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Renal physiology: Glomerulotubular Balance

前回少し触れましたが、糸球体でろ過された大量の水と物質の大半は再吸収されなければなりません。そして、GFRは毎分毎秒変動します(これについては今度詳細述べたいと思います)。GFRに応じて尿細管で再吸収されるボリュームが微調整されなければ大変なことになります。例えばGFRを100 ml/minとした場合、一日144 Lろ過されることになります。ところが99%近くのボリュームが再吸収されることにより、最終的な尿量は通常1 – 2 L/dayになります。もしもGFRが103 ml/minとわずかに上昇して尿細管再吸収の微調整が起こらなかった場合、一日のGFRは148.3 Lとなるため、尿量は5 – 6 L/dayとなってしまいます。このような劇的な尿量の変化を防ぐためにいくつかのメカニズムがありますが、そのひとつがglomerulotubular balanceです。よくtubuloglomerular feedback (TGF) と混同されがちですが全く別の概念です。
peritubular capillaries.jpg
Glomerulotubular balanceは、GFR の増加/減少とともに近位尿細管での再吸収も増加/減少して、糸球体と尿細管での水分バランスを維持する、というその名の通りの概念です。糸球体でのろ過が増加するほどperitubular capillaryに行く血中の蛋白質が濃縮されますが、それによるcapillary oncotic pressureの上昇がglomerulotubular balanceの主な機序と考えられています。また、capillary oncotic pressureはGFRとrenal plasma flow (RPF)との比(GFR/RPF = filtration fraction)に依存していることが明らかかと思います。このfiltration fractionが上昇するほど尿細管での再吸収が増加します。

例えば、心不全では一般にfiltration fractionが上昇していることが知られています。Renal plasma flowは減少していても(ポンプ不全やカテコラミン上昇などから)、GFRは維持されるためです。塩分過多ではなおさらです。利尿剤を使ってもむくみが取れず、心不全がいっこうに改善しない例がありまずが、その理由のひとつがこのglomerulotubular balanceです。糸球体と近位尿細管の間を過多の水分がずっと再循環しているようなイメージです。

波戸 岳
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