2腎同時移植 (dual kidney transplant)


死体腎移植では、ごくまれに2腎同時移植(dual kidney transplant)が行われることがあります。その殆どはKDPI高値の腎臓です。

当施設でドナーが発生した場合最低1腎が当院に、残り1腎は本土にオファーされることが多いのですが、KDPIが高値だった場合、ハワイから本州までは長時間輸送が問題となります。仮に本州の他施設に搬送されたとしても、手術直前に却下される可能性があります。臓器廃棄率が高いことはよいことではありませんので、その場合UNOSとOPOによって当施設が2腎を使用してよい、という許可が下りることがあります。その場合2腎同時移植を検討します。移植評価外来で2腎移植にサインアップした患者を割り出し、興味があるか電話で確認します。患者が応諾すれば手術を行います。

2腎同時移植に適したレシピエントはどのような人たちでしょうか?まず、50代未満の患者は除外されることが多いです。若年患者は将来再移植が必要になる可能性が高いため、2腎同時移植を行うと、将来3つ目の腎臓を移植するスペースが無くなってしまう可能性があるためです。したがって、「50代以降で再移植が難しく、質の良い腎臓をそこまで強く希望しない(或いは今すぐにでも移植を受けたい)患者」が対象になることが多いです。

当施設ではこの1年で2件の2腎同時移植が行われました。そのうち1件はKDPIが80前後でしたが、移植後10カ月の時点でGFR35-40前後です。2腎同時移植の予後についてのデータは乏しく、KDPIのように移植前に腎寿命を予測することは困難なため、患者さんにオファーしても断られる場合が多いです。当施設での2件はいずれも親族間のdirected donationだったため患者が受諾したのだと考えています。

では、2腎同時移植後に腎機能悪化をみとめ生検が必要になった場合、どの腎臓を生検するべきでしょうか?MAG3シンチなどでGFR splitを計算し、低GFRの腎臓を生検すすればよいのでしょうか?それについても十分なデータはありません。必ずしもGFRの低い移植腎に拒絶が起こっているとは限らず、両腎生検を勧める論文もあります。しかし、出血リスクもあるので結局は左右どちらかの腎生検が現実的だと思います。当施設の症例は肥満患者でもあったため、どちらの腎臓を生検するかはIR(放射線科)に一任しました。

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人工知能と医療

人工知能(AI)が医療や科学にどう影響していくかを最近よく考えています。

2026年8月現在、米国の医療現場の多くはSukiなどのAIアプリを使って診療が行われています。具体的には、患者との会話をアプリが聞き取り、電子カルテに要約してくれるというものです。現病歴など、自分が聞き逃した部分もきちんと記載してくれるため大変便利ですが、現時点では病態のassessment/planについてはやはり人間による修正が必要なレベルです。

4年後の2030年頃には、AIは人類全体の知能を超越すると予想されています。さらに、現在ではまだ試作段階のHumanoid robot(テスラのOptimusなど)はその頃には1~10億台が様々な場所に配置され、医療の分野では患者の介助や手術も担うようになると見込まれています。マスク氏は、4年後には手術に関する技術がどの外科医よりも優れたレベルに達すると予想しています。そのタイムライン通りになるかどうかは別として、こうした方向に進むのは時間の問題だと考えられます。

科学の分野についてはどうでしょうか。AIが有用な研究テーマを立案し、Humanoid robotを使って実際の研究を行っていくようになると思います。こうしたロボットは24時間働き続けることができ、給料も食事も必要ないため、生産性は飛躍的に高まると予想されます。少なくとも、主任研究者(PI)がグラントを書いて研究費を獲得するという現在の構図は少なくなっていくのではないでしょうか。AIロボットが本格的に普及するまでの過渡期には、AIが優先度の高い研究テーマを序列化し、その研究にNIHなどが資金を出し、実施可能な施設(おそらく多くは会社)を公募する、というような形になるのかもしれません。本来、大学は優秀な人材を獲得し、その人材が研究費を獲得することでアカデミアの財源を支えてきたことを考えると、今後アカデミアはどうなっていくのでしょうか?

