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アンジオテンシン阻害か降圧か?

内科レジデントに「DM腎症の患者さんに投与されるべき薬は?」と聞くと10人中10人、「ACE or ARB」と答えます。1970年代後半に初めてのACE阻害薬であるcaptoprilが登場してから数々のclinical trialでアンジオテンシンblockadeがDMやCHFに有用であることが証明されました。
ただ最近の数々のtrialとそのニックネームの多さから、どのtrialが何を証明したものだったか分からなくなることが多いですね。糖尿病性腎症とアンジオテンシン阻害に関して知っておくべき論文は下記だと思います。

DM neph.jpg

糖尿病性腎症の進展抑制にACE阻害薬が有用であるという最初の前向き研究は1993年のcaptopril collaborative studyです。このstudyからは1型糖尿病患者において、ACE-Iとそれ以外の降圧薬を使用したグループと比較して血圧の値に関係なくdoubling of S-Cr、末期腎不全、死亡率に関して、ACE-Iグループがプラセボと比して優ったという結果です。
また2型糖尿病患者においても2001年のNEJMに同時に3つの論文が出され、腎不全への進展抑制はARB群とプラセボ群でみると、ARBが腎不全への進展抑制効果があったというものです。
一つは有名な「RENAAL」trial でlosartanとプラセボで4年間比較すると、糖尿病性腎症末期腎不全への進展にlosartanは20%程度その進行を遅くするという結果でした。ただ12か月における血圧はlosartanのほうが低かったのでそれによる影響があるかもしれないとう意見もありました。その穴は同時に発表された「IDNT」によって補填された結果になります。これはirbesartan、amlodipine、プラセボの3群で糖尿病性腎症の進展を4年以上観察した結果、ARB投与群はamlodipine投与群に対してdoubling of S-Crに関して有意さは認めたものの、末期腎不全、死亡率に関して有意さはARBとプラセボ、ARBとamlodipineで見られませんでしたが、血圧は4年間通して3群で有意差がなかったのと、3群に分けたため各々のpowerが低かったという要素が加味され「losartanとirebesartan」の2剤が糖尿病性腎症の末期腎不全への進展抑制効果あり、というFDAのお墨付きをもらったわけです。未だに、国営のVA hospital(退役軍人病院)では上記の適応に関して他のARB(candesartanやtelmisartanなど)は認められません。(ばかばかしい話ですが)

ただし!大事なのは降圧であることを忘れてはなりません!ACE-Iが登場する以前に行われた降圧によるDM腎症の進展抑制の前向き研究によると(数は少ないですが)
1型糖尿病腎症患者をβブロッカー、αブロッカー、利尿薬などで降圧した場合とそうでない場合とでみた場合、降圧は「腎機能の低下を10年間で半分以下に抑えた」というものです。この単純で説得力のある論文は「ここ」「ここ」にあります。

簡単にまとめますと、降圧をしないと顕性DM腎症は年に腎機能が10ml/min低下するところ、血圧を下げるとGFRの低下は5ml/min/年に改善、アンジオテンシン阻害薬を加えると4ml/min/年になります。ACE-IやARBの投与は降圧に加え効果はたしかにあるわけですが、もっとも重要なのは血圧をコントロールであることを示唆しています。

T.S
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