectを引き起こすと考察しています。

薬剤:レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とヘパリンは高K血症を助長します。RAS阻害薬はその名のとおりです。NSAIDsはプロスタグランディン(PG)の合成を阻害しPGはレニンを刺激することがわかっていますので、低レニンから低アルドステロンに関与します。ヘパリンは副腎におけるアルドステロン合成を抑制するため低アルドステロンとなります。

4型RTAの治療はK制限のほか血圧が正常なら、fludrocortisoneなどの鉱質コルチコイドの投与が有効ですが、体液過剰や高血圧がある場合は利尿剤です。
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またRTAではありませんが、“高K血症と代謝性アシドーシス”を呈する病態で重要なのは、鉱質コルチコイド受容体(Mineral Corticoid Receptor:MR)の障害です。遺伝的にMRに変異があるため、アルドステロンの感受性の低下した偽性低アルドステロン症(psuedo-hypoaldosteronism: PHA type1)という病態がありますがこれは小児でみられアルドステロンの産生に異常がないが高K血症や代謝性アシドーシスを呈する病態です。また米国で好まれる黒いlicorice(甘草)に含まれるglycyrrhizic acidは腎臓で11-β-hydroxysteroid dehydrogenase [コルチゾール(MRに作用する)→コルチゾン(MRに作用しない)の変換酵素]を阻害するため、腎臓における鉱質コルチコイドを増加させるためPHA の治療としても使用されます。

T.S

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Potpourri II

最近のDr. Singhのブログにて、アメリカと他国(主にアジア)の透析の違いについて触れた記事がありました。これはそもそもUCLAのDr. Kalantar-Zadehの記事をもとにしたものですが、各国の透析の違いをどうとらえるか、2人の見方が異なっており、興味深く思いました。この記事では、On-line hemofiltration、クレメジン、たんぱく制限食などがあげられていますが、他にも違いはいくつもあげられます。特に急性期の透析療法に至っては、違うことのほうが多いといって過言ではないでしょう。
このような違いをあげたとき、往々にして、どの国が優れているかという論争になりがちですが、”Anonymous”がDr. Singhのブログのコメント欄にて指摘しているように、”RCT proven”に限らず、現時点でベストと思われる選択肢を探す姿勢は、目の前の患者をみるに当たって大切なことだと思われます。
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各国の医療制度や倫理の違いは大きく、それは、臨床治験の活動にも大きく影響を及ぼします。例えば、アメリカのFDAは、新薬を用いる臨床治験を審査する際に、新薬の潜在的な患者への利益よりも、その新薬が患者に有害でないことを重視します。そして、その傾向はますます強くなってきています。そのため、新薬や、人体に使われるディバイスが、治験の直前まではアメリカで開発されつつも、臨床治験はヨーロッパにて行われる、というパターンが増えているようです。例えば、以前紹介したものでは、コレステロール吸着膜を使用したsFlt1のapheresisがそうです。もっと最近の例では、来月ドイツにて、ベットサイドGFR測定機器を用いた臨床治験が開始となります。逆に、ヨーロッパの国によっては、動物を使ったグラントの認可は、厳しく制限されているところもあると聞いています。各国がお互いの利点を生かして、協力、前進していく姿勢は、今後更に重要になってくることと思います。

波戸 岳
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Quiz 2

最近の腎生検からです。診断は何でしょう?

電子顕微鏡写真1
電子顕微鏡写真2

波戸 岳
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誰のための論文?

わたしは腎臓内科フェローシップ中「polycystic kidney disease (PKD)におけるciliaと高血圧の関係」というテーマで基礎研究を2年間行いました。今後もこのテーマで研究を続けていく予定なので、現在進行中の臨床試験「HALT」というスタディーの結果は気になるところです。PKDでは腎臓でのレニンアンジオテンシン系が亢進していると考えられ、それが腎嚢胞の形成促進や腎機能低下に関与していることが動物実験では指摘されています。HALTは多施設、無作為化二重盲検試験で、レニンアンジオテンシン系阻害薬(ACEIとARBとACEI単独)を正常腎機能(GFR>60ml/min)のPKD患者に投与し、通常血圧と低血圧に保ったグループとに分け、腎機能や腎臓の大きさを観察していくスタディーです。またGFR25-60ml/minとすでに低下したグループへの投与も観察します。このスタディーに関してこんな中間報告論文が腎臓病関連の分野では良いとされる雑誌に載りました。

