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血漿交換ガイドライン2010(その3)

Category 2(血漿交換が二次的治療として推奨される)に分類された疾患はこの通りです。
腎疾患で関係しているのは、Myeloma cast nephropathyです。
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Multiple myeloma(MM)による急性腎不全の報告は50%近くで、その30-80%はcast nephropathy です。Cast nephropathyの機序はBence Jones Proteinなどのlight chain が尿細管にcastを形成して尿細管性の腎不全に至ることが大きな要因です。その他、高Ca血症、高尿酸血症、脱水やlight chainそのものの尿細管への障害も関与してます。Myelomaの治療はステロイドのほか、thalidomideなどのimmuno-modulatorや最近では高価ですがBortezomib(proteosome inhibitor)などを併用します。ちなみに、myelomaは、血清免疫電気泳動によるMタンパクの検出に加え、free light chain(FLC)比が診断にはより正確性があることが分かってきています。

2005年のこのstudyでは、MM発症時に急性腎不全のみられた患者に血漿交換を行った場合とそうでない場合に分け、6か月後の死亡率と腎予後を検討しましたが、両群に差はなかったと結論しています。ところが、患者はいずれも腎生検をしていなかったため、cast nephropathy以外のAKIが関与していた可能性を指摘されました。
その後MMでAKIを呈した患者40人を検討したこのstudyでは、40人中28人に腎生検を行い、そのうち18人がcast nephropathyの診断を得ました。彼らに血漿交換をMMの標準治療に加え行った結果、FLCの減少を認めた患者に限り腎予後の改善をみとめました。
すなわち腎生検によりmyeloma cast nephropathyと診断され、血漿交換によりlight chainの減少をみとめた場合、有効であることが言えます。

Light chainはκ(25kD)とλ(50kD)と2種類あり、分子量はアルブミン(67kD)よりも小さく血管内には20%程度しか存在しません。したがって短時間の血漿交換では除去率が悪いため、透析で除去できないのだろうかと考えた人たちが、透析膜のporeが45kDと極めて大きいハイカットオフダイアライザーを開発して面白い試験をしました。この透析膜を用いて、実際MMでAKIを呈した患者さんに透析(標準:週3回4時間と長時間:8-18時間/日など)vs血漿交換(連日x10日)に分け、かつ抗がん剤の量も調整して検討した結果、FLCの除去率は透析開始2時間の時点で35-70%と血漿交換よりも優れていたそうです!ただし、抗がん剤により十分にFLCの産生が抑えられていない場合、透析終了後には再びFLCの上昇がみとめられました。血漿交換/透析によるFLCの除去は、がん細胞の根本治療を行ったうえではじめて有効であることが分かります。また、大きなporeがあるので免疫グロブリンの補てんを要した患者もいたそうですが、比較的安全に透析が長期に行えることが示されています。アメリカではこのダイライザーが今年の終わりにもFDAの認可を受けるとのことです。Myeloma cast nephropathyには血漿交換ではなく透析が治療となる日も近いですね。

Category 3と4に関しては書きませんが、基本的には有用性が示されていないものです。ちなみにループス腎炎は重症度にかかわらず(脳症や肺出血がある場合は補助的に行うことあり)血漿交換の効果はないということは覚えておきましょう!

T.S
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