労働は15~20年後には必須ではなくなると予想されているようです。Humanoid robotは人件費がかからず、休みも必要としないため生産性が高く、企業の利益は飛躍的に上がり、それに伴ってGDPも相乗的に上昇すると見込まれています。

AIが将来成し遂げる内容は、今の人間には想像もつかないそうです。この話を、今の人類を猿に例えた説明で聞いたとき妙に納得しました。私たち「猿」は、将来「人(AI)」へと進化することは分かっていても、その未来を予想できるのはせいぜい「もっとバナナが食べられるようになるのかな」「屋根のある場所に住めるようになるのかな」といったレベルにすぎず、電気やインターネット、原子力発電、CRISPRによる遺伝子治療といった概念そのものすら想像できないという状態なわけです。

今の人類にとって、猿がジャングルで勝手に暮らしていても気にならない、というのが本音だと思います。将来AIは人類のことをどうでもいいと思って放っておいてくれるのでしょうか?もし人間を、燃費が悪く(食事や排泄、住居が必要で、病気にもなる)扱いにくい存在とみなしたなら、排除するのが合理的だと判断される可能性もあるように思います。AIが悪い方向に進む(p)doomの確率について、Anthropicのアモデイ氏は25%だとこちらで答えています。

4年後にどれだけこのブログ内容があたっているか見に来ようと思います。

三枝孝充

多臓器移植 その2 肝腎同時移植

肝硬変や重篤な急性肝障害では肝移植が適応になりますが、腎不全を併発していると肝腎同時移植(Simultaneous liver and kidney transplant : SLK)の適応になることがあります。多くの患者は肝腎症候群(Hepato-renal syndrome:HRS)による腎不全です。

SLKの適応基準にはCKD基準とAKI基準の2つがあります。CKD基準は、「CKD3以上のCKDがあり、評価の時点でGFRが30以下」であることです。AKI基準は、「GFR25以下、または少なくとも週に1回透析が必要な状態が6週間以上継続している」ことです。これらのいずれかを満たすとSLKの適応となりますが、実際にSLKを行うかどうかは各施設に委ねられています。手術の侵襲が大きく、合併症や致死率も高いためです。特に、HRSは肝移植後に腎機能が改善することもあるため、無理に同時移植はせず、肝移植後に腎機能の改善をモニターすることもあります。アグレッシブなセンターでは、適応を満たせば全例SLKを行います。手術を行う場合、まず肝臓が移植され、24時間以内に腎移植が行われます。腎移植と異なり、肝移植は緊急性が高い場合が多く、SLKに適した同一ドナーが見つからない場合は肝臓だけ移植する場合もあります。肝移植は大量の輸血製剤が必要になるので、移植後暫くは透析(殆どはCKRTです)を継続しボリュームと電解質管理を行い、術後数日から透析処方量を軽減していくという方法をとることが多いです。

肝移植後、HRSがよくなり腎機能が改善すればよいのですが、中には腎機能障害が進行する場合もあります。その場合「セーフティネット腎移植」(safety net kidney after liver transplant : KAL)の適応となります。対象は、「肝移植後60日から365日にGFRが20以下である」ことです。これらの患者は通常の腎臓単独移植患者と異なり、速やかに移植を受けることができます。GFRが20以下であることは毎月の検査でUNOSに報告する必要がありますが、3カ月連続で満たした場合は、その後たとえGFRが20以上に改善したとしても移植を受ける権利が維持されます。

SLKとKALは双方に良い点と欠点があります。SLKの良い点は、2臓器移植を一気に行うことが出来、腎移植が上手くいけば透析を回避できるという点です。欠点は手術の侵襲度が大きく、特に全身状態が不安定な重症肝不全では術後合併症の頻度も高いため、ATIを繰り返すなどして満足いく移植腎機能が得られない可能性がある点です。平たく言うとハイリスク・ハイリターン的な要素がある、ということです。ただし、多臓器移植ではたとえ腎グラフトが一年以内に廃絶しても施設のアウトカムにはカウントされません。これが、アグレッシブにSLKを行う(行えてしまう)理由の一つになっていると個人的には感じています(”腎移植の量と質”参照)。

