「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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Animal models

Activated protein C (Xigris)は重症敗血症に対して米国で頻繁に使用されてきましたが、いくつかのネガティブなスタディーの結果をうけて、昨年末に市場から撤退しました。
そのほかにもタイトな血糖コントロール、ステロイド、バソプレッシンなど、敗血症に対する治療は、どれも近年のトライアルではいまひとつの結果です。ある治療薬が市場にでて、ネガティブなスタディーに至る理由はいくつもあげられるかと思いますが、そもそも動物実験の段階で十分に検証されていないことが往々にあります。さらに根底の問題は、動物モデルがヒトでの病態を正確に反映していないことが多々あることがあげられます。
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敗血症に限らず、腎臓領域でも同じような問題がみられます。虚血性急性腎不全モデルとしてよく使われる腎血管のクランプ(虚血再還流障害)も、ヒトでは腹部大動脈瘤の手術などの例外を除き、現実を反映しません。なので、例えばヒトでのショック、多臓器不全の病態をより反映するように、大動脈レベルで操作して、腹腔臓器全体への血流を減らすなどの工夫もみられますが、これがヒトでの現実(糖尿病、動脈硬化を患った高齢者の腎臓)を反映するかと問われれば厳しいところです。

慢性腎不全モデルは5/6腎摘などがよく用いられますが、Operator dependentな要素がさらに増えます。少しでも再現性を増すように、最近では工夫の一つとして、一方の腎に障害を引き起こした後、しばらく経ってから健側の腎臓を摘出するなどという手法があるようです。これは、一側腎障害と両側腎障害では腎臓に起こる変化が違うことを利用しています。一側腎障害(=対側腎は正常)の方が、対側腎が正常でないとき(=両側腎障害もしくは腎臓が一つしかない場合)と比べて優位に繊維化、慢性化をきたすことが知られています。一見すると矛盾するようですが、イメージとしては、正常な腎臓が対側に存在していると、障害を受けた側の腎臓は怠けてそのまま慢性的障害が進行するのに対し、正常な腎臓が存在していない場合は、障害を受けた腎臓は慢性的変化を遅らせようとがんばろうとしているようなものです(本当の理由は不明です)。

波戸 岳
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透析患者の降圧薬(その2)

日本は欧米に比べβ遮断薬の使用頻度は少ないと思いますが、欧米では急性心筋梗塞や心不全では特にACEI/ARBとともに必須の薬になります。透析でも安全に使用できる薬です。いくつか気をつけるべき点は、まずpropranololやnadololなど非選択性β遮断薬は空腹時や運動後に高K血症をきたす可能性があることです。またそのほかの選択性β遮断薬やα作用を持ち合わせたβ遮断薬の半減期や透析除去率はこの表にあるとおりですが、atenololはその半減期の長さから腎不全患者では使用を避けるべきです。Metoprololは米国で最もよく使用される薬のひとつですが、透析ではほぼ除去されますので厳密には透析後に再投与が必要になります。一方carvedilolやlabatalolなどαβ遮断薬は透析では除去されません。
透析におけるβ遮断薬の使用に関してですが、このstudyによると、118人の維持透析中の心不全患者(NYHA2-3で皆RAAS阻害薬+ジギタリス内服)にcarvedilolかコントロールを投与して観察した結果、24ヶ月の時点でCV死亡率、入院率がcarvedilolグループでよかったとしています。
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カルシウム拮抗薬はnon dihydropyridine(diltiazemなど)かdihydropyridine (amlodipine、nifedipineなど) に大別できますが、いずれも透析ではほとんど除去されません。このstudyによると250人(RAAS阻害薬やβ遮断薬を内服)の透析患者にamlodipineかプラセボを追加投与し30ヶ月観察した結果、統計的な有意差は見られなかったもののamlodipine内服グループで心血管eventが少なかったとしています。
α遮断薬はALLHAT trial(lisinopril、amlodipine、doxazosin、 chlorthalidone)で心血管eventが利尿薬グループにくらべdoxazosinグループに有意に多かったことから試験は中止され、それ以来もっぱらα拮抗薬は敬遠されがちですが、透析では実は安全に使用でき、容量の調整や透析で除去されないという利点があります。寝る前の処方が一般的です。

