「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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Potpourri

今回はサイエンスと関係なく、日米医療のプラクティスの違いに関して、雑多に気づいた点をあげてみます。あくまで自分の経験に基づいた感想で、良し悪しの判断に客観的根拠はないことばかりです。

1)  Intermittent hemodialysis:
血液流量:米国でのhigh blood flowには最初驚かされました。自分の知っている限り、多くの透析施設での平均的な血液流量は400 ml/minです。アクセスがカテーテルでも同様です。米国では1980年後半か1990年ごろから多くの施設がhigh blood flowを信仰するようになったそうです。
透析針:金属針のみです。日本のようなテフロンの外套を使用している施設を見たことがありません。米国でのアクセストラブルは日本よりはるかに多いように感じます。なぜ金属針しか使用していなのか理由は知りません。
動脈表在化:日本ではシャントに適した静脈がないとか、心不全だとかいう理由で動脈表在化というオプションがありましたが、米国では見たことがありません。動脈穿刺なんかして正気か?と驚かれます。シャント静脈の表在化は行われています。

2)  Continuous renal replacement therapy(CRRT): CVVH, CVVHD, CVVHDF, SLEDなど、施設によって好みが違います。病院に置いてある機種によって選択が限られることもあります。私が現在所属している施設ではもっぱらNextstageという機種を用いてCVVH (hemofiltration)です。置換液流量は、体格によりますが、3000 ml/h前後で開始することが多いです。 血圧にかかわらず血液流量は 350 ml/minあたりが平均的です(Prismaflexなど機種によってはチューブの圧などの理由で血流が180 ml/minあたりまでしか許されていません)。抗凝固薬はまず使用しません。大学病院では平均して7,8台のCVVHが常時回っていますが、昨年一年間を通して、どうしても抗凝固薬を使用しなければいけなかったのは1, 2例しか経験しませんでした。NKFやASNなどの学会でCRRTに関する話を聞くと、University of AlabamaのAshita Tolwaniなど、citrateを使っているグループが多いような印象をうけますが、全米を平均すると1/3がヘパリン、1/3がcitrate、1/3が抗凝固薬なし、だと以前聞いたことがあります。

3) Home hemodialysis: 米国では家で透析する患者は少なくありません。自分、もしくは家族が穿刺して、除水量や透析時間も各自で調整しています。Nextstageを使っています。何十年も前からhome hemodialysisは米国でなされていますが、近年home hemodialysisを選択する患者が増えています。
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4)  Transplant: 
Chain donation: Chain donationいうのは米国にきて初めて経験しました。通常何組かのABO不適合夫婦などがお互いの腎臓をスワップして移植の輪が完結します。 これを一日で完結せずに、だらだらと続けていくこともあるようです。米国ではABO不適合の移植はめったにみません。
Multivisceral transplant: 長年の中心静脈栄養プラスCrohn病などで多臓器不全になったときに、胃、小腸、肝臓、膵臓などを全て移植してしまいます。たいてい何らかの理由で腎臓も悪くなっているので腎臓移植も行われることが少なくありません。長期予後は不明です。小腸の拒絶を除外するために術後頻繁に小腸生検が必要だったり、そもそも移植適応基準があいまいだったりと、よくわからないことが多いです。

波戸 岳
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