「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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血漿交換ガイドライン2010 (その1)

米国アフェレーシス学会のApheresis(血漿交換)に関するガイドラインが新しくなりました。
Category1(血漿交換単独もしくは補助的治療として推奨される)に位置付けられた疾患が多く驚きました。
FFP.JPG
そもそも血漿交換とはいつどのように行うべきものなのでしょうか?
以下3つを理解していないといけません。
1) 血管内の液性因子が病態に関与していること
2) その液性因子が血漿交換により除去されること
3) 臨床的に改善することが医学的に証明されていること

またApheresisといってもさまざまな交換があります。
血漿交換、各血球除去(白血球、赤血球、血小板)、脂質、photopheresis、免疫吸着など。
そこで主な血球の比重は知っておく必要があります。
例えば、急性白血病の治療に白血球除去を行うことがありますが、この場合
白血球でもblastが多くを占めていないだめであることがこの表から分かります。(通常blast>50%)
その理由はblast以外の白血球を除去しても医学的に効果が不十分であるほか、
血液を分離する際、通常の白血球(band and segmented neutrophils)は赤血球と極めて
比重が近いため、白血球の分離は困難であるからです。

また
1)How much to take out?
2)What to take out?
3)With what to replace it?
という質問はしばしばフェローは受けます。

1)ですが、血漿は1.5L以上交換しても
グロブリンの除去率はあまり上がらないことがこの表から分かります。したがって通常は毎回1-1.5L程度の血漿交換を目安とします。

2)はどの液性因子が血管内にどの程度存在して、間質からどのくらいのスピードで
血管内にrefillしてくるかなどおおよそ知っておくことは大事です。
この表から分かることはIgMは最も血管内に多く存在していて、ほかのグロブリンに比べ早く除去できることが分かります。また、血漿交換後にグロブリンは血管内にrefillしその血中濃度はすぐに増加しますから、このグラフが示すように通常どの疾患でも効果を最大限に引き出すには、毎日、血漿交換を行う必要があることが分かります。

3)どのような方法を用いるかにもよりますが通常、5%アルブミンかFFP(Fresh frozen plasma)で
交換します。いずれもクエン酸を含んでいて、クエン酸はカルシウムと結合しますので
カルシウムを補う必要があります。
原則FFPには300ml中63mlのクエン酸が含まれています。
1mlのクエン酸に対し1mgのカルシウムを補いますので
10% Calcium Gluconateでカルシウムを補う場合 10ml中に94mgのカルシウムが含まれますので
それに見合う量の補充が必要です。

次回は今回新たにカテゴリーに追加もしくはランク上げされた疾患を取り上げてみます。

T.S
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降圧目標は130/80?

血圧が腎不全の進行に大きな影響を与えることは以前にも取り上げましたが、どこまで降圧するべきか?という指標は実は明確ではありません。高血圧は140/90mmHg以上と定義されますが、糖尿病や腎臓病がある場合130/80mmHg以下を目標としています。ところでこの数字はどうやって決められたのでしょう?
このreviewからは目標血圧135/85以下vs.140-160/90-100mmHgで治療した場合、現在あるデータからは生命予後に明確な差は結論付けられないとあります。また最近発表されたこの文献は2型糖尿病における目標血圧を140以下120以下で比較したところ心血管系、脳血管系eventに影響がなかったと結論付けていますし、この文献からは糖尿病患者でかつ冠動脈病変のある患者における血圧を130未満と通常の降圧140未満で比較した結果、心血管系eventに関してその差はないと結論付けています。
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タンパク尿のある糖尿病性腎症の降圧はCKD の進行を抑制することは多くの文献が示していますが、高血圧性腎症における降圧に関してはよくわかっていません。黒人には高血圧がとても多いので彼らを集め行ったAASKというstudyがあります。CKD(GFR20-65ml/min)の黒人患者1000人ほどを目標平均血圧(MAP)を102-107か92以下のグループに分け各々ACE阻害薬/カルシウム拮抗薬/βブロッカーで治療した結果、腎予後に差はみられませんでした。ただしACE-Iを使用した患者はタンパク尿の減少が見られたため、このstudyはさらに期間が延長され、ほとんどの患者にACE-Iを投与して合計10年ほど観察した結果、54%の患者が適切な降圧にかかわらず腎臓のendpoint(透析、死亡)に達しました。高血圧性腎症の治療は降圧だけでは不十分であることがこのstudyからは示唆されます。

