「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
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日米比較:透析成績

日米とも透析患者数は人口の約0.2%(日本26万人、米51万人)だが、治療成績は日本の方が断然良い。透析患者さんの年間死亡率は日本13%に対してアメリカ22.4%である。5年生存率は日本59.9%、アメリカ38%で、透析導入して5年後に日本では6割の患者さんが生存しているのに対して、アメリカでは6割以上の患者さんが亡くなっていることになる。

日米の透析患者さんの成績が大きく違う理由として、当初アメリカ人は原疾患の違い、即ち腎不全の原因として日本では比較的予後良好な「腎炎」が多いのに対して、アメリカでは予後不良の「糖尿病」や「高血圧」が多いと結論付けようとした。しかし1998年以降、日米共に腎不全の原疾患で第一位は糖尿病であり(米:48%、日本:43%.2009年)、以前ほど日米間で原疾患の違いは無くなってきている。

おそらく、最も大きな原因の1つに「コンプライアンス(compliance)/アドヒアランス(adherence)」の違いがあるだろう。つまり、日本人の方がまじめに1回4時間、週3回の透析治療を継続して行っている。アメリカでは透析をサボる患者さんは多い。透析室を回診していると「今日は3時間にdiscountしてくれ!」とか、「今日は用事があるから早く切り上げて帰らせてくれ!」という患者さんは珍しくない。そういうコンプライアンスが悪くて透析不足の患者さんは、結局ERに駆け込むことになり、我々が緊急透析で呼ばれる。だから、ERでの最初の問診は”When was your last dialysis?”である。

日本透析医学界2009年
United States Renal Data System (USRDS) 2009年

長浜正彦
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コロンビア大学 腎臓病理 勉強会

こちらでも小さな勉強会等があればいいのですが、意外とあまりありません。

学会といえばASNとNKFの学会の2つがメインです。フェローが参加する小さな勉強会の一つに、毎年ニューヨークのコロンビア大学で開かれる腎臓病理の勉強会があります。私はこれに去年参加しましたが、楽しかったです。日本から来られた先生方も結構いらっしゃいまいした。

講師の先生は、我々が論文をよんだことのある先生方で、期待を裏切らない講義をしてくれていました。特に、Gerald Appel、Agnes Fogo、Vivette D'Agati、良かったです。

興味のある方は下のリンクを見てみて下さい。

https://register.columbiacme.org/conference.cgi?rm=view&ronbiadaigaku conference_id=398878

今井直彦
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臨床研修医セミナースライド

最近、アメリカでの臨床留学を目指されている先生も多いようですね。私はアメリカで一般内科研修3年、腎臓内科研修2年をさせていただくという貴重な機会に恵まれました。その経験を通じて、よかったと思うこと、逆に困っていること、これからの夢などをまとめたものです。2010年2月に行われた腎臓学会主催の臨床研修医向けのセミナーでお話させてもらったものです。皆さんの参考になれば幸いです。

http://nichibei-nephrologist.net/murashima.pdf


私はアメリカに行って貴重な体験をさせていただき、本当によかったと思っていますが、日本でとてもすばらしいお仕事をされている先生も大勢いらっしゃいます。一人一人にとって、何が一番あっているのかとか、大切なのかとかは違うと思います。
質問、ご意見などなどありましたら、メイリングリストの方にいつでもご連絡ください。

村島美穂
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Renal Fellow Network

今週、ショックなニュースを知りました。Renal Fellow Networkのブログの著者が37歳という若さで亡くなられたことです。

このRenal Fellow NetworkはMGHのフェローが書いていた腎臓内科に関するブログです。毎日、1つの記事がコンスタントにupdateされていて、実は私は愛読していました。疲れているときなどは論文を読む気力がないものですが、このブログを読み、最低でも毎日何か学んだ気分になったものでした。

こちらのフェローで読んでいるものも多いのですが、プログラムのプログラムディレクターからRenal Fellow Networkを読むよう言われたときにはさすがにビックリしました。

我々のブログも、読者のみなさんが何か3分で腎臓内科に関する新しい知識を学べるよう、そんなことを目指してブログを書いていきたいと思っています。

My deepest condolences to Dr. Hellman's family.

今井直彦
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コンサルト制度

米国の内科診療の特徴はどの科も
コンサルト制度があることだと思います。
日本でもコンサルトはしますが
どちらかというと、通常の診療を行いつつ
他の科の症例もみるといった感じではないかと思います。

こちらは、コンサルトサービスが独立していて
通常どこの大学でも1カ月単位の持ち回り性で
コンサルトを受けた患者の回診とカルテ書きを毎日します。
これは腎臓内科フェローシップの主要なローテーションでもあり
多くのことを学べるよい機会です。
またcontinuity of careといったことでもよいことだと思います。

私が現在働いているサウスキャロライナの病院では
施設内に大きな病院が3つあるため、指導医とフェローそれぞれが一人づつ
各病院のコンサルトを受け持ちます。
最も忙しいuniversity hospitalでは大体コンサルトの患者リストは
20ー30人ほどで、毎日新たなコンサルトが4-6件ほどあります
のでけっこういそがしいです 。

