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CRRTも高血流

前回、欧米では血液透析の血流が日本に比べて速いことを書きましたが、これは持続血液透析に関しても同様なことが言えます。CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy)はこちらではCVVH(DF)(Continuous Veno-Venous Hemo(dia)filtration)と呼ぶことが多いです。CRRTは、Sepsisなど血行動態が不安定な患者さんに対して、通常のBUNやCrなどの小分子を透析の拡散作用(diffusion)によって除去するほか、インターロイキンなど炎症に伴う液性因子などの中分子を濾過(filtration)することにより血行動態を安定させる目的で使用されます。その特徴は通常の血液透析に比べ、血流や透析液流を低く設定し、時間も通常は24時間以上かけてゆっくり回すことです。少なくともそれが血行動態の安定を図る重要な要素であると思っていました。

CVVH.jpg

しかし、こちらでは全くその理論が通用しないといいますか、やはり通常の血液透析同様、血流は当院では200ml/min程度で回します。さらに先日、透析器を作るN社の説明を聞いて正直驚きました。最近の持続透析器は大変にコンパクトで、外見からはCRRTの機械とは思えないほどでした。Volumetric balancing fluid managementと呼ばれる機能が付いていて、要は透析液や補液バックの計量計がついていなく、ICUなどで人が機械にぶつかってもアラームが鳴らないようになっています。回路も小さく体外循環量も少なくてすみます。一番驚いたのはCHDFの設定が付いてないことです!CHDかCHFしかないのです。この理由を聞くと、最新のダイアライザーは高性能な膜を使用しているため、通常の透析でも中分子の除去にも優れ、diffusionでもconvectionでもあまり分子の除去に差をきたさないようです。実際CHDかCHFによる透析と生命予後の差をはっきりと証明した文献はありません。

この透析器を使用している施設は全米で多々あるのですが、いずれも高血流(300ml/minから400ml/min)で、透析液流も通常よりは高めの設定をしているようです。といっても、通常のIntermittent HDに比べ、透析液流は比較にならないほど遅いわけですので、これだけの高血流が透析効率にどれだけ寄与しているかは疑問です。

しかし高血流の利点は、抗凝固剤を必要としないことです。こういったCRRTを必要とする患者さんは重症かつ易出血性があることも多く、抗凝固剤を使用しないに越したことはありません。またコストの面でもナファモスタットなどの抗凝固剤は高価です。ちなみにアメリカでは抗凝固剤であるナファモスタットはFDAの認可が下りていないため、もっぱらcitrateを使用します。Citrateはいいのですが、Caと結合するため、イオン化Caの測定を定期的に行い、Caの補充を調整する必要があります。
また余談ですがそもそも急性腎障害を呈した患者さんに持続血液透析と通常の血液透析のどちらを選ぶべきかという問題もあります。この文献からはいずれの透析法でも生命予後に差はないことが報告されています。またSLED(Sustained low efficiency dialysis)と呼ばれる通常の透析を長くゆっくりと行う方法もあります。しかし実際、CRRTが行える環境ならCRRTを選ぶところが多いようです。

以上、通常透析でもCRRTでも、日本では高血流透析は主流ではありませんが、「血流を早くすると血圧が下がる、血行動態を不安定にする」ことはなく、血圧に関与するのは1)除水量、2)体外循環量、3)透析流量であること、欧米で高血流透析は普通に行われていることから、その利点(透析効率を上げることや抗凝固剤を必要としない)は十分にあることは特筆すべきことです。

T.S
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日帰り腎生検

私の施設では腎生検を午前中に行い、6時間程度の経過観察後、患者さんは帰宅する。入院させないというところが,米国らしいところで、帰宅後に容態が悪くなることも意外と多い。33%の合併症が腎生検後8時間以上経ってからおこるという報告もあり、6時間程度で返していることの危険性がよく分かる。せめて,1泊入院させてもいいのではと思うが、米国ではなかなかそうもいかない。
gun.jpg
オンコールの際に、腎生検をした患者さんから血尿持続、背部痛等の主訴があった場合、ERにいってもらうこととしている。何が起きているのか電話だけでは分からないので仕方ないと思う。