Clonidine/methyldopaなど中心性交感神経刺激薬は口渇、反跳性高血圧など様々な副作用がみられるので最良の薬ではないのですが、clonidineは米国では頻繁に使用されています。この薬は透析で除去されませんし半減期が長くなることも注意点です。Minoxidilはfluid retentionが特徴ですから透析患者での使用は最終選択肢となります。
最後に米国では頻繁に使用されるhydralazineですが、透析患者での使用の安全性は不明です。この薬はループス様の薬剤反応を起こすことで有名ですが、実際はそれほど見かけない印象です。ただし、一日4回の処方が必要なのでコンプライアンスの問題から好ましくありません。

透析における降圧薬の薬物動態、除去率や臨床での効果などを中心に簡単にまとめて見ました。
T.S
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透析患者の降圧薬(その1)

透析患者の血圧薬の使用は患者さんが至適体重(dry weight)に達していることや塩分制限ができていることが条件ですが、週3回の血液透析では降圧薬を必要をするのは一般的です。降圧薬を処方する際、透析に関連した薬の薬物動態といくつかのスタディーを知っておくと良いのでおさらいします。
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レニン-アンジオテンシン系阻害薬はその安全性と忍容性から透析患者には第一選択薬になります。ここで知っておく必要があるのはACE阻害薬(ACE-I)の多くは、透析患者では半減期が長くなることと透析で除去されることです。一方、アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)は除去されません。したがって透析中に血圧が下がる患者さんにはACE-Iはよい選択となるでしょうし、透析中の高血圧が問題なら透析で除去されにくいfosinoprilやARBを使用すると良いと思われます。ACE-Iは透析で除去されますが、透析後に投与することにより血圧を比較的良くコントロールできたことをこの小さなstudyが報告しています。ACE-I以外の降圧薬(2剤まで)を内服中の透析患者11人に透析後lisinoprilを追加投与して血圧をABPM(24時間血圧測定)で観察した結果、4週間後には平均血圧が22/11mmHg低下したとしています。ACE-Iを透析患者に投与する際、高K血症は考える必要はあるのでしょうか?腸管からのK排泄は透析患者では通常よりも高く[8 (non HD) vs 20 mmol (HD)/day]ACE-Iが腸管からのK排泄を阻害するかは定かではありませんが、一般的に無尿の透析患者でもACE-Iによる高K血症には注意する必要があるようです。
ACE-Iの透析患者の予後についてはこのstudyをみてみます。Fosinoprilかプラセボを400人近い透析患者に使用しプライマリーエンドポイントである心血管関連eventを2年間観察した結果、fosinopril投与群はコントロール群に比べ降圧効果がよかったのと、有意差はなかったものの心血管関連eventを低下したとしています。
ARBの透析患者への影響ですが、この日本で行われたopen label study (valsartan, candesartan, losaratan対プラセボ )によると360人ほどの透析患者をARB を含んだグループとそうでないグループに分け3年間観察した結果、両グループとも降圧を達成できたもの、生命予後に差はなくARBグループは心血管関連eventの低下をもたらす可能性があるとしています。

ACE-I/ARBの透析患者への使用は降圧効果と心血管eventの低下に関連している可能性があり第一選択薬として推奨されています。ACE-Iの多くは半減期の延長と透析で除去されるのが特徴である一方、ARBは透析では除去されません。次回はカルシウム拮抗薬、β受容体阻害薬や他の降圧剤について触れてみます。