担当疾患は急性腎不全から慢性腎不全
透析、持続透析まですべてみます。
施設によっては慢性維持透析の患者を別に見るチームを作るところもあります。

フェローは指導医と朝回診する前に、自分でpreroundを済ませます。
患者のデータと診察を済ませ、カルテまで書き終えます。
ですので、患者が多いと朝早くから病院にきます。
その後、9:30か10:00位から、指導医とこれら患者の回診をし
recommendationなどをattendingノートとしてフェローのノートに付け加え、
治療方針を担当の医師と話をして行きます。
これは毎日行われ、週末も当直の指導医とフェローですべての患者を見ますので
かなり忙しいことが予想できるかと思います。(ノート書きは明らかにbillingのためです:指導医のお給料)

on offのはっきりした米国流の医療のよさもあるのですが
週末にonとなった時のwork loadは想像以上で
事故も起こりやすいですし、やや問題ではあるのも事実です。

コンサルト制度のよさは、主治医であるがために
やらなければならない雑用が少なく
病態と治療に専念できることです。
これだけの患者を担当すると病態の幅も広くカバーできますし
またラウンドの際は指導医が通常いろいろ教えてくれますので
教育的でもあります。

腎臓内科は内科でもsubspecialityに分類され、フェローは大体
それまでに内科のresidencyを終了していますので
primaryケアで学ぶことは一通り済ましています。ですから
専門研修では専門一本という考えは私はそれでいいかなと思います。

腎臓内科は透析、特にicuなどで行う持続透析を行いますが
これは経験したことのある人ならわかるでしょうがマンパワーが必要です。

次回は米国におけるナースやcomedicalの守備範囲の広さの話をしたいと思います。

T.S
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なぜ腎臓内科は人気がないか


米国の医学部はMedical schoolといって、4年制の大学を出たのちに
医学部入学試験を受けて、4年の医学コースに入ることになりますので
日本の医学部と比較して2年多く卒業までにかかることになります。
中には、いったん仕事を何年かしてから医学部に入る人もいるため
年齢も様々です。
また、学費は日本の私立医大並みにどこも大変に高額です。
よってほとんどは学費のローンを組んで、医師になり収入があるようになったら
徐々に返済していくといったことをしている人がほとんどです。
(親のすねをかじる人もいるのでしょうが、みな結局は自分で返済します)

よって、、、多くの医学部生と話をすると
とにかく、早く研修を終え、医師になって(Attendingとして)からもQOLがよく
かつ収入の良い仕事に就きたいと思っている人たちが大半です。

米国では驚くほど科によってQOLと収入の差があり
この傾向に拍車をかけているのも事実です。

Academicに働こうとすると、QOLはともかく、給与面ではやはり
どの科でもPrivate practiceに行く人たちと比較して
かなりの差がありますので、借金を抱え、長い研修生活から
早く脱出したいという思いを抱いている
学生にとっては、研修期間の長いacademic・researchコースに入ろうとする人たちは
少なくなってきているようです。

こちらでは人気の少ない、家庭医学、primary care、小児科、産婦人科など
のレジデンシープログラムではForeign Graduate(FMG)は比較的多くいますし、逆に、皮膚科、眼科、外科系ではまれです。

その比較的人気の落ちている内科のさらに腎臓内科のアカデミックコース
となると、実際どの施設でもAmerican Graduate (AMG)ではなくFMG
が多く占めているようです。
そういったこともあり国は、AMGでアカデミックに残る道を志す者に
いろいろな優遇でもないですが、道を作っているという印象を受けます。
ただし、問題はNIHのグラントは原則、米国市民かpermanent resident
のみを対象としたものがほとんですので、FMGでもVISAの心配のないものを対象としています。
ですから、このNIHのResearch/clinicalトラックは結果的に
少数派を対象とした制度であることが言えます。

NephrologyからAMGが少なくなっていることは昨年の米国腎臓学会でも
話題になっていました。
これは腎臓内科だけではなく、循環器と消化器を除く
すべての内科subspecialityで共通の問題のようです。
その理由は「給料の差」がかなり大きな要素であることは言えます。
アメリカは何でもお金で価値観を図るので仕方ないのでしょうが、なんとも残念な話です。
T.S
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日米の良さ悪さ

このネットは日米の腎臓内科における臨床教育、研究、腎移植における違いを中心に話題に上げ
多くの方々と情報交換ができれば良いなという思いでつくりました。
ブログのほか、講演会や勉強会などもできれば良いと思っております。

米国で臨床研修をしていると、やはり教育に関して
質の高さと環境が優れていると感じます。
アメリカはかつてないほどのrecession
で、苦しい状況にありますが
OBAMA大統領は最近NIHのグラントへの予算計上を決めました。
そんな中日本は逆に科学者育成への予算を削りました。

国が発展するには、若い人材の教育が重要です。
それを国をあげて行っていくかそうでないかは賛否両論でしょうが
すくなくとも、実際に米国で研修を受けてみると
そのシステムの良さは実感します。

私はBasic research / clinical track nephrology fellow
として働いていますが、給料は病院からではなく
NIHのトレーニンググラントよりでています。
それは将来Academicな腎臓内科医を育成するという目的からグラントがおります。
こういったトレーニングを受ける医師には様々な
研究発表の場が設けられ、scholarを作り、頑張っているひとには
助成金を出したり、Awardを与えたりと、Motivationを高めるような
環境があります。
また将来的にフェローを終え、良い研究をしたものには、別のgrantが用意され
研究・臨床医としてAcademicな大学病院で仕事を容易に開始するようなシステムも
できています。

ところが問題もあります。。。。続く
T.S



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初めに

ここは「日米腎臓内科ネット」の活動をお伝えするブログです。
サイトの更新情報の他、腎臓内科についての話題はもちろん、イベントや書籍のご案内、日本・アメリカそれぞれで活躍するメンバーのエッセイ等、様々な情報を発信していく予定です。

「日米腎臓内科ネット」
http://nichibei-nephrologist.net
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