また一方で、外来で測定する血圧だけではその人の本当の血圧を知ることができないのも事実です。ABPM(ambulatory blood pressure monitoring:24時間血圧測定)を使用したstudyからはnon dipperの存在が明らかになっています。これは夜間血圧が日中に比べ10%以上、下がらない人のことを指し、とくにCKD患者には多くみられることが分かっています。このstudyからnon dipperは「腎機能の低下した患者」と「タンパク尿のある患者」と相関することが分かり、腎機能低下とタンパク尿に関連した心血管系のeventにこのnon dipperは重要な要素となりうることを指摘しています。

AASKから学ぶことはレニンアンジオテンシン系の阻害と適切な外来血圧コントロールにかかわらず長期的には腎機能が低下するという事実で、ABPMを用いた24時間血圧のコントロールや適切な降圧目標は重要な要素です。またこの黒人にはFSGSがとくに多いのも事実で遺伝的要素、を追求する研究は現在とても盛んに行われています。

T.S

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透析はいつ導入しますか?

透析がESRD患者に導入されはじめて50年以上がたつ今も、適切な導入時期に関しては議論が多いです。NKF-KDOQIによると、透析の開始はGFR=10.5ml/minを一つの目安とし、それ以下でも体液量や栄養状態、尿毒症がなければ、導入を遅らせてもよいとなっています。
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早期vs晩期透析導入に関する以前の文献はretrospectiveで、主に1980~90年代にかけては早期透析導入による利点を示したものが多く、いずれも年齢や合併症によるadjustmentがなされてなかったわけですが、早期導入は患者の栄養状態を改善し、入院率の低下およびコスト削減につながり、死亡率の低下につながったというものでした。

2000年以降は逆に透析早期導入の利点はなしという報告が多く、理由は過去の文献には「lead time bias」があったため正確な生命予後を予測できないとされています。「lead time bias」=Error occurs when patients are entered at different stages in the course of their illnesses. Prolonged survival may simply be due to earlier registration of patients by recording a longer lead time.
この文献はlead time bias を除外するため透析患者の腎機能をe-GFR=20ml/minからさかのぼり計算した結果、早期でも晩期でも透析導入時期にかかわらず生命予後に有意差はみられないとしています。ただし、DMなどの基礎疾患があり、状態の悪い患者が早期に導入された場合やlate referralの患者は除外されています。
また最近のこの文献はcomorbidityがあると早期導入の傾向がある可能性があることを示しています。

先月NEJMにはじめて透析導入時期に関するrandomized control study(RCT)が発表されました。進行性のCKD患者(800人ほど)の腎機能をCockcroft-Gault (CG) equationにより算出し(MDRDよりもGFRは20%程度高めに算出される)
1) GFR=10-14ml/min での早期導入と
2) GFR=5-7ml/min での晩期導入
の2つのグループにランダムに患者を振り分け3年以上観察した結果、死亡率、合併症に関して差は見られなかったという結論です。ただし、多くの晩期導入患者は尿毒症や肺水腫などの症状が見られたため、実際は平均9.8ml/minでの導入だったそうです。そもそも一般的に栄養状態の悪いESRD患者では腎機能の指標としてCrを使用したe-GFRはMDRDでもCGでも正確性を欠くので、早期と晩期導入のGFR2-3ml/min程度の差に果たして意味があるのかという疑問もあります。またこのスタディーはオーストラリア・ニュージーランドの施設で行われたものですが、半分近くは腹膜透析患者であることも、一般の透析人口とは異なります。

早期導入は患者のQOLの低下や医療費の増大につながるという欠点もあり、晩期では尿毒症状や栄養状態の悪化などがありますので、適切な透析導入のタイミングを設定することはとても大事なことであると考えられます。このNEJMのスタディーからはタイミングに関して答えは出ませんでしたが、今後はcystatinCなどCr以外のマーカーを使用した、RCTが必要なのかもしれません。またESRD患者のe-GFRは正確性を欠くことはお覚えておく必要があり、あくまで、透析の導入は患者さんの症状で判断することは言うまでもありません。