T.S
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透析膜の再使用

米国の透析が日本と異なる点はいくつかありますが、特に驚いたのが「透析血流の速さ」と「透析膜の再使用」です。透析膜の再使用は日本では認められていませんが、米国と多くの発展途上国ではよく行われています。
血液透析が一般に普及されはじめたのは1960年代ごろからですが70年代後半より尿毒性物質の除去に優れるとされるハイパフォーマンスの透析膜が登場しました。ところが、この透析膜は当時とても高価であったためコスト削減目的で、透析膜を廃棄する変わりに、洗浄・消毒をしたのち再使用をはじめました。再使用はさらに医療廃棄ごみの削減と新しい透析膜を使用する際にしばしば起こったエチレン・オキシドという消毒剤によるfirst use syndromeを予防できることから盛んに行われるようになりました。しかし2012年現在、ハイパフォーマンス透析膜が通常の透析膜を使用した場合に比較して、生命予後に関して明確な利点が証明されていないことと、ハイパフォーマンス透析膜が安価になってきていること、またエチレン・オキシドが製造の段階で使用されなくなった今、再使用が本当に必要なのかどうかと思います。

米国の透析膜の再使用の頻度をグラフに示します。米国の透析はDavitaとFreseniusという2大透析会社を中心に展開しています。Freseniusは2002年から透析膜の再使用をなくしましたがDavitaはいまだに再使用をしています。したがって米国はいまも40%近くの透析施設で再使用が行われています。
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使用済みの透析膜の消毒方法ですが、以前は発がん性作用を持ったホルムアルデヒドを使用していましたが、現在はほとんどperacetic acid (過酢酸)です。透析膜の再使用回数は施設にもよりますが、一つあたり10-70回ほどです。患者に使用後、2時間以内に過酢酸で消毒したのち透析膜のtotal cell volumeを測定し、物理的な損傷がないことを確認します。その後、10時間ほど消毒液に浸すと使用可能な状態になります。一般的に水道水を浄化したのち透析液を作る血液透析は完全な無菌ではありませんが、このような方法で消毒した透析膜を使用し感染が起こらないのが不思議に思うほどです。

透析膜の再使用とそうでない場合の透析効率に関するデータはHEMOスタディーのサブ解析が示しています。この試験では透析膜の種類と消毒方法によって、尿毒性物質(尿素、β2ミクログロブリン)の除去率が消毒回数とともにどのように変化するかを観察しました。その結果、透析膜の種類に限らず10回程度の過酢酸消毒では小分子である尿素の除去率は1-2%程度低下しました。一方、中分子のβ2ミクログロブリンの除去率はポリスルフォン(PS)膜(F80A)では変わらなかったもの、ハイパフォーマンスセルロース膜(CT190)では30-40%低下しました。また過酢酸に加え透析膜を漂白するとクリアランスがあがります。この理由ははっきりしませんが、1) セルロース膜は血中たんぱくと結合しやすいため透析膜孔を閉塞するためクリアランスが低下する 2) PS膜は血中たんぱくを結合しにくいか、過酢酸によりよりダメージを受けやすいなどの理由が考えられます。一方、漂白剤はポリマーを除去するので、より透析膜孔を大きくしクリアランスを良くする可能性があります。

再使用により透析患者の生命予後への影響ですが、再使用膜vs新しい透析膜によるランダム化された前向き臨床研究はありませんが、この比較的大きな後ろ向き研究報告によると、どちらを使用しても生命予後にあまり差はないとされています。

米国で透析膜は一つ10ドル以下です。透析膜が仮に10ドルとして、100人いる透析施設で、週3回透析での年間のコストを簡単に計算してみます。52週x 3回透析x10ドルx100人=156,000ドル。一方、再使用の方ですが、平均20回再使用したとすると、年間156回の透析で1人が10本使ったとしても透析膜に関しては10本x10ドルx100人=10,000で済みます。ただしこれに加え、消毒液、消毒施設の管理費、技師さんの給料(平均年収35,000ドル)がかかってきます。仮に消毒のためだけに技師を3人雇ったとしても35000x3人=105,000ドル、消毒液2000ドル程度、施設管理費を含めてももしかしたら、再使用の方が少し安く上がるのかもしれません。ただし、その差は極めて小さなものとなってきていることは事実です。