日本腎臓学会の腎生検ハンドブックには以下のように記載がある。

日本腎臓学会の平成10 ~ 12 年の集計によりますと,日本全国で1年間に約1 万人の方が腎生検を受けています.軽い出血などの合併症が,100 人あたり2 人程度(1,000人あたり20 人程度)で生じます。すなわち98 名の方は特に問題なく終了しています。輸血や外科的処置を必要とする人は,1,000 人あたり2 人程度です.すなわち,998 名の方では特に大きな処置は必要ありません。最近3 年間で,不幸にして亡くなられた方が2名いますが,1 万5 千回の腎生検で不幸にして1 名死亡されるという危険度です。通常の腎生検の手順で行えば,かなり安定した検査法であることがわかりました。

腎生検では使う針の太さが施設によって違うことも多く、合併症の頻度にも影響を与えていると思います。日米で使っている針の太さが同じか、ちょっと興味があるところです。

今井直彦
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アメリカの医療:薬物中毒

アメリカでは日本に比べて薬物中毒が多い。従って、薬物使用やそれに関連した疾患を診る機会があり、薬物使用を疑う時には尿のドラッグスクリーンをする。アンフェタミン(覚醒剤)、コケイン、マリワナ(大麻)、オピエート(モルヒネ、ヘロイン・麻薬)、などが一般的なドラッグスクリーンである。
drugs.jpg
最も手軽に使用される薬物がマリワナ(大麻)で、タバコのようにパイプで吸う。マリワナの使用頻度は統計によるとアメリカ人の5%であるが、これは今現在マリワナを使用している人の数字であって、使用歴まで含めるとずっと高くなる。アメリカ人でマリワナを吸ったことがない人を探す方が難しいくらいだ。ホンワカと気持ち良くなり、激しい中毒症状は無いので手軽に使用されるが、もちろん依存性はある。
次に多いのがオピエート(モルヒネ、ヘロイン)、いわゆる「麻薬」である。麻薬は強力な鎮痛剤で、医学的には術後やガン疼痛などに使用される。呼吸抑制もあるため、術後に投与された少量の麻薬で呼吸が止まりかけ、あわててICUに運ばれることもある。やはり気持ちが良いらしい。病院でも頻繁に使用される薬剤なので、麻薬を目当てに痛みを訴えてERに来る麻薬中毒患者は日本にでさえいる。禁断症状で発汗したり、ヨダレが垂れたりするが、社会的に問題なのは情緒不安定になり、犯罪につながることである。
アメリカのスゴイところは、この麻薬中毒者の治療として「メサドン」という、これまた別な種類であるが、結局は経口の「麻薬」を使用することである。ヘロイン中毒患者は「メサドンプログラム」という、公にメサドンを与えてくれるプログラムで麻薬をもらい続けることによって禁断症状を起こさず、且つ静脈注射による感染の防止もできる。恐ろしいことに、実はメサドンの方がヘロインよりも依存性が高いと言われている。つまり、アメリカは麻薬中毒患者による犯罪を抑えるために、別な形の麻薬を与え続けているということである。究極の選択であり、エイズの蔓延を防ぐために清潔な注射針を配る発想と似ている。
麻薬中毒者は注射針を使用することが多く、静脈に沿った注射の跡を「トラックマーク」と呼ぶ。「トラックマーク」の探し方であるが、薬物中毒者も見えやすいところは目立つので避ける。見えにくく手頃な静脈というと、足首から甲にかけての血管になる。従って、右利きならば左の足首、左利きならば右の足首に「トラックマーク」を探す。
最後にアンフェタミン(覚醒剤)、コケインであるが、これらは交感神経刺激薬であり、基本的には興奮状態になる。だから、薬物中毒者は気持ちが良くなる状態を「High」と表現する。コケインは鼻から吸引するか、タバコで吸うか、静脈注射する。血管収縮作用があるので、鼻から吸引した場合に局所の血管を収縮しすぎて壊死するため、鼻中隔に穴が開くことが古典的には有名である。ただ、臨床上で重要なのはコケイン由来の胸痛で、これはコケインによる血管収縮が心臓の冠動脈にも起こるために発症する狭心症や心筋梗塞である。