T.S
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腎結石update

腎結石は腎臓内科より泌尿器科にお世話になることが多いですが、先日ニューヨーク大学腎臓内科のD. Goldfarb氏がMUSCにいらした際、腎結石についてのとてもよいレクチャーをしてくれました。彼の専門はシスチン結石に関してですが、腎結石全般に関してとてもよいupdateをしてくれましたのでその内容をshareします。

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一般的に、腎結石の約85%はカルシウム結石で残りは尿酸結石と尿路感染に関連したstruvite結石、遺伝性の結石などです。カルシウム結石の80%はシュウ酸カルシウム結石、20%はリン酸カルシウムです。平均気温の上昇、肥満の増加、ERにおける CT scan施行率の増加などからか? アメリカでは腎結石は増加傾向にあります。

急性背部痛の腎結石患者さんが救急外来に来たら、たくさん点滴をして排石を試みたいと思っている人は意外に多いのではないでしょうか? しかし実際、尿管につまった結石は周囲組織の浮腫を誘発するため、NSAIDなどの抗炎症剤を投与し、適度な点滴でみるのが効果的のようです。腎結石の排石率と痛みのコントロールを大量点滴vs少量点滴で治療した結果、効果に差がないことがこの文献により示されています。シンクが詰まったら強制的に流そうとしても流れないのと同じですね。またNSAIDに加えtamsulosinを使用すると排石率が上がったという報告もあります。Tamsulosinは、前立腺肥大に使用されるα拮抗薬ですから、女性の結石患者に使用する際は薬剤師を説得する必要がありますが。。。

腎結石のほとんどはカルシウム結石ですので、食事によりカルシウムを制限すると再発予防は可能でしょうか?腎結石再発の既往がありかつ高カルシウム尿症を呈した患者を集めておこなった唯一のrandomized control trialによると、正常カルシウム/低塩分食vs低カルシウム食で5年間比較した結果、正常カルシウム食群はむしろ結石の再発が低いことが分かっています。その理由は、カルシウムは腸でシュウ酸と結合するため、低カルシウム食は、シュウ酸の吸収をむしろ増加させ、尿細管へシュウ酸の排泄を増加させたためです。また、低塩分も結石の再発防止に役立ったと思われます。理由は尿細管でNaの再吸収が行われる際、Caも同時に再吸収されるからです。

Oxalobacterをご存じでしょうか? Helicobacter pyloriに関する論文は3万もあるのに対して、Oxalobacterに関してはたった100程度しかないそうですが興味深い菌です。このoxalobacterは大腸に生息する嫌気性菌で、シュウ酸を代謝します。もしかしたら昨今の過剰な抗菌薬の投与によりこの菌が減少しその結果、腎結石の増加に関与している可能性もあるのではないかとも言われています。ただシュウ酸の吸収は小腸で行われるので大腸にしか生息しないOxalobacterがカルシウム結石にどの程度関与しているかは今後調べる必要があります。

最後に尿酸結石について。痛風患者さんは尿酸結石をつくりやすい? というのはまったくの誤解で、シュウ酸カルシウム結石が最多です。尿酸結石患者の約60%は糖尿病の既往がありますが、その理由としてインスリン抵抗性による尿細管障害が原因の一つとされます。。
集合間の介在細胞でのアンモニアの排泄能が障害され尿をアルカリ化できないことが主たる原因です。すなわち尿のpHを5.5から6.5に上げるだけで、尿中の尿酸値にかかわらず、尿酸結石の生成を予防できます。尿酸結石には尿のpHが最も大事であることがこのとても素晴らしいreviewのfigure2にすべてが集約されています。治療はcitric acid などの尿アルカリ化です。

腎結石に関して知らないことばかりでしたので大変に勉強になりました。

T.S
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CRRTも高血流

前回、欧米では血液透析の血流が日本に比べて速いことを書きましたが、これは持続血液透析に関しても同様なことが言えます。CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy)はこちらではCVVH(DF)(Continuous Veno-Venous Hemo(dia)filtration)と呼ぶことが多いです。CRRTは、Sepsisなど血行動態が不安定な患者さんに対して、通常のBUNやCrなどの小分子を透析の拡散作用(diffusion)によって除去するほか、インターロイキンなど炎症に伴う液性因子などの中分子を濾過(filtration)することにより血行動態を安定させる目的で使用されます。その特徴は通常の血液透析に比べ、血流や透析液流を低く設定し、時間も通常は24時間以上かけてゆっくり回すことです。少なくともそれが血行動態の安定を図る重要な要素であると思っていました。