Davitaは透析膜の再使用を行っている代償として?使用済みの透析関連ごみをリサイクルするプロジェクトを昨年発表しました。医療廃棄物をリサイクルし、非医療のプラスチック製品などに再利用するようです。まずはカリフォルニアにある106の透析施設でパイロットスタディーをするようですが、年間160トンものごみの削減につながると予想されています。

以上、透析膜の再使用は日本では禁止されているのでなじみがありませんが、発展途上国では日常行われていますし、先進国の米国でもいまだに行われています。KDOQIは再使用に関しては推奨も否定もしていません。米国で再使用が始まった経緯と消毒剤による透析膜クリアランスの変化と患者への影響などを中心におさらいしてみました。

T.S
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Computing

臨床にせよ、研究にせよ、生命科学においてノイズはつきものです。それゆえ、データを処理、解析する作業は必須です。ちょっとしたデータ処理を自分で行えるようになることは、長期的にメリットがあると思います。昨今、インターネットを介して得られる情報量は莫大で、様々なツールも無料で入手できます。今回はフリーでできるcomputingの一例を挙げてみます。
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無料テキストエディタ 
テキストエディタにてテキストファイルを変換する“トリック”は、情報処理において幅広く利用できて、便利です。例えば、数百人分のIDや様々な検査結果がエクセルシートにまとめられているとします。このデータを使って統計処理する際、まず最初に、手元にある統計ソフトにフィットするように、データの形を整えないといけません。例えば、データAとデータBの間は、,(カンマ)で区切らないといけなかったりして、数百人分のデータ一つ一つにひたすら,(カンマ)を付ける単純作業をする必要があるかもしれません。データの抜けているところを自分の目で一つ一つ探して、特有の記号に置き換える必要もあるかもしれません。数百人の臨床データなら力技で押し通せるかもしれませんが、何千個にも及ぶ遺伝子発現のデータなどとなると、お手上げです。
一例として、ここにあげるテキストファイルデータ(ProximalTubuleData xx)はMark Knepperの管理するNIHのウェブサイトから引用したものです。
大量の文字や数字が並んでいますが、よくみてみると所々データが抜けていたり、遺伝子の説明があったりなかったり、それも” ”で囲われていたり囲われていなかったりで、これをそのまま統計ソフトに読み込むことはできません。そこで、テキストエディタを使えば、自分の必要とするデータを必要な配列に、例えばこのように(ProximalTubuleData xx b)瞬時に変換することが可能です。

無料統計ソフト R
Rは過去10年ほどで飛躍的に成長している無料の統計ソフトです。Rはプログラミング言語の一つで、R特有の表記を学ぶ必要がありますが、Rの基本となるベクターの働きを理解すると、データ処理に非常に優れている言語であることが実感できます。特にグラフィックの面で優れています。以前CQIのところで紹介したデータも全てRを使いました。

注:上記の無料テキストエディタの欄ではWindowsにて、フリーのNotepad++を使用しました。Search→replaceを選択し、search modeにてregular expressionを選択し、Find whatに  (\d+_\w+)\t(\w\w_\d+)\t(\d+\.\d+)\t([^\t]+)\t([^\t]+)\t([^\t]+)\t(.*)\t([A-Z]{10,})
を入れ、replace withに \2\t\3\t\5\t\6\t\"\"\t\8 を入力しました。Regular expressionは他のソフトでも広く共通して使え、Mac OSやLinuxではTextWrangler、gedit、jEditなどがNotepad++の代わりに無料で使用できます。Regular expressionの説明はここでは省略しましたが、興味のある方は、インターネット(無料)や関連する本(例えば、Practical computing for biologists, Steven Haddock, Casey Dunn, SINAUER Associates, Inc.)を参照してください。