長浜 正彦

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高血流透析は血圧を下げる?という迷信

こちらに来て驚いたことはいくつかありますが、その一つは血液透析の血流速度です。アメリカの透析施設では体の大きさにかかわらず透析血流は平均400ml/min前後です。(血流:透析液=1:2が多い、血流400ml/min なら透析液800ml/min)日本でこの血流を取っている施設は数少ないと思います。血流200ml/min、透析液500ml/minでも通常体格の人はKT/V(透析量)1.3程度取れるし、高い血流は血圧の低下を招き、心臓に負担がかかるから良くないと思っている人が多いと思います。私も何の根拠もなくそう思っていましたが、DOPPS Studyでも高血流透析は1年死亡率の低下につながることが示唆されています。また、血流200ml/minと400ml/minで血圧の影響を比較したstudyでは、高血流の患者さんたちは血圧を逆に上昇させたそうです。調べた限り高血流が血圧の低下に至ることを証明した文献はありません。

pict.jpg

血圧を下げる要素は
1)除水
2)体外循環量(回路の長さと透析膜の面積)
3)透析液量
の3つだと思います。

なぜ日本では低血流が主流なのでしょう?もしかしたら、除水を静脈圧により調整していた初期の頃の透析方法が影響しているのかもしれません。つまり、除水速度は血圧の低下に関係しますので、血圧が低下すると、その頃は血流を下げることにより除水速度を調整していたため「血圧が下がると→血流を下げる=高血流は血圧低下を招く」という公式が出来上がっているのかもしれません。血流を200ml/minから400ml/minに上げるとureaクリアランスは透析膜の面積や、透析血流により違ってきますが、30%程度増加します。ただし、血流を500ml/min以上にしてもクリアランスはあまりあがりません。また血流を400ml/minにした場合、透析効率を存分に上げるためには透析液量を上げる必要がありますし、透析膜面積も大きくする必要があります。

しかし日本はアメリカに比較し透析導入後の死亡率は格段に良いです。ただし米国は一般的に心疾患の死亡率は日本と比較にならないほど高く、かつ日本と違って透析患者さんのAVシャント普及率ははるかに低いわけですから、感染症による死亡率も高いことは考慮しなければなりません。また、透析時間はアメリカのほうが短いです。血流を多くとり、短時間で透析効率を上げようという狙いもないとはいえませんが、崩壊しつつある米国の医療制度のなかではこれが精一杯なのは事実です。また患者のコンプライアンスの悪さは比較になりません。(1時間で切り上げて帰る患者さんなんて日本でいますか?)

DOPPSやフランスのTassinで行われた長時間透析(8時間)による死亡率の低下や入院率の低下を示した結果からもわかるように、透析量を上げる最も大事な要素は「透析時間と透析頻度」であることは忘れてはなりません。Single pool Kt/V=1.3で週3回透析を行ってもGFR=13ml/min前後にしか相当しませんので、結局は透析導入時の腎機能を維持した形になっているわけです。しかし透析時間と透析頻度を上げることによりGFRはさらに高くまで上げることができます(GFR 50ml/min程度)。ただ実際すべての透析患者さんへの長時間透析適用は難しいです。

日本は、欧米に比べ平均透析時間は長く、死亡率も低いわけですが単純に、血流速度を上げることにより、さらなる透析量の増加を期待できるのなら、これは十分に考慮するべきことの一つだと思います。

T.S
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MET

アメリカの病院は、Medical emergency team (MET) もしくはRapid response team (RRT)とよばれるチームがほぼどこにも存在します。これは、院内の患者さんの容体が急に変化した際、24時間体制で誰かが早急に適切な初期治療を施せるように作られたものです。
Respond to a “spark” (patient complaints, signs, symptoms) before it becomes a “forest fire” (cardiac or respiratory arrest).