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しかし、こちらでは全くその理論が通用しないといいますか、やはり通常の血液透析同様、血流は当院では200ml/min程度で回します。さらに先日、透析器を作るN社の説明を聞いて正直驚きました。最近の持続透析器は大変にコンパクトで、外見からはCRRTの機械とは思えないほどでした。Volumetric balancing fluid managementと呼ばれる機能が付いていて、要は透析液や補液バックの計量計がついていなく、ICUなどで人が機械にぶつかってもアラームが鳴らないようになっています。回路も小さく体外循環量も少なくてすみます。一番驚いたのはCHDFの設定が付いてないことです!CHDかCHFしかないのです。この理由を聞くと、最新のダイアライザーは高性能な膜を使用しているため、通常の透析でも中分子の除去にも優れ、diffusionでもconvectionでもあまり分子の除去に差をきたさないようです。実際CHDかCHFによる透析と生命予後の差をはっきりと証明した文献はありません。

この透析器を使用している施設は全米で多々あるのですが、いずれも高血流(300ml/minから400ml/min)で、透析液流も通常よりは高めの設定をしているようです。といっても、通常のIntermittent HDに比べ、透析液流は比較にならないほど遅いわけですので、これだけの高血流が透析効率にどれだけ寄与しているかは疑問です。

しかし高血流の利点は、抗凝固剤を必要としないことです。こういったCRRTを必要とする患者さんは重症かつ易出血性があることも多く、抗凝固剤を使用しないに越したことはありません。またコストの面でもナファモスタットなどの抗凝固剤は高価です。ちなみにアメリカでは抗凝固剤であるナファモスタットはFDAの認可が下りていないため、もっぱらcitrateを使用します。Citrateはいいのですが、Caと結合するため、イオン化Caの測定を定期的に行い、Caの補充を調整する必要があります。
また余談ですがそもそも急性腎障害を呈した患者さんに持続血液透析と通常の血液透析のどちらを選ぶべきかという問題もあります。この文献からはいずれの透析法でも生命予後に差はないことが報告されています。またSLED(Sustained low efficiency dialysis)と呼ばれる通常の透析を長くゆっくりと行う方法もあります。しかし実際、CRRTが行える環境ならCRRTを選ぶところが多いようです。

以上、通常透析でもCRRTでも、日本では高血流透析は主流ではありませんが、「血流を早くすると血圧が下がる、血行動態を不安定にする」ことはなく、血圧に関与するのは1)除水量、2)体外循環量、3)透析流量であること、欧米で高血流透析は普通に行われていることから、その利点(透析効率を上げることや抗凝固剤を必要としない)は十分にあることは特筆すべきことです。

T.S
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日帰り腎生検

私の施設では腎生検を午前中に行い、6時間程度の経過観察後、患者さんは帰宅する。入院させないというところが,米国らしいところで、帰宅後に容態が悪くなることも意外と多い。33%の合併症が腎生検後8時間以上経ってからおこるという報告もあり、6時間程度で返していることの危険性がよく分かる。せめて,1泊入院させてもいいのではと思うが、米国ではなかなかそうもいかない。
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オンコールの際に、腎生検をした患者さんから血尿持続、背部痛等の主訴があった場合、ERにいってもらうこととしている。何が起きているのか電話だけでは分からないので仕方ないと思う。

日本腎臓学会の腎生検ハンドブックには以下のように記載がある。

日本腎臓学会の平成10 ~ 12 年の集計によりますと,日本全国で1年間に約1 万人の方が腎生検を受けています.軽い出血などの合併症が,100 人あたり2 人程度(1,000人あたり20 人程度)で生じます。すなわち98 名の方は特に問題なく終了しています。輸血や外科的処置を必要とする人は,1,000 人あたり2 人程度です.すなわち,998 名の方では特に大きな処置は必要ありません。最近3 年間で,不幸にして亡くなられた方が2名いますが,1 万5 千回の腎生検で不幸にして1 名死亡されるという危険度です。通常の腎生検の手順で行えば,かなり安定した検査法であることがわかりました。