波戸 岳
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尿細管性アシドーシス(RTA)part 2

RTAは腎臓が原因で高Cl-性代謝性アシドーシスをきたす病態であるとPart 1で書きましたが、厳密には“正常または正常に近い腎機能”で酸の排泄障害がある病態を示します。高Cl-性代謝性アシドーシスの原因で大事なのは慢性腎臓病(CKD)です。特にGFRが40ml/min以下になるとネフロン数の減少からアンモニアの産生が低下するため、腎臓は体内で作られた酸を十分に排泄できなくなり、高Cl-性アシドーシスを呈します。GFRが20ml/min以下とさらに低下すると陰イオンを排泄できなくなるため、「アニオンギャップ」(=通常計測されない陰イオン)が増加します。したがって通常CKDでアニオンギャップがみられるのは腎機能が進行した場合であることがわかります。

3型RTAは1型と2型RTAが混在した小児にみられる稀な病態です。

RTAで最も多いのが4型RTAです。病態は“低レニン性-低アルドステロン症”です。臨床上1) 軽度のCKD 2) 糖尿病3) 高K血症4) 高Cl-性アシドーシスを呈していることが多いです。4型RTAの正確な機序は不明ですが以下のことが指摘されています。

腎臓:低レニンの機序は不明ですが、それに伴う低アルドステロンは高K血症をきたします。腎機能が正常だと高K血症そのものが集合管からのK排泄を促すため高K血症は改善しますが、CKD(特にGFR 40ml/min以下)ではネフロン数の減少から高K血症とアンモニアの減少からアシドーシスをきたします。またCKDは体液過剰にある場合が多く、これがレニンの分泌を抑制していることが考えられます。その証拠に、利尿剤などでhypervolemiaを改善するとKや血圧は正常化します。ただし、両側の腎臓を摘出してもアルドステロンは産生されることと高K血症がアルドステロン産生を刺激することから、低レニンだけが4型RTAの原因とは考えらていません。

副腎:糖尿病によるインスリン抵抗性からか、副腎のzona glomerulosaの機能障害を引き起こしアンジオテンシンII不応の低アルドステロン症を呈します。
実際このstudyではACTHによるアルドステロンの分泌は正常であったため、DMは副腎におけるpost receptor defectを引き起こすと考察しています。

薬剤:レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とヘパリンは高K血症を助長します。RAS阻害薬はその名のとおりです。NSAIDsはプロスタグランディン(PG)の合成を阻害しPGはレニンを刺激することがわかっていますので、低レニンから低アルドステロンに関与します。ヘパリンは副腎におけるアルドステロン合成を抑制するため低アルドステロンとなります。

4型RTAの治療はK制限のほか血圧が正常なら、fludrocortisoneなどの鉱質コルチコイドの投与が有効ですが、体液過剰や高血圧がある場合は利尿剤です。
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またRTAではありませんが、“高K血症と代謝性アシドーシス”を呈する病態で重要なのは、鉱質コルチコイド受容体(Mineral Corticoid Receptor:MR)の障害です。遺伝的にMRに変異があるため、アルドステロンの感受性の低下した偽性低アルドステロン症(psuedo-hypoaldosteronism: PHA type1)という病態がありますがこれは小児でみられアルドステロンの産生に異常がないが高K血症や代謝性アシドーシスを呈する病態です。また米国で好まれる黒いlicorice(甘草)に含まれるglycyrrhizic acidは腎臓で11-β-hydroxysteroid dehydrogenase [コルチゾール(MRに作用する)→コルチゾン(MRに作用しない)の変換酵素]を阻害するため、腎臓における鉱質コルチコイドを増加させるためPHA の治療としても使用されます。