MedicalEmergencyTeam.jpg

病院内の死亡率はここ30年、ACLSを施すコードチームの存在や標準化された治療、医療の進歩にかかわらずほとんど横ばい(アメリカ14.7%)です。METは心停止に陥る前の段階で、早期に適切な対応がなされれば病院内における死亡率を削減できるのではないかという理由からもともとはオーストラリアの病院ではじまった試みです。

METの構成は通常、医師とICU看護師で、今の病院はさらに薬剤師や呼吸療法士なども加わります。METは誰が呼んでもよいことになっていますが通常看護師が判断をします。バイタルに急激な変化があり、持続した場合担当医の許可なしに呼ぶことができます。先日、私の担当する腎移植の既往のある患者さんがurosepsisで入院していたのですが、血圧の低下と、貧脈を呈していましたが、私は外来中でしたので電話指示を出したりしていました。外来が終わって患者さんを見に行くと、状態はあまり変わらなかったため循環器の先生を呼ぼうと電話で話をしている最中にMETが呼ばれました。(私はMETを呼ぶつもりはありませんでした)そしてあれよあれよという間に、処置が行われ、さっさと ICU に搬送されていきました。私らにはとくにICUに搬送しても良いかなどの打診はなく、目の前に入る患者の状況に応じて淡々とことが運ばれていったわけです。こういった体制に慣れていない日本の医者なら自分のやっている治療を妨害されたとか担当医以外の人たちによってことがどんどん運ばれることに対して不快な思いをするかもしれない状況ですが、結局は患者にとってはよいことでした。
以前にも書きましたがこちら来て思うのは診療は病院のすべての人たちによって行われるものだという感覚を強く感じます。チーム医療ですね。

日本ではこの制度を取り入れているところはどれほどあるでしょう?METを取り入れるには、医師を含めた人材の確保が問題になるでしょうし教育や標準化された治療の徹底、また医師主導の医療そのものが変わらない限り、スムーズにはいかないでしょうね。この制度はこちらに来てとてもよいと思ったことの一つですので日本でも実現すると良いです。

T.S
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アンジオテンシン阻害か降圧か?

内科レジデントに「DM腎症の患者さんに投与されるべき薬は?」と聞くと10人中10人、「ACE or ARB」と答えます。1970年代後半に初めてのACE阻害薬であるcaptoprilが登場してから数々のclinical trialでアンジオテンシンblockadeがDMやCHFに有用であることが証明されました。
ただ最近の数々のtrialとそのニックネームの多さから、どのtrialが何を証明したものだったか分からなくなることが多いですね。糖尿病性腎症とアンジオテンシン阻害に関して知っておくべき論文は下記だと思います。

DM neph.jpg

糖尿病性腎症の進展抑制にACE阻害薬が有用であるという最初の前向き研究は1993年のcaptopril collaborative studyです。このstudyからは1型糖尿病患者において、ACE-Iとそれ以外の降圧薬を使用したグループと比較して血圧の値に関係なくdoubling of S-Cr、末期腎不全、死亡率に関して、ACE-Iグループがプラセボと比して優ったという結果です。
また2型糖尿病患者においても2001年のNEJMに同時に3つの論文が出され、腎不全への進展抑制はARB群とプラセボ群でみると、ARBが腎不全への進展抑制効果があったというものです。
一つは有名な「RENAAL」trial でlosartanとプラセボで4年間比較すると、糖尿病性腎症末期腎不全への進展にlosartanは20%程度その進行を遅くするという結果でした。ただ12か月における血圧はlosartanのほうが低かったのでそれによる影響があるかもしれないとう意見もありました。その穴は同時に発表された「IDNT」によって補填された結果になります。これはirbesartan、amlodipine、プラセボの3群で糖尿病性腎症の進展を4年以上観察した結果、ARB投与群はamlodipine投与群に対してdoubling of S-Crに関して有意さは認めたものの、末期腎不全、死亡率に関して有意さはARBとプラセボ、ARBとamlodipineで見られませんでしたが、血圧は4年間通して3群で有意差がなかったのと、3群に分けたため各々のpowerが低かったという要素が加味され「losartanとirebesartan」の2剤が糖尿病性腎症の末期腎不全への進展抑制効果あり、というFDAのお墨付きをもらったわけです。未だに、国営のVA hospital(退役軍人病院)では上記の適応に関して他のARB(candesartanやtelmisartanなど)は認められません。(ばかばかしい話ですが)