腎生検では使う針の太さが施設によって違うことも多く、合併症の頻度にも影響を与えていると思います。日米で使っている針の太さが同じか、ちょっと興味があるところです。

今井直彦
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アメリカの医療:薬物中毒

アメリカでは日本に比べて薬物中毒が多い。従って、薬物使用やそれに関連した疾患を診る機会があり、薬物使用を疑う時には尿のドラッグスクリーンをする。アンフェタミン(覚醒剤)、コケイン、マリワナ(大麻)、オピエート(モルヒネ、ヘロイン・麻薬)、などが一般的なドラッグスクリーンである。
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最も手軽に使用される薬物がマリワナ(大麻)で、タバコのようにパイプで吸う。マリワナの使用頻度は統計によるとアメリカ人の5%であるが、これは今現在マリワナを使用している人の数字であって、使用歴まで含めるとずっと高くなる。アメリカ人でマリワナを吸ったことがない人を探す方が難しいくらいだ。ホンワカと気持ち良くなり、激しい中毒症状は無いので手軽に使用されるが、もちろん依存性はある。
次に多いのがオピエート(モルヒネ、ヘロイン)、いわゆる「麻薬」である。麻薬は強力な鎮痛剤で、医学的には術後やガン疼痛などに使用される。呼吸抑制もあるため、術後に投与された少量の麻薬で呼吸が止まりかけ、あわててICUに運ばれることもある。やはり気持ちが良いらしい。病院でも頻繁に使用される薬剤なので、麻薬を目当てに痛みを訴えてERに来る麻薬中毒患者は日本にでさえいる。禁断症状で発汗したり、ヨダレが垂れたりするが、社会的に問題なのは情緒不安定になり、犯罪につながることである。
アメリカのスゴイところは、この麻薬中毒者の治療として「メサドン」という、これまた別な種類であるが、結局は経口の「麻薬」を使用することである。ヘロイン中毒患者は「メサドンプログラム」という、公にメサドンを与えてくれるプログラムで麻薬をもらい続けることによって禁断症状を起こさず、且つ静脈注射による感染の防止もできる。恐ろしいことに、実はメサドンの方がヘロインよりも依存性が高いと言われている。つまり、アメリカは麻薬中毒患者による犯罪を抑えるために、別な形の麻薬を与え続けているということである。究極の選択であり、エイズの蔓延を防ぐために清潔な注射針を配る発想と似ている。
麻薬中毒者は注射針を使用することが多く、静脈に沿った注射の跡を「トラックマーク」と呼ぶ。「トラックマーク」の探し方であるが、薬物中毒者も見えやすいところは目立つので避ける。見えにくく手頃な静脈というと、足首から甲にかけての血管になる。従って、右利きならば左の足首、左利きならば右の足首に「トラックマーク」を探す。
最後にアンフェタミン(覚醒剤)、コケインであるが、これらは交感神経刺激薬であり、基本的には興奮状態になる。だから、薬物中毒者は気持ちが良くなる状態を「High」と表現する。コケインは鼻から吸引するか、タバコで吸うか、静脈注射する。血管収縮作用があるので、鼻から吸引した場合に局所の血管を収縮しすぎて壊死するため、鼻中隔に穴が開くことが古典的には有名である。ただ、臨床上で重要なのはコケイン由来の胸痛で、これはコケインによる血管収縮が心臓の冠動脈にも起こるために発症する狭心症や心筋梗塞である。

長浜 正彦

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高血流透析は血圧を下げる?という迷信

こちらに来て驚いたことはいくつかありますが、その一つは血液透析の血流速度です。アメリカの透析施設では体の大きさにかかわらず透析血流は平均400ml/min前後です。(血流:透析液=1:2が多い、血流400ml/min なら透析液800ml/min)日本でこの血流を取っている施設は数少ないと思います。血流200ml/min、透析液500ml/minでも通常体格の人はKT/V(透析量)1.3程度取れるし、高い血流は血圧の低下を招き、心臓に負担がかかるから良くないと思っている人が多いと思います。私も何の根拠もなくそう思っていましたが、DOPPS Studyでも高血流透析は1年死亡率の低下につながることが示唆されています。また、血流200ml/minと400ml/minで血圧の影響を比較したstudyでは、高血流の患者さんたちは血圧を逆に上昇させたそうです。調べた限り高血流が血圧の低下に至ることを証明した文献はありません。