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多臓器移植 その1

2026年7月、シカゴのノースウェスタン大学で久しぶりの4臓器の同時移植が行われたことがニュースになりました。患者は嚢胞性線維症(CF)で両肺移植の既往があり、今回は両肺再移植(2臓器とみなされます)、肝移植、そして腎移植が同時に行われました。記事によると最初に両肺再移植が行われ、引き続き肝腎移植が行われたようです。

腎臓を含む2臓器移植は比較的コモンに行われます。膵腎、肝腎、心腎同時移植が多くの移植施設で行われています。今回は膵腎同時移植( simultanous pancreas and kidney transplant, SPK )について説明したいと思います。

膵腎同時移植を含めた多臓器移植では、臓器は同一ドナーから移植されます。膵臓はデリケートな臓器で虚血にも弱いため、若年のドナーから得られることが多く、必然的にSPKレシピエントは質の良い腎臓も移植されることになります。多くは、先に膵臓が体の右側、次いで腎臓が左側に移植されます。侵襲が大きく合併症も多い移植のため、多くの施設でのSPKの適応は55歳未満の1型糖尿病のCKD4以上の患者です。しかし若年であれば2型糖尿病患者でも考慮します。

術後合併症リスク、またインスリン抵抗性をできる限り軽減させるため、BMI上限は腎臓単独移植よりも厳しく設定されています。当施設では32未満です。1型糖尿病患者はやせ型が多くBMIが問題になることは多くありませんが、重篤な糖尿病性胃腸症があると嘔吐により免疫抑制剤が内服できない可能性があるので(胃腸症は膵臓移植後も改善しません)、移植評価外来では必ずその程度を評価します。必要なら消化器科に紹介し、gastric pacemakerの適応を判断してもらいます。移植後はステロイドとCNIで糖尿病は確実に悪化するので、特にDKAを繰り返すような1型糖尿病の患者には積極的にSPKを検討します。SPKの待機リストは腎臓単独移植と別なので、SPK患者の待機時間は平均3年と短い傾向にあります。

術後経過が良好な例では、膵腎ともに術後24-48時間以内に機能し始めます。血糖値も数日内に正常化し、アミラーゼ、リパーゼも1-2週間以内に正常化します。うまくゆけば膵臓は15年近く機能します。患者さんは透析とインスリン両方から10年近く解放されるので、生活の質は格段に向上します。何より生命予後も改善するので、特に若年の1型糖尿病患者にとってSPKはまさに福音といえるのです。

臓器分配に関してですが、多臓器移植はドナー発生病院が優先的に臓器を獲得できます。当施設では、膵腎と肝臓を受け取り、残りの腎臓は質が良好ということもあり、本土の他施設に分配されることが多いです。

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いい腎臓はどこへゆく?

前回は質の微妙な腎臓について述べましたが、今回は「質の良い腎臓の分配のされ方」についてより詳しく説明したいと思います。

一般に「質の良い腎臓」とはKDPIが20以下の腎臓を指し、腎予後は10年以上と予測されています(例えば、38歳男性、175cm、体重75kg、血清クレアチニン1mg/dL、頭部外傷による脳死だとKDPIは13です)。これら良質な腎臓は、KDPIが21以上の腎臓とは異なるアリゴリズムにより、「生命予後がより長い」と予測されるレシピエントに優先的に分配されます。その際必要になるのがEPTS(Estimated Post-Transplant Survival)スコアというものです。これは年齢、糖尿病歴、透析歴、移植歴により算出されるスコアで、スコアが20%以下だとより質のいい腎臓の移植適応であると認められます。「若年、糖尿病なし、透析未導入、移植歴なし」だとスコアが最も低くなります。たとえば、同じ50歳の患者でも、「透析歴3年、糖尿病あり、移植歴なし」ではEPTSスコアは60%ですが、「透析未導入、糖尿病なし、移植歴なし」だとEPTSスコアが16%となります。特に、年齢と糖尿病の有無がEPTSを最も強く左右します。EPTSスコアが20%以下だと、待機時間にかかわらず優先的に良質な腎臓がオファーされます。実際に、PKDやIgA腎症などの非糖尿病性腎症でCKD4/5の患者さんが非常に質の良いオファーを受け、透析導入前に移植を受けるのをしばしば経験します。