T.S

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Potpourri II

最近のDr. Singhのブログにて、アメリカと他国(主にアジア)の透析の違いについて触れた記事がありました。これはそもそもUCLAのDr. Kalantar-Zadehの記事をもとにしたものですが、各国の透析の違いをどうとらえるか、2人の見方が異なっており、興味深く思いました。この記事では、On-line hemofiltration、クレメジン、たんぱく制限食などがあげられていますが、他にも違いはいくつもあげられます。特に急性期の透析療法に至っては、違うことのほうが多いといって過言ではないでしょう。
このような違いをあげたとき、往々にして、どの国が優れているかという論争になりがちですが、”Anonymous”がDr. Singhのブログのコメント欄にて指摘しているように、”RCT proven”に限らず、現時点でベストと思われる選択肢を探す姿勢は、目の前の患者をみるに当たって大切なことだと思われます。
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各国の医療制度や倫理の違いは大きく、それは、臨床治験の活動にも大きく影響を及ぼします。例えば、アメリカのFDAは、新薬を用いる臨床治験を審査する際に、新薬の潜在的な患者への利益よりも、その新薬が患者に有害でないことを重視します。そして、その傾向はますます強くなってきています。そのため、新薬や、人体に使われるディバイスが、治験の直前まではアメリカで開発されつつも、臨床治験はヨーロッパにて行われる、というパターンが増えているようです。例えば、以前紹介したものでは、コレステロール吸着膜を使用したsFlt1のapheresisがそうです。もっと最近の例では、来月ドイツにて、ベットサイドGFR測定機器を用いた臨床治験が開始となります。逆に、ヨーロッパの国によっては、動物を使ったグラントの認可は、厳しく制限されているところもあると聞いています。各国がお互いの利点を生かして、協力、前進していく姿勢は、今後更に重要になってくることと思います。

波戸 岳
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Quiz 2

最近の腎生検からです。診断は何でしょう?

電子顕微鏡写真1
電子顕微鏡写真2

波戸 岳
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誰のための論文?

わたしは腎臓内科フェローシップ中「polycystic kidney disease (PKD)におけるciliaと高血圧の関係」というテーマで基礎研究を2年間行いました。今後もこのテーマで研究を続けていく予定なので、現在進行中の臨床試験「HALT」というスタディーの結果は気になるところです。PKDでは腎臓でのレニンアンジオテンシン系が亢進していると考えられ、それが腎嚢胞の形成促進や腎機能低下に関与していることが動物実験では指摘されています。HALTは多施設、無作為化二重盲検試験で、レニンアンジオテンシン系阻害薬(ACEIとARBとACEI単独)を正常腎機能(GFR>60ml/min)のPKD患者に投与し、通常血圧と低血圧に保ったグループとに分け、腎機能や腎臓の大きさを観察していくスタディーです。またGFR25-60ml/minとすでに低下したグループへの投与も観察します。このスタディーに関してこんな中間報告論文が腎臓病関連の分野では良いとされる雑誌に載りました。

ところが内容を見て残念に思いました。要旨に書いてあることと、内容が一致していないからです。要旨には「我々の分析の結果、腎臓の大きさと機能パラメーターに「強い」関連性がある」と書かれていますが、中身を見るときわめて弱い関連しかありません。またMethodの項でしっかりと“Because of the exploratory nature of the analysis, adjustments were not performed”と書いているにもかかわらず、上記結論を導いています。ほとんどの人は「題名」とせいぜい「要旨」しか読みませんのでこれは誤解を招く可能性があります。論文を読む際、良いジャーナルからの記事はしっかりと吟味された上で出版されていると思いがちですが、やはりしっかりと内容を確認するべきだと感じます。またそういったスキルを身につけることが大事であることは言うまでもありません。
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もうひとつ指摘したいのが、臨床試験ではこういった中間分析を論文として発表する必要があるのかということです。この結果をどう臨床に生かせるのでしょうか?これを見て、誰がどういった恩恵を受けるのでしょうか?そもそも臨床試験はデザインされた時点で施行方法に関しては変更できないわけですし、オンラインで試験の内容を確認できる時代にデザインに関する論文をあえて掲載する必要はあるのでしょうか?個人的な意見ですが、こういったアクセサリー的な論文を出す理由の多くはグラント更新のための材料、ファカルティーポジションの確保や昇任目的の論文数稼ぎと推察します。たしかに昨今の不景気からリサーチマネーの確保が難しい状況を考慮すると、理解できないわけでもありません。ただいったい「誰のための論文なのか?」と思ってしまいます。わたしは決してこの論文を書いた人たちをターゲットとしているわけではなく、一般論としてこの疑問を投げかけます。それにしてもこのラスト筆者は大変有名な方で670以上も論文があります。これに1つ加えて得るものと、もしかしたら失ってしまう要素を比較するといろいろと考えさせられます。数ではなく、たった一つで良いので「医学的に真に貢献できる」研究報告を目指したいものです。