ところが内容を見て残念に思いました。要旨に書いてあることと、内容が一致していないからです。要旨には「我々の分析の結果、腎臓の大きさと機能パラメーターに「強い」関連性がある」と書かれていますが、中身を見るときわめて弱い関連しかありません。またMethodの項でしっかりと“Because of the exploratory nature of the analysis, adjustments were not performed”と書いているにもかかわらず、上記結論を導いています。ほとんどの人は「題名」とせいぜい「要旨」しか読みませんのでこれは誤解を招く可能性があります。論文を読む際、良いジャーナルからの記事はしっかりと吟味された上で出版されていると思いがちですが、やはりしっかりと内容を確認するべきだと感じます。またそういったスキルを身につけることが大事であることは言うまでもありません。
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もうひとつ指摘したいのが、臨床試験ではこういった中間分析を論文として発表する必要があるのかということです。この結果をどう臨床に生かせるのでしょうか?これを見て、誰がどういった恩恵を受けるのでしょうか?そもそも臨床試験はデザインされた時点で施行方法に関しては変更できないわけですし、オンラインで試験の内容を確認できる時代にデザインに関する論文をあえて掲載する必要はあるのでしょうか?個人的な意見ですが、こういったアクセサリー的な論文を出す理由の多くはグラント更新のための材料、ファカルティーポジションの確保や昇任目的の論文数稼ぎと推察します。たしかに昨今の不景気からリサーチマネーの確保が難しい状況を考慮すると、理解できないわけでもありません。ただいったい「誰のための論文なのか?」と思ってしまいます。わたしは決してこの論文を書いた人たちをターゲットとしているわけではなく、一般論としてこの疑問を投げかけます。それにしてもこのラスト筆者は大変有名な方で670以上も論文があります。これに1つ加えて得るものと、もしかしたら失ってしまう要素を比較するといろいろと考えさせられます。数ではなく、たった一つで良いので「医学的に真に貢献できる」研究報告を目指したいものです。

T.S
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尿細管性アシドーシス(RTA) part 1

RTAは腎臓が原因で酸が蓄積し高Cl性の代謝性アシドーシスをきたす病態です。1から4型までありますが、本によっていろいろな書き方をしていますが自分なりに重要なポイントだけまとめます。
nephrocalcinosis.gif
1型RTAは最初に見つかったので1型となっていますが遠位(distal)RTAとも呼ばれます。これは集合管からH+が正常に分泌されない状態です(尿細管側のH+ATPaseと血管側のCl-/HCO3 exchangerの異常)。人はタンパク摂取から約100mmol/日のH+を産生し、主に腎臓の尿細管から排出します。排出されたH+は当然そのまま出て行くことはできないのでリン酸塩などの滴定酸(20%)とアンモニアNH3(80%)と結合し尿から出て行きます。
NH3+H+→NH4+(実際はNH4Cl)・・・(1)
尿イオンの内訳は陽イオンが主にNa+、K+、NH4+で陰イオンは主にCl-です(HCO3-はほとんど0)。したがって通常はNa+K+NH4=Clのはずです。NH4+は直接測定ができないので、測定可能な尿中Na、K、Clを用いて、尿アニオンギャプ(UAG)を計算しNH4+の割合を推測します。すなわち定常状態ではUAG:(陽イオン)-(陰イオン)=Na+K-Cl=陰性になります。ところがH+が尿中に排泄できないdistal RTAでは式(1)からNH4+の産生がないためUAGは理論上0か陽性となります。またH+が尿に出て行かないので尿のpHは通常>5.5と高くなります。1型RTAはアシドーシスが重度なため、骨でのH+の緩衝がさかんになり、骨からCaが多く失われる結果、高Ca尿症とnephrocalcinosisが見られるのも特徴です。