これらKDPI20以下の腎臓はどのように分配されるのでしょうか?まずCPRA100の患者に全国規模でオファーされます。次にEPTSスコアの低さ->ドナー発生施設からの距離->待機時間の長さ、に従って分配されます。例えば、ドナーがハワイで発生し、血液型が一致するCPRA100の患者がハワイとカリフォルニアにいたとします。カリフォルニアの患者のEPTSスコアがハワイの患者よりも低ければ、腎臓はカリフォルニアの患者にオファーされることになります。EPTSスコアが同等なら、ドナー発生地域であるハワイの患者に移植が行われます。

ただ、以前述べたように、CPRA100の患者はドナー腎に対しDSAを持っている可能性が高く、クロスマッチ陽性となり移植が却下されることはしばしばです。臓器がオファーされたからといって移植が実際に可能とは限りません。現に、移植後による感作のためCPRAが100の若年患者がいました。彼は何度も再移植腎のオファーを受けたのですが、その都度クロスマッチ陽性で手術がキャンセルとなっていました。「あまりに残酷だ」と泣きながら病院を後にする姿は見ていて辛いものがありました。このような患者さんの中には、自ら希望して待機リストから外してもらう人もいます。

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質の微妙な腎臓は誰に移植すべきか

質の微妙な腎臓をどのレシピエントに移植すると腎臓は最大限機能するのでしょうか?これを予測するのはとても難しいということは以前述べました。グラフト機能は術前要素(人種、体重、HLAミスマッチ、CITなど)に加え術後要素(拒絶、AKI、感染症の有無など)にも影響されるのが主な理由です。

質の微妙な腎臓は臓器摘出時に迅速生検を行います。20-30分程度で標本を作製し、病理医が硬化糸球体の割合、線維化、動脈硬化の程度を評価します。その所見に基づき移植の可否を判断します。慢性変化の所見が軽度であれば移植可能と判断し手術に踏み切ります。当センターにおける移植前腎生検の所見は、その殆どが慢性変化は皆無か、ごく軽微でした。しかし、移植後6カ月から1年後のGFRはばらつきが見られました。多くの先行研究により、迅速腎生検の所見は信頼性に乏しく移植腎予後予測には不向きであるということがわかっています。つまり、移植前生検の所見がほぼ正常だったからといって、必ずしも良好な腎予後を期待することはできません。あくまでも生検の意義は「質の悪い腎臓を除外する」点にあることを理解しておく必要があります(たとえば、たとえKDPIが60だったとしても、生検で高度な線維化が判明することがあり、その場合は移植を行いません)。

当センターでの過去18カ月の死体腎移植を後方視的に分析したところ、移植前生検を必要とした質の微妙な腎臓(概ねKDPI50以上)のうち、約1/3は移植後6カ月のGFRが50未満でしたが、約1/3は6カ月-1年後のGFRが55-60以上と良好な腎機能を示していました。良好な腎機能を示したグループは、その殆どが60歳以上のレシピエントで、かつドナーの体重がレシピエントの1.2-1.3倍以上という結果でした。体重と腎臓の大きさはほぼ比例しますので、「大きな腎臓をより生体demandの低い高齢患者に移植すると上手くいく傾向がある」、と推測できます。この結果は今後レシピエント選択の際に有用な判断材料になるかもしれません。しかし、これをルール化してしまうと、60歳未満のレシピエントには質のよい腎臓「しか」移植できなくなる可能性が出てきます。すなわち、これらのレシピエントはより待機時間が長くなってしまうということを意味しています。痛し痒しです。

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生体腎移植 その2

米国では日本と異なり、血液型不適合の腎移植を行う施設は限られています。血液型不適合、またはDSA陽性の場合は交換腎移植(kidney exchange program)を行います。大きく分けて血液型不適合のペア同士内で交換移植を行うpaired donationと、全国規模のプログラムに登録するvoucher programの2つの方法があります。

Paired donationとは、複数のペア(例:ドナー血液型A/レシピエント血液型Bのペアとドナー血液型B/レシピエント血液型Aのペア)間で腎臓を交換する移植法です。施設内でペアが見つけられない場合は、全国規模のvoucher programに登録する必要があります。米国にはThe Alliance of Paired Kidney Donation (APKD) と、The National Kidney Registry (NKR )の2つの機関がそのプログラムを運営しています。