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血圧を下げる要素は
1)除水
2)体外循環量(回路の長さと透析膜の面積)
3)透析液量
の3つだと思います。

なぜ日本では低血流が主流なのでしょう?もしかしたら、除水を静脈圧により調整していた初期の頃の透析方法が影響しているのかもしれません。つまり、除水速度は血圧の低下に関係しますので、血圧が低下すると、その頃は血流を下げることにより除水速度を調整していたため「血圧が下がると→血流を下げる=高血流は血圧低下を招く」という公式が出来上がっているのかもしれません。血流を200ml/minから400ml/minに上げるとureaクリアランスは透析膜の面積や、透析血流により違ってきますが、30%程度増加します。ただし、血流を500ml/min以上にしてもクリアランスはあまりあがりません。また血流を400ml/minにした場合、透析効率を存分に上げるためには透析液量を上げる必要がありますし、透析膜面積も大きくする必要があります。

しかし日本はアメリカに比較し透析導入後の死亡率は格段に良いです。ただし米国は一般的に心疾患の死亡率は日本と比較にならないほど高く、かつ日本と違って透析患者さんのAVシャント普及率ははるかに低いわけですから、感染症による死亡率も高いことは考慮しなければなりません。また、透析時間はアメリカのほうが短いです。血流を多くとり、短時間で透析効率を上げようという狙いもないとはいえませんが、崩壊しつつある米国の医療制度のなかではこれが精一杯なのは事実です。また患者のコンプライアンスの悪さは比較になりません。(1時間で切り上げて帰る患者さんなんて日本でいますか?)

DOPPSやフランスのTassinで行われた長時間透析(8時間)による死亡率の低下や入院率の低下を示した結果からもわかるように、透析量を上げる最も大事な要素は「透析時間と透析頻度」であることは忘れてはなりません。Single pool Kt/V=1.3で週3回透析を行ってもGFR=13ml/min前後にしか相当しませんので、結局は透析導入時の腎機能を維持した形になっているわけです。しかし透析時間と透析頻度を上げることによりGFRはさらに高くまで上げることができます(GFR 50ml/min程度)。ただ実際すべての透析患者さんへの長時間透析適用は難しいです。

日本は、欧米に比べ平均透析時間は長く、死亡率も低いわけですが単純に、血流速度を上げることにより、さらなる透析量の増加を期待できるのなら、これは十分に考慮するべきことの一つだと思います。

T.S
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MET

アメリカの病院は、Medical emergency team (MET) もしくはRapid response team (RRT)とよばれるチームがほぼどこにも存在します。これは、院内の患者さんの容体が急に変化した際、24時間体制で誰かが早急に適切な初期治療を施せるように作られたものです。
Respond to a “spark” (patient complaints, signs, symptoms) before it becomes a “forest fire” (cardiac or respiratory arrest).

MedicalEmergencyTeam.jpg

病院内の死亡率はここ30年、ACLSを施すコードチームの存在や標準化された治療、医療の進歩にかかわらずほとんど横ばい(アメリカ14.7%)です。METは心停止に陥る前の段階で、早期に適切な対応がなされれば病院内における死亡率を削減できるのではないかという理由からもともとはオーストラリアの病院ではじまった試みです。

METの構成は通常、医師とICU看護師で、今の病院はさらに薬剤師や呼吸療法士なども加わります。METは誰が呼んでもよいことになっていますが通常看護師が判断をします。バイタルに急激な変化があり、持続した場合担当医の許可なしに呼ぶことができます。先日、私の担当する腎移植の既往のある患者さんがurosepsisで入院していたのですが、血圧の低下と、貧脈を呈していましたが、私は外来中でしたので電話指示を出したりしていました。外来が終わって患者さんを見に行くと、状態はあまり変わらなかったため循環器の先生を呼ぼうと電話で話をしている最中にMETが呼ばれました。(私はMETを呼ぶつもりはありませんでした)そしてあれよあれよという間に、処置が行われ、さっさと ICU に搬送されていきました。私らにはとくにICUに搬送しても良いかなどの打診はなく、目の前に入る患者の状況に応じて淡々とことが運ばれていったわけです。こういった体制に慣れていない日本の医者なら自分のやっている治療を妨害されたとか担当医以外の人たちによってことがどんどん運ばれることに対して不快な思いをするかもしれない状況ですが、結局は患者にとってはよいことでした。
以前にも書きましたがこちら来て思うのは診療は病院のすべての人たちによって行われるものだという感覚を強く感じます。チーム医療ですね。