2型RTAは近位(proximal)RTAとよばれ2番目に発見されたためその名前がついています。糸球体でろ過されたHCO3-は通常ほとんどが近位尿細管で再吸収されます。ところが遺伝的にHCO3-の再吸収にかかわるトランスポーターに異常がみられたり、薬剤やlight chain(多発性骨髄腫)などが原因で尿細管障害をきたすとHCO3-の再吸収が正常に行われなくなります。これが2型RTAの原因です。具体的には血漿HCO3-が約15 mmol/L以下にならないと尿細管でのHCO3-の再吸収が起きなくなります。したがって、慢性の2型RTAでは尿中にHCO3-は見られませんが、重曹などで血漿HCO3-を上昇させると尿中にHCO3-が出現します。このHCO3-は遠位尿細管で取り込まれ、代わりにKが分泌されるのでHCO3-を投与したときのみ低K血症が見られるのも特徴です。一方1型RTAはH+の代わりにK+が多く分泌されるため低K血症が見られます。ではUAGはどうでしょうか?HCO3-はNH4+と結合するためProximal RTAでは UAGの測定はあまり意味がなくなります。重曹投与などで尿中にHCO3-が出現するときとそうでない場合があるからです。

次回はCKDと4型RTAについてです。

T.S
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Clinical case I

先日うけたコンサルトの中から一例紹介します。

55歳女性、既往歴なし、一昨日からの呼吸苦を主訴に来院。一ヶ月ほど前より、急な体重増加と下腿の浮腫もあり。尿たんぱくクレアチニン比は10以上。血尿なし。血清クレアチニン値は0.7 mg/dl、血清アルブミン1.2g/dL。造影CTにて広範囲に及ぶ肺梗塞と腎臓静脈血栓が判明し、同日入院となりました。抗凝固薬がプライマリーチームによって開始され、この時点で腎臓内科コンサルトをうけました。さて、この時点で最も考えられる診断は何でしょう?また、この時点でどのようなマネージメントをとりますか?
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Nephrotic syndromeに肺梗塞、腎静脈血栓を合併していることから、膜性腎症が強く疑われます。理由は明らかではありませんが、膜性腎症では血栓を高率に合併することが知られています。もちろんこの症例が、他の腎症である可能性はありますが、確率的にはずいぶん低くなります。
スペースの都合上詳細は省かせていただきますが、この症例において、病歴、身体所見、血液検査等に、特記すべき所見はありませんでした。血液検査は、ANA, C3, C4, anti-phospholipid antibody, SPEP/UPEP, free light chain, hepatitis, HIV などすべて陰性でした。糖尿病もありません。二次性の膜性腎症として、悪性腫瘍、薬剤、感染症を常に考慮する必要がありまが、この症例において、それらを疑わせる所見もありませんでした。彼女は半年前に消化管内視鏡、マンモグラムなどのスクリーニングをうけており、今回のCT結果も含めて、腫瘍は否定的です(65歳以上の男性に限れば、20-30%で腫瘍が関与していると報告されています)。薬剤、感染症も否定的です。
さて、コンサルトにうけた際には、確定診断の有無にかかわらず、現時点でのrecommendationを提示することは、とても大切です。どのようなマネージメントを選択するかは、意見が分かれるところですが、ここにいくつかオプションをあげてみます。

1. 抗凝固薬を一時中止して数日後に腎生検する
1-a: 診断がついたら、腎生検の結果に基づいて治療(ステロイドなど)を開始する
1-b: 腎生検の結果が実際に膜性腎症だったら、しばらく治療せずに様子をみる(ステロイドなどを使わず抗凝固薬とACEI/ARBのみ)
2. 抗凝固薬を継続し、腎生検は行わない(急性期の肺梗塞、腎静脈血栓の治療を優先)。
2-a: 抗凝固薬とACEI/ARBでしばらく様子をみる
2-b: 今empiricalに治療(ステロイドなど)を開始する

腎生検と抗凝固療法中断/再開の、リスク、ベネフィットをどう判断するかで、個人差がでてくるところですが、我々はこのケースで2-bを選択しました。治療薬はステロイド単剤を選択しました。病歴、血液検査などから膜性腎症である可能性が非常に強く、しかも腫瘍や感染症など二次性を疑わせる所見もないため、empiricalに治療を開始するのは妥当だろうと考えました。今後のプランとしては、外来で2ヶ月ほど抗凝固薬を継続し、再度CTをとり、血栓が消失していたら、その時点で抗凝固薬を一時中止して、腎生検をして診断を確定することとしました。治療開始数ヵ月後でも、膜性腎症の組織診断は十分に可能です。
もしもこのケースが、血栓症を伴わず、大量の蛋白尿だけのケースであれば、診断をつけるために現時点で腎生検を試みたと思います。さらに、その腎生検結果が膜性腎症であれば、自然寛解を期待して、しばらくACEI/ARBのみで様子をみるのもリーズナブルだと思います。