ただし!大事なのは降圧であることを忘れてはなりません!ACE-Iが登場する以前に行われた降圧によるDM腎症の進展抑制の前向き研究によると(数は少ないですが)
1型糖尿病腎症患者をβブロッカー、αブロッカー、利尿薬などで降圧した場合とそうでない場合とでみた場合、降圧は「腎機能の低下を10年間で半分以下に抑えた」というものです。この単純で説得力のある論文は「ここ」「ここ」にあります。

簡単にまとめますと、降圧をしないと顕性DM腎症は年に腎機能が10ml/min低下するところ、血圧を下げるとGFRの低下は5ml/min/年に改善、アンジオテンシン阻害薬を加えると4ml/min/年になります。ACE-IやARBの投与は降圧に加え効果はたしかにあるわけですが、もっとも重要なのは血圧をコントロールであることを示唆しています。

T.S
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オススメの本:Clinical Physiology of Acid-Base and Electrolyte Disorders

腎臓内科領域の洋書及び和書を御紹介します。



電解質、酸塩基の教科書としてイチオシです。難解なところもありますが、自分の症例に当てはまる所を読むだけでも十分に勉強になります。読むたびごとに、新しいことを学んだ気分になれる本(記憶力が悪くなっていて以前に読んだ内容を忘れているだけなのかもしれませんが)。

アマゾンのCustomer Reviewsには、

電解質の臨床は難しいというイメージがありますが、この本を読めば、電解質はこんなに簡単だったのかと思うようになります。電解質を理解するために、腎生理からはじまり、電解質異常の臨床へと、懇切丁寧な説明、大量の参考文献に基づいた根拠のある記載が満載です。Dr. Roseは、UpToDateのChief Editorとしても有名なかたで、医学教育にも熱心な先生です。日本の電解質の教科書のほとんどは、この本を参考図書として取り上げています。

とあります。

今井直彦
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日米比較:透析時の足つれ

  血液透析時、患者さんが「足つれ:leg cramp」を訴えることがある。透析時の足つれの原因は、局所の血管収縮による血流障害と考えられている。電解質異常(低K、低Ca、低Mg)が背景にあることもあるが、たいては過度の除水により引き起こされることが多い。従って、実際の現場では足のマッサージの他に、除水を減らす、生理食塩水を投与する、マニトールを投与する、あるいは高濃度(10%)食塩水を投与するなどで対応されるが、日本ではカルチコール(カルシウム製剤)を静注することもある。不思議なことに、背景に低Ca血症がなくてもカルシウム静注は著効することがある。

legcramp2-medium.jpg

  日本では日常的に行われている足つれに対するカルシウム静注であるが、アメリカでは全く行われていなく、透析関係者に話すと驚かれる。カルシウム静注には、実は心停止などの重篤な副作用もある。また、高P血症を伴っている場合にカルシウムを静注することで血管内にprecipitationを起こし、心筋梗塞などを起こす可能性すらある。そう考えると、理論上はあまり勧められた治療で無いような気がする。

長浜 正彦
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PKDと癌

私が腎臓内科を志した理由の一つに、腎臓の病態生理が面白そうだった(というより全くわからなかった)ことと、「癌」はきっと治せないだろうから癌のない分野に進みたいという愚かな思いが当初ありました。ですが実際、腎臓病はほとんど治らないですね。。。。

そんなこんなで私はアメリカで腎臓内科フェローとして勤務しています。フェローといっても専門研修医ですから、研修医生活は日本でしてきた分も含めると8年もやっています。アメリカ人からすると「trainingをそんなするなんて信じられない」とみんな口をそろえて言いますね。しかも現在のフェローシップはリサーチに費やされる時間が通常のフェローよりも多いコースを希望したため2年ではなく、3年フェローとして働きます。ただ臨床ばかりではなくこのコースの良い点は2年間しっかり研究に専念できることです。臨床経験だけではなく、リサーチの面白さも知ってもらい、将来のscientist/clinicianを養成しようという背景がこの制度にはあります。