日本ではこの制度を取り入れているところはどれほどあるでしょう?METを取り入れるには、医師を含めた人材の確保が問題になるでしょうし教育や標準化された治療の徹底、また医師主導の医療そのものが変わらない限り、スムーズにはいかないでしょうね。この制度はこちらに来てとてもよいと思ったことの一つですので日本でも実現すると良いです。

T.S
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アンジオテンシン阻害か降圧か?

内科レジデントに「DM腎症の患者さんに投与されるべき薬は?」と聞くと10人中10人、「ACE or ARB」と答えます。1970年代後半に初めてのACE阻害薬であるcaptoprilが登場してから数々のclinical trialでアンジオテンシンblockadeがDMやCHFに有用であることが証明されました。
ただ最近の数々のtrialとそのニックネームの多さから、どのtrialが何を証明したものだったか分からなくなることが多いですね。糖尿病性腎症とアンジオテンシン阻害に関して知っておくべき論文は下記だと思います。

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糖尿病性腎症の進展抑制にACE阻害薬が有用であるという最初の前向き研究は1993年のcaptopril collaborative studyです。このstudyからは1型糖尿病患者において、ACE-Iとそれ以外の降圧薬を使用したグループと比較して血圧の値に関係なくdoubling of S-Cr、末期腎不全、死亡率に関して、ACE-Iグループがプラセボと比して優ったという結果です。
また2型糖尿病患者においても2001年のNEJMに同時に3つの論文が出され、腎不全への進展抑制はARB群とプラセボ群でみると、ARBが腎不全への進展抑制効果があったというものです。
一つは有名な「RENAAL」trial でlosartanとプラセボで4年間比較すると、糖尿病性腎症末期腎不全への進展にlosartanは20%程度その進行を遅くするという結果でした。ただ12か月における血圧はlosartanのほうが低かったのでそれによる影響があるかもしれないとう意見もありました。その穴は同時に発表された「IDNT」によって補填された結果になります。これはirbesartan、amlodipine、プラセボの3群で糖尿病性腎症の進展を4年以上観察した結果、ARB投与群はamlodipine投与群に対してdoubling of S-Crに関して有意さは認めたものの、末期腎不全、死亡率に関して有意さはARBとプラセボ、ARBとamlodipineで見られませんでしたが、血圧は4年間通して3群で有意差がなかったのと、3群に分けたため各々のpowerが低かったという要素が加味され「losartanとirebesartan」の2剤が糖尿病性腎症の末期腎不全への進展抑制効果あり、というFDAのお墨付きをもらったわけです。未だに、国営のVA hospital(退役軍人病院)では上記の適応に関して他のARB(candesartanやtelmisartanなど)は認められません。(ばかばかしい話ですが)

ただし!大事なのは降圧であることを忘れてはなりません!ACE-Iが登場する以前に行われた降圧によるDM腎症の進展抑制の前向き研究によると(数は少ないですが)
1型糖尿病腎症患者をβブロッカー、αブロッカー、利尿薬などで降圧した場合とそうでない場合とでみた場合、降圧は「腎機能の低下を10年間で半分以下に抑えた」というものです。この単純で説得力のある論文は「ここ」「ここ」にあります。

簡単にまとめますと、降圧をしないと顕性DM腎症は年に腎機能が10ml/min低下するところ、血圧を下げるとGFRの低下は5ml/min/年に改善、アンジオテンシン阻害薬を加えると4ml/min/年になります。ACE-IやARBの投与は降圧に加え効果はたしかにあるわけですが、もっとも重要なのは血圧をコントロールであることを示唆しています。

T.S
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