我々はステロイド単剤を選択し、他の免疫抑制剤を加えませんでしたが、これも個人、施設間、もしくは国によってかなり温度差があります。ステロイドと併用する薬として、米国ではcyclosporine, prografが好んで使用され、ヨーロッパではcyclophosphamide (Ponticelli regimen)です。 ACTHやrituximabも小さなスタディーですが、ポジティブな結果がいくつか報告されています。
ちなみに、今回、腎生検査をしないかわりに、血液検体をBoston University Dr. Salantらのグループに送り、anti-phospholipase A2 receptor (PLA2R) 自己抗体を測定してもらうことにしました。Idiopathic の膜性腎症ではPLA2R抗体が8割近くで陽性になり、治療に反応して抗体値が低下することが報告されています。(NEJM, NEJM, JASN) まだPLA2Rの臨床的な意義、有用性は定まっていませんが、腎生検査をためらう今回のようなケースにおいて、今後広く利用されるようになるかもしれません。

波戸 岳
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造血幹細胞移植後の急性腎障害(AKI)

造血幹細胞移植:Hematopoietic Stem Cell Transplant (HSCT) は自己もしくは他人(ドナー)の造血幹細胞を末梢血や骨髄から採取し、患者(レシピエント)に化学療法・放射線療法を施した後、清浄化された造血幹細胞を静脈経由で体内に戻す治療法です。この治療法は1960年ごろ行われはじめ、今では世界で年間5-6万例ほど行われ、血液腫瘍の治療には欠かせないものとなっています。ただし、副作用は大きいため、高齢者の移植はそれだけリスクを伴います。今回はHSCT に伴うAKIについて触れます。まず、どういった移植方法があるかを知り、どのステージでどのようなAKIが起こるかを見てみます。
allo and auto.gif
まず移植は主にautologous(自分の幹細胞を移植)とallogeneic(他人の幹細胞を移植)に分かれます。疾患、患者の健康状態、ドナーの適合性などによって決まります。骨髄移植の前に多くの場合myeloablationとよばれる治療が行われます。これは放射線や化学療法を集中的に行い免疫を抑制しがん細胞を除去することです。その後ドナーの造血細胞を戻し、最後に免疫抑制剤を投与しますが、これはgraft versus host disease (GVHD)をコントロールし免疫寛容を得るためです。Myeloablationはレシピエントにきわめて負担がかかるので通常、比較的若く合併疾患のない患者に行われます。Autologous HSCTは自分の幹細胞を移植するためGVHDの心配はありませんが、myeloablationは必須となります。一方、allogenic HSCTを行う場合は上記の治療法のほか、ドナー幹細胞のレシピエントへの生着(engraftment)をドナーとレシピエント間の免疫反応(graft vs tumor effect)を起こさせることにより達成するmini-allo (non-myeloablative)があります。ただしこれは進行の遅いがんなどに限られ、副作用は少ないもの再発も多いです。米国でのデータですが疾患により移植の種類が違いますし件数も違っていることがわかると思います。

AKIは大きく分けて3つのステージで見られます。移植直後のtumor lysis syndrome、そして2週間程度でピークが見られるveno-occlusive disease (VOD)やacute tubular necrosis (ATN)そして、数ヵ月~1年後に見られるthrombotic microangiopathy/ calcineurin inhibitor toxicityです。この図からわかるように、移植後2週間前後に起こるAKIはVODやATNが多いことがわかります。VODとは放射線や化学療法で内皮細胞障害を起こした肝臓の小血管が閉塞し、portal hypertensionを呈する状態です。いわゆるhepatorenal-syndromeを起こすので腎臓は強い血管収縮から虚血をきたし腎不全を起こします。VOD治療にはantithrombotic/fibrinolytic効果を持ったdefibrotideの有効性が指摘されています。またengraftment syndromeという病態があり、移植細胞が生着し、白血球が上がってくる際、この白血球がcapillary leak syndrome を起こし、発熱、肺水腫、下痢を起こし、AKIを呈することがあります。

HSCT後のAKIを見た場合、移植の時期とalloかautoの確認、そしてなによりmyeloablationの有無を聞くことはとても重要なことがわかります。Myeloablation がない場合、通常VODは除外できるからです。

T.S
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