PKDnorm.jpg

さてそれはさておき、私は「多嚢(のう)胞性腎症:polycystic kidney disease(PKD)」に関する基礎研究に携わっています。これまで正直PKDについては勉強したことがあるとは言い難く、今いろいろ勉強中です。PKDで特に面白いと私は思うのが「ADPKD(常染色体優性遺伝性嚢胞腎)のtwo hit hypothesis」です。ADPKDは嚢胞ができ始める年齢が人それぞれ違いますが、その理由としてtwo hit hypothesisが関与しているといわれています。

ADPKD はPKD1という遺伝子変異が原因の一つですが、この遺伝子座にある2つの対立遺伝子のうち1つは生まれた時すでに変異(1st hit)していますがもう一方は正常なため、すぐには病気を発症しません。その後、正常の遺伝子が何らかの原因でsomatic mutationを起こし(2nd hit) PKDが発症するというものです。ADPKDの嚢胞は実は腎臓全体のネフロンの1%からできていて、それら嚢胞を調べると多くは固有の尿細管上皮細胞に起源を持つことがわかっています。このDNAを調べると多くはPKD1遺伝子のヘテロ接合性が失われています。言いかえると、嚢胞はPKD1における正常の遺伝子対が何らかの変異を起こしているということです。これについては、この文献この文献にとてもよく記されています。

そもそも「Two hit hypothesis」とはKnudson hypothesisとよばれ、癌の発症には複数のDNAへのhitが必要だという理論に由来しています。現在がんの発症には癌増殖を刺激する遺伝子異常(1st hit)に加え、癌抑制遺伝子の不活性化(2nd hit)の両方がないと発症しないようで、そういった意味でADPKDは「癌」にとてもよく似たものであるといえますね。
そんな癌のようなPKDの治療も急速に進んでいて、いくつか有望な新薬(Tolvaptan, Rapamycin, Somatostatinなど)がclinical trialに入っていますので、良い結果が出ることを願うばかりです。

T.S

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AST Fellows Symposium

American Society of Transplantation (AST)
Fellows Symposium of Transplantation Medicine:at Grapevine, Texas, Aug 6-8, 2010,

毎年ASTがフェロー向けに開催しているシンポジウムのお知らせです。
基本的にこのシンポジウムに始めて参加する人で移植に興味のある医療従事者であれば、誰でも参加対象となるようです。腎移植だけでなく、肝・膵・心臓・肺などのスモールグループに分かれたセッションもあります。臨床の先生だけでなくリサーチの先生もいらしていて、移植免疫の基礎的な講義をしてくれるので、初心者がまず移植の全体像を大まかに把握して、最近のトピックスを学ぶにはよい機会だと思います。他の大きな学会と比べるとこじんまりとしたアットホームな会で、質問などもしやすいと思います。
トラベルグラントがあり、早い者勝ちですが、シンポジウム参加費、ホテル宿泊料、滞在中の全ての食費(ホテル内での)、交通費(ただし上限330ドルまで)がでます。詳しくはASTのウェブサイトを見てください。応募には指導医の先生のサインがいると思います。
http://www.a-s-t.org/fellows/index.php

昨年までは通常10月に行われていたのですが、今年は8月6~8日に変更になっています。講義もさることながら、各地のフェローとそれぞれの施設のプロトコールやフェローシップについてなどいろいろな情報交換ができるのがおもしろかったです。アメリカでも移植のプロトコールや適応は、各施設ごとに異なっているので、自分が常識だと思っていた治療もところ変われば。。。ということも多々あり、そういう意味でも勉強になりました。

日本から参加するとなると、トラベルグラントを使ったとしても、飛行機代は、ほぼ自分もちですが、現地にきてしまえば、(基本的にずっとホテルにいることになります)、お金はかからずシンポジウムが受けられます。グラントの締め切りは米国時間の6月14日ですので、興味のある人はまず応募してみたらいかがでしょうか?

鈴木倫子
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