T.S
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尿細管性アシドーシス(RTA) part 1

RTAは腎臓が原因で酸が蓄積し高Cl性の代謝性アシドーシスをきたす病態です。1から4型までありますが、本によっていろいろな書き方をしていますが自分なりに重要なポイントだけまとめます。
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1型RTAは最初に見つかったので1型となっていますが遠位(distal)RTAとも呼ばれます。これは集合管からH+が正常に分泌されない状態です(尿細管側のH+ATPaseと血管側のCl-/HCO3 exchangerの異常)。人はタンパク摂取から約100mmol/日のH+を産生し、主に腎臓の尿細管から排出します。排出されたH+は当然そのまま出て行くことはできないのでリン酸塩などの滴定酸(20%)とアンモニアNH3(80%)と結合し尿から出て行きます。
NH3+H+→NH4+(実際はNH4Cl)・・・(1)
尿イオンの内訳は陽イオンが主にNa+、K+、NH4+で陰イオンは主にCl-です(HCO3-はほとんど0)。したがって通常はNa+K+NH4=Clのはずです。NH4+は直接測定ができないので、測定可能な尿中Na、K、Clを用いて、尿アニオンギャプ(UAG)を計算しNH4+の割合を推測します。すなわち定常状態ではUAG:(陽イオン)-(陰イオン)=Na+K-Cl=陰性になります。ところがH+が尿中に排泄できないdistal RTAでは式(1)からNH4+の産生がないためUAGは理論上0か陽性となります。またH+が尿に出て行かないので尿のpHは通常>5.5と高くなります。1型RTAはアシドーシスが重度なため、骨でのH+の緩衝がさかんになり、骨からCaが多く失われる結果、高Ca尿症とnephrocalcinosisが見られるのも特徴です。

2型RTAは近位(proximal)RTAとよばれ2番目に発見されたためその名前がついています。糸球体でろ過されたHCO3-は通常ほとんどが近位尿細管で再吸収されます。ところが遺伝的にHCO3-の再吸収にかかわるトランスポーターに異常がみられたり、薬剤やlight chain(多発性骨髄腫)などが原因で尿細管障害をきたすとHCO3-の再吸収が正常に行われなくなります。これが2型RTAの原因です。具体的には血漿HCO3-が約15 mmol/L以下にならないと尿細管でのHCO3-の再吸収が起きなくなります。したがって、慢性の2型RTAでは尿中にHCO3-は見られませんが、重曹などで血漿HCO3-を上昇させると尿中にHCO3-が出現します。このHCO3-は遠位尿細管で取り込まれ、代わりにKが分泌されるのでHCO3-を投与したときのみ低K血症が見られるのも特徴です。一方1型RTAはH+の代わりにK+が多く分泌されるため低K血症が見られます。ではUAGはどうでしょうか?HCO3-はNH4+と結合するためProximal RTAでは UAGの測定はあまり意味がなくなります。重曹投与などで尿中にHCO3-が出現するときとそうでない場合があるからです。

次回はCKDと4型RTAについてです。

T.S
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