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ESRD における高リン血症の治療

血中のリンは高いほど寿命が短いことが哺乳類ではわかっています。
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人はリンを一日に約1g摂取し、多くは腸管で吸収され尿中から排出されます。末期腎不全では腎臓からリンを排泄できませんので透析で除去することになります。一回の透析でリンを1g除去しても、3回/週の透析では、4g/週の蓄積が起こります。したがって、週3回の血液透析患者さんのほとんどはリン吸着薬を必要とします。一方で透析を毎日行うとリン吸着薬を必要としないことが多いのはこの理由からです。(daily hemodialysis, CRRT, PD)
リンは肉などのたんぱく質に多く含まれます。植物性のリンはphytateとして存在しますが人はphytaseという分解酵素を持っていないため吸収できません。またタンパク豊富な牛乳にふくまれるリンは肉ほどよく吸収されません。

リン吸着薬は腸管でリンが吸収されるのを防ぎます。もっとも多く使用されているのはカルシウム製剤です。炭酸カルシウム(elemental Ca:40%)と酢酸カルシウム(elemental Ca:20%)とありますが、酢酸カルシウムは吸収されうるカルシウム1mgあたりリンを1mg吸収しますが、炭酸カルシウムはリンを0.57mgと約半分しか吸収しません(JCI)。したがって、酢酸カルシウムは炭酸カルシウムに比べ、カルシウム成分が半分であるものの、リンをより効率よく吸収する薬剤といえます。

もうひとつ大事なリン吸着薬は非カルシウム製剤(sevelamer, lanthanumなど)です。カルシウム製剤と比較したstudyはたくさんありますがDCOR study ではsevelamer7g/日とelemental Ca 2g/日(酢酸カルシウム70%、炭酸カルシウム30%)をESRD患者に投与し比較した結果、sevelamerはカルシウム製剤に比べ、血中リンやPTH値が高く、血中カルシウムとコレステロールが低かったものの、死亡率には影響がありませんでした。またこのmeta analysis でもsevelamerとカルシウム製剤の比較試験での死亡率に差はないとしています。これら大きなtrialの結果をふまえ、NEJMではリン吸着薬としてsevelamerやlanthanumはCa製剤よりも優れているというevidenceは不十分であるうえ、高価である分、リン吸着薬としてはCa製剤を推奨するとしています。

まとめると、同じカルシウム製剤でも炭酸カルシウムと酢酸カルシウムでは炭酸カルシウムは2倍もelemental calciumがあることと、リン吸着効率は酢酸カルシウムのほうがよいということ。これはKDIGOでは明記していませんがするべきです。現在sevelamerやlanthanumなど非カルシウムリン吸着薬とカルシウム製剤では予後に差はなく、高Ca血症がある場合を除き、ESRDの高リン血症の治療には薬価の低いカルシウム製剤を使用するべきであると思われます。

T.S
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