まず、ドナーが自分の希望するレシピエントを指定しておき、先に腎提供を行います。摘出された腎臓はドナーと面識のないレシピエントの待つ病院へと運搬され移植手術が行われます。ドナーの腎提供後、数週間から数か月以内にドナーの指定するレシピエントに他の病院からの生体腎がオファーされるので、移植チームが受諾の是非を決定します。レシピエントよりもドナーの年齢が若いことに越したことはないのですが、ドナーがレシピエントより高齢でも、年齢差が10年未満であれば多くの施設がアクセプトする傾向にあります。東海岸など遠く離れた地域からのオファーの場合、CITが20時間程度かかることもあります。いくら生体腎といえどあまりCITが長いとアウトカムが悪くなりますから、レシピエントに確認をしてから最終決定をします。死体腎移植と異なり、手術日程を前もって決められるのも生体腎移植の利点の一つです。

しかし、ドナーが先に上記の機関を通じて腎提供を行ったものの、レシピエントに生体腎移植が行われない場合も発生します。レシピエントが死亡したり何らかの理由で移植が不可能と判断された場合や、レシピエントが死体腎移植を選択する場合です。腎提供はドナーの完全な自由意志に基づいて行われるため、仮にドナーの望むレシピエントが生体腎移植を受けなかったとしても文句は言えないことになっています。稀ですが、仮にレシピエントが死体腎移植を先に受けてしまっても、ドナーが引き続きそのレシピエントを指定すれば、そのレシピエントは将来2回目の腎移植が必要になった場合、速やかに生体腎移植を受けることが出来ます。

殆どのドナーは特定のレシピエントがいますが、中にはレシピエントを特定しないGood Samaritan donorがいます。「健康体に生まれたのだから、自分の腎臓を提供することで誰かを救うことが出来るのならこれほど素晴らしいことはない」と移植評価外来で述べられます。これが信仰心によるものなのか文化的な背景によるものなのか分かりませんが、個人的にはただただ驚き感謝するばかりです。

ただ、一定の割合のドナーの自殺が近年問題視されています。自殺が移植後のアウトカムによるものなのか、もともとGood Samaritan Donorを希望する人たちには精神的にそのような要素がある人が多いのかは不明ですが、特にGood Samaritan Donor希望の場合、徹底した精神科的評価、ソーシャルワーカーによる生活背景調査を行うようUNOSと移植学会から声明が出されています。

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生体腎移植 その1

米国でも生体腎移植は盛んに行われています。御存じのように、生体腎移植のメリットは死体腎移植に比べ早く移植が受けられ、腎予後がよい点です。日本では原則ドナーは親族6親等以内、姻族3親等以内と定められていますが、米国ではその制限はありません。希望すれば誰でもドナーとしての評価を受けることができます。以前述べたように臓器不足は米国でも深刻な問題であるため、生体腎移植は強く勧められています。

ドナーの条件は大きく3つあり、心身共に健康であること、平均以上な腎機能を持っていること、自らの意思で腎提供を希望していること、です。健康状態に関しては、高血圧があっても必要最低限の薬剤で良好にコントロールされていれば許可します。糖尿病、心疾患等は禁忌です。腎機能(GFR)のカットオフは施設によって異なりますが、当センターでは90を下限にしています。腎提供後、ドナーは30-40%のGFRを喪失し、かつ健康成人でもGFRは加齢とともに低下していくため、特に20代、30代のドナー候補ではより高いGFRが求められます。

身体的な評価とは別に、ILDA(Independent Living Donor Advocate)という独立したチームが精神的/社会的評価を行います。本当にこのドナー候補が自らの意思で腎提供を希望するのか、周囲からの強制がないか、経済的利益相反がないか(例えば腎提供をソーシャルメディアにアップし収入を得るなど)を評価します。また、ドナーの権利(手術当日であっても提供の意思を撤回できるなど)をひとつひとつ確認する重要な役割を担っています。一連の評価が全て完了すると、移植選考委員会で最終決定を下します。評価には約6カ月要するので、特にレシピエントが既にCKDVの場合は評価をスピードアップし、透析開始前に移植が行えるよう努力します。

