December 1, 2012
症例クイズ (2) 続
これはメタノールを飲んだ症例です。
アニオンギャップ(AG)は24と高いのでAG性代謝性アシドーシスがありますが、血漿浸透圧は320と計算された浸透圧290程度(血糖は書き忘れましたが正常でした)よりも高値ですので、osmolar gapが存在します。Osmolar gap + 代謝性アシドーシス の原因で最も多いのがアルコール(エタノール)です。血中エタノール濃度100mg/dlは浸透圧20mOsm/kgに相当すると言われます。ところがこの方、血中エタノールは来院時は陰性ですのでお酒は飲んでいないようです。したがって1)ではないです。(Moonshineについてはこちらを参照)
次にアスピリンはサリチル酸ですので血中濃度が陰性であることとその代謝物質である乳酸が陰性ですから否定的です。
イソプロパノールはアセトンに変わり、浸透圧を上昇させますが、その先は酸に代謝されませんのでアシドーシスはみられないはずです。
またアセトアミノフェンは通常肝機能障害をきたしますが、アシドーシスとosmolar gapの原因とはなりません。
ちなみにこの人の血中メタノール濃度は87mg/dlであったため、fomepizoleと血液透析を2回行いました。幸いにしてメタノールの代謝産物であるギ酸による不可逆性の視神経障害はなかったようです。メタノールは車のウィンドーワイパー液に含まれています。実際この人は最初お酒を飲んでいたが、お金がなくなったため100円ショップに行き安いウィンドーワイパー液を買って飲み始めたそうです。ウィンドーワイパー液によるメタノール中毒はその青い色から、子供による誤飲が報告されています。また寒冷地仕様のワイパー液など凍結温度が低くなればなるほど、メタノール濃度は高くなります。(例:20度仕様は7%程度、-50度仕様は68%!)
ここに主なglycolの代謝経路を示します。
エチレングリコール(不凍液)はシュウ酸による腎不全をきたします。これはとても甘いので、車の下から漏出したエチレングリコールをペットがなめて腎不全になるケースが多いそうです。また米国やヨーロッパでは安いのでお酒の代わりとして飲む人は結構います。私もここで3例ほどみました。
プロピレングリコールは医原性のことが多く、例えばICUでしばしばみかけますが、人工呼吸器などの鎮静目的で使用されるLorazepamが原因となることがあるので注意です。したがって、ICUで感染症や腎不全、心不全などなく、原因不明の乳酸蓄積と代謝性アシドーシスがある場合、プロピレングリコール中毒を疑うべきです。
また大事なのはglycolは時間とともに代謝されていきますので、メタノールを例に取ると最初はメタノールによるosmolar gapが目立ちますが、その後はギ酸による代謝性アシドーシス・アニオンギャップが出てくるということです。
T.S
アニオンギャップ(AG)は24と高いのでAG性代謝性アシドーシスがありますが、血漿浸透圧は320と計算された浸透圧290程度(血糖は書き忘れましたが正常でした)よりも高値ですので、osmolar gapが存在します。Osmolar gap + 代謝性アシドーシス の原因で最も多いのがアルコール(エタノール)です。血中エタノール濃度100mg/dlは浸透圧20mOsm/kgに相当すると言われます。ところがこの方、血中エタノールは来院時は陰性ですのでお酒は飲んでいないようです。したがって1)ではないです。(Moonshineについてはこちらを参照)
次にアスピリンはサリチル酸ですので血中濃度が陰性であることとその代謝物質である乳酸が陰性ですから否定的です。
イソプロパノールはアセトンに変わり、浸透圧を上昇させますが、その先は酸に代謝されませんのでアシドーシスはみられないはずです。
またアセトアミノフェンは通常肝機能障害をきたしますが、アシドーシスとosmolar gapの原因とはなりません。
ちなみにこの人の血中メタノール濃度は87mg/dlであったため、fomepizoleと血液透析を2回行いました。幸いにしてメタノールの代謝産物であるギ酸による不可逆性の視神経障害はなかったようです。メタノールは車のウィンドーワイパー液に含まれています。実際この人は最初お酒を飲んでいたが、お金がなくなったため100円ショップに行き安いウィンドーワイパー液を買って飲み始めたそうです。ウィンドーワイパー液によるメタノール中毒はその青い色から、子供による誤飲が報告されています。また寒冷地仕様のワイパー液など凍結温度が低くなればなるほど、メタノール濃度は高くなります。(例:20度仕様は7%程度、-50度仕様は68%!)
ここに主なglycolの代謝経路を示します。
エチレングリコール(不凍液)はシュウ酸による腎不全をきたします。これはとても甘いので、車の下から漏出したエチレングリコールをペットがなめて腎不全になるケースが多いそうです。また米国やヨーロッパでは安いのでお酒の代わりとして飲む人は結構います。私もここで3例ほどみました。
プロピレングリコールは医原性のことが多く、例えばICUでしばしばみかけますが、人工呼吸器などの鎮静目的で使用されるLorazepamが原因となることがあるので注意です。したがって、ICUで感染症や腎不全、心不全などなく、原因不明の乳酸蓄積と代謝性アシドーシスがある場合、プロピレングリコール中毒を疑うべきです。
また大事なのはglycolは時間とともに代謝されていきますので、メタノールを例に取ると最初はメタノールによるosmolar gapが目立ちますが、その後はギ酸による代謝性アシドーシス・アニオンギャップが出てくるということです。
T.S