「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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「アメリカ移植学会年次総会2010/5/1~5/5」

先週サンディエゴで行われたAmerican Transplant Congress (ATC)に参加してきました。
Nephrologyの年次総会であるAmerican Society of Nephrology (ASN) と比べると、規模はやや小さいですが、それでもAmerican Society of Transplantation (AST:主にTransplant nephrologistsと hepatologistsのためのどちらかというと内科サイドの学会)と、American Society of Transplant Surgeons (ASTS:移植外科医がメインの学会)が合同で毎年一回この季節に開催する、アメリカの移植学会としては一番大きな学会です。
医師以外にも、基礎研究者はもちろん、薬剤師、ナース、コーディネーターなどが参加します。
tacrolimus.JPG
今年の話題として印象に残ったものでは、ステロイドフリーの維持免疫抑制療法のみならず、Calcineurin inhibitor (CNI: Tacrolimus やCyclosporin Aなど現在の腎移植における免疫抑制の基幹となる薬剤)フリーの試みも発表されており、“Calcineurin inhibitor: Love Them or Leave Them ?”というタイトルのシンポジウムもありました。またステロイドやCNIに変わる新しい薬剤に関する報告も多々あり、今私達がアテンディングの先生に「先生がフェローの頃ってradiationとかImmuran (Azathioprine)がメインだったんですよね?」ときくように、いずれ私も『先生がフェローの頃ってタクロリムス全盛の頃だったんですか?』といわれる日がくるかもしれない、などと思いながらセッションをきいていました。他には2008年のNEJM(Scandling. Kawai , Alexander )で、同時に3つの異なるグループからヒトでの報告が発表されて以来、更なる注目を集め、現在移植学会でのホットトピックスとなっている免疫寛容についてのもの、そしてRegulatory T cell(TReg)に関するセッションが多くみられました。Tregの発見者でTregの父と呼ばれる日本の坂口志文先生(京都大学再生医科学研究所)のTregと免疫寛容に関するシンポジウムは学会のトピックスとして大きくとりあげられていました。

学会そのものもさることながら、学会開催中日に、臓器提供推進キャンペーンの5kmのRun & Walkがありそれにも参加してきました。早朝6時すぎに学会場そばの海沿いのランニングコースに500人近い参加者が集まり、皆それぞれのペースで楽しんでいました。最近運動不足の権化のような生活を送っていることもあり、当初は「靴をもってきてないから。」と断っていたのですが、アテンディングに「僕らも参加するんだから君もぜひ参加しなさい!」といわれ、前日に郊外のTargetというスーパーに学会発表のポスターの大きな筒をかついだままつれていかれ、急遽ジョギングシューズと、パーカーなどを買い、参加することになった次第です。頑張って早起きして、思い切って参加した5km walkは、思いのほか非常に爽やかで気持ちよく、多くの移植に関わる人たちと会話しながらの海沿いの散歩は、よい体験になりました。日本人の先生方も少なからずおみかけしましたが、runの先頭集団を突っ走る数人の日本人の先生方を、尊敬のまなざしでみておりました。皆さんも海外の学会に参加されることがあったら、どの学会でもけっこうこうしたイベントを行っているので、思い切って参加されてみてはいかがでしょうか?何かを一緒にすることによって、非常に気軽に会話の糸口が開かれるものですし、意外な出会いがあるかもしれませんよ。(ただし、翌日の筋肉痛には御注意を)。

インディアナ大学 腎臓移植フェロー

鈴木倫子
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