腎臓提供後はドナーは数日で退院できます。その後、少なくとも6カ月毎の血液検査および尿検査を行い、全て問題なければ2年後に施設でのフォローを終了します。

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CNI minimization

タクロリムスやシクロスポリンなどのCNIほど、移植医を悩ませる免疫抑制剤はないでしょう。CNIは拒絶予防や治療に欠かせない免疫抑制剤でありながら、副作用もきわめて多い薬剤でもあります。代表的なものに神経障害(振戦、末梢神経障害、PRESS)や糖尿病悪化がありますが、やはり何といっても腎傷害(arteriolar hyalinosis, fibrosis)が一番の問題だと思います。特に、腎傷害は死体腎移植においてmarginal quality kidneyを移植された場合に顕著になります。トラフレベルを最小量にしても腎機能が回復しないことはよくあります。

その場合、CNIを他の薬剤に切り替える必要があります(CNI minimization)。米国での主流はベラタセプトです。約10年ほど前に開発された静注製剤で、幾つかの研究でシクロスポリン群と比べGFRと長期予後の優位性が示されたことから、爆発的に普及しました。特に、どんな質の腎臓でも移植するアグレッシブな施設では、移植直後からCNIではなくベラタセプトによる免疫導入を行っているほどです。

当センターでは、移植後GFRが50未満、または重篤な副作用によりCNIが使用できない場合にベラタセプトへの切り替えを検討します。移行期(最初の3カ月)はTCMRおよび感染症(特にCMV)のリスクが高まることが知られています。そのため、同剤への切り替えは移植後6カ月まで待つようにしています。また、CMVハイリスク患者は移植後1年以上経ってから行います。投与開始後は3-4カ月かけてCNIを漸減していきます。肌感覚では、約半数の症例でGFRの改善が見られます。患者さんには、たとえ腎機能の改善が見られなくても、CNIを完全に中止することで腎臓は長く持ちますと説明しています。

ベラタセプト適応外の症例では、エベロリムス/シロリムス等のmTORiに切り替えますが、薬価が高いので(月250ドル)結局CNIを再開することもあります。

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BKウイルス感染症

BKVも移植後に発症するコモンな感染症の一つです。BKVはヒトの85%が小児期に無症候性、或いは上気道経由で感染しており、移植後の免疫抑制により再活性化します。BKVは尿細管および尿管内に多く発現しているガングリオシドに結合し細胞内に侵入します。このガングリオシドは他臓器の細胞にはないため、他臓器に影響を及ぼすことはありません。また、BKVはサイトカインも殆ど放出しないため、無症候性です。

最初は尿で検出され(BK viruria)、10-20%の患者はウイルス血症(BK viremia)を呈します。一般に、血中のウイルス量が10000 IU/mLを超えるとBKウイルス腎症(BKVN)のリスクが高まると言われていますが、実際にはウイルス量がこれより遥かに高値でも腎機能が正常に保たれるケースも多いです。その理由の一つとして、NCCR(non-controlling coding region)の活性度の違いが挙げられています。NCCRはウイルスDNAの一部分で、その活性度によって病原性の強さが左右されるため、ヒトによってBKVNの発症のし易さが異なるというものです。NCCR活性が低ければ、例えウイルス量が高値でも腎機能は保たれますし、逆もまた然りです。

BKVが増殖を続けると、尿管狭窄やBKVNを起こしますが、BKVNの方がよりコモンです。原則BKVの治療薬はなく、免疫抑制剤(主にMMF)を減量することでウイルス量をコントロールします。腎機能が悪化した場合は生検を行い、BKVNの診断を行います。100%有効な治療薬はありませんが、IVIGが50%以上の患者では有効な印象を持ちます。無効な場合はレフルノミド等を投与しますが、あまり効きません。慢性BK viremiaになってもウイルス量が十分抑えられていれば腎機能低下の心配をすることはありません。BKVの殆どは移植後2年以内に発症し、経時的に発症リスクは減少するので、2年目以降はルーチンにチェックする必要はなくなります。知らない間にウイルスが消失したりすることもよくあり、その場合はMMF再開が可能になります。

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