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MDIBL Origins of renal physiology (GFR)

The Origins of Renal Physiologyというタイトル通りモジュールによっては古典的なcomparative physiologyに触れることができました。例えば私の参加した時のglomerular filtration rateのモジュールではaglomerular fishで知られる toadfishを用いて尿細管の分泌能などを測定しました。測定する物質によって蛍光顕微鏡や酸化還元反応による試薬の色の変化で濃度を測定したりと、あえて基本的ツールに触れさせようとする心意気を感じました。実験のコンセプトは非常にシンプルです。Aglomerular fishは大量の物質にさらされた際に尿細管のトランスポーターを容易に飽和してしまいそれ以上の排泄ができない、ということを実地体験するというものでした。
toad fish.jpg
実験の一つとしてphlorizinという19世紀から知られているNa Glucose transporter (SGLT)の阻害剤を使って血中と尿中の糖の値を測定しました。Phlorizinから派生したDapagliflozinという腎尿細管に選択的な薬剤は糖尿病治療薬として数多くの治験が行われており、昨年から次々とフェーズ3臨床治験の結果がでています。さて、SGLT 阻害剤をaglomerular fishであるtoadfishに使うとどうなるか?結果は血糖値が100 mg/dl台から500 mg/dl以上に上昇してしまいました。実はこうなることは1920年代から知られているのですが、この魚のトランスポーターがどこに発現していて極性はどうなっているのか、糖を調整するホルモンはどうなっているのか、などグループ内での議論になりました。

現存しているaglomerular fishはglomerular fishと比べごくわずかです。進化の過程でaglomerular fishはglomerular fishよりも以前に出現したと思われがちですが実際にはglomerular fishが先に出現しその後aglomerular fishが三度出現しています。海水での糸球体の役割は限られています。糸球体が存在していれば心拍出量に応じて大量の水と物質がろ過されるため、それに応じてエネルギーを費やして再吸収しなければいけません。淡水魚の場合、体の浸透圧を維持するために大量の水をろ過排泄し、水と比べればはるかに少量の電解質を再吸収すればよいのでエネルギーの観点から糸球体があるほうが都合が良いわけですが、高浸透圧に住む海水魚ではそれが逆になります。特に淡水と海水を行き来する魚の糸球体機能の変化は興味深いものがあります。

波戸 岳
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