「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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日経メディカルへの寄稿記事

以下は日経メディカルへの寄稿記事です。

腎移植患者のフォローは腎臓内科医が担うべき
あなたが末期腎不全になったら透析を選びますか、それとも腎臓移植を選びますか?
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こんなアンケートが米国の腎臓内科医に対して行われました。結果はどうだったと思いますか。ほぼ100%の人が腎臓移植を選びました。日本の腎臓内科医に同じアンケートをしても同じ結果になるのではないでしょうか。それにもかかわらず、日本の透析患者さんの中には移植というオプションを説明されていない方が少なからずいます。ご存知のように腎臓移植医療に関しては残念ながら日本では米国ほど普及していません。

私は日本の大学病院で研修医時代を過ごし、その後、市中病院で数年臨床に携わりました。その後,米国に渡り、米国でも大学病院と市中病院の両方で臨床医として働きました。日米両国の医療を経験し、それぞれに良し悪しがありますが、日本の腎臓内科が発展する上で重要なのは、教育の充実、腎臓内科による腎臓移植の普及、そのためのシステムの構築だと考えています。

まず教育という観点から、米国の内科診療について説明します。米国の内科診療の大きな特徴は、コンサルト制度にあると思います。日本でもコンサルト制度は存在しますが、どちらかというと通常の診療を行いつつ他科の症例も診るといった感じではないかと思います。米国では、コンサルトサービスが独立しています。
その意味をご理解いただくため、フェローの1日そして、研修体制を簡単にご紹介しましょう。フェローは患者の多少にもよりますが、朝の7時前後に病棟で患者さんのデータ集めやカルテを読み始め、遅くとも10時ごろまでには一人で担当患者さんの回診を終え、必要な指示を出していきます。その後、指導医との回診を行います。研修を受けるプログラムによりフェローの人数は異なるのですが、大きいところで10人近く、小さいところでは数人です。
ローテーションは1カ月単位となっていることが多く、どのフェローも均等に各ローテーションが割り振られ、研修の機会が偏らないように工夫されています。

私が現在働いているミネソタの病院も施設内に大きな病院が3つあり、指導医とフェローがペアになり各病院のコンサルトを受け持ちます。最も忙しい大学病院では大体コンサルトの患者リストは20ー30人ほどで、毎日新たなコンサルトが4~6件あり、かなり忙しくなります 。
米国の大学病院も日本の大学病院も同じ教育施設という役割があると思いますが、米国での回診は基本的にフェローと指導医の2人という少人数で行っている点が大きな特徴だと思います。指導医がたとえ著名な教授であっても、それは変わりません。教育を受けるフェローの側にしてみると、とても貴重な経験となります。
回診時には治療方針を自由に議論する雰囲気があり、卒後わずか4~5年目のフェローと学会の会長をしているような医師が、治療方針を文字通り議論しながら回診をしていきます。こうした教育システムにより、米国では一定レベルの専門医が育成されているのだと感じています。

もう一つ腎臓内科医に限って考えると、日米の腎臓移植をめぐる環境の違いがその教育、仕事に非常に大きく影響しています。
日本での腎臓移植件数は2006年にようやく年間1000件を超えました。一方、米国では年間1万6000件ほどの腎臓移植が行われています。米国の人口が日本の2.4倍であることを考えても、大きな違いです。こうした環境の差があるため、腎臓内科医に求められる役割も日本と米国で若干の違いがあります、必然的に腎臓内科医として受けるトレーニングも異なってくるのです。

こうした大きな差が生じている理由は、献腎(死体腎)移植に対する考え方にあります。日本では9割近くが生体腎移植であるのに対して、米国では生体腎移植と献腎移植が約半数ずつ。最も異なる点は、日本は献腎移植のうち脳死の占める割合はわずか1割以下なのに対して米国では逆に脳死が9割以上を占める点です。
ちなみに、ドナー不足は日本と同様、米国でも問題となっており、ドナーを増やす様々な工夫がされています。米国では日本と異なり 血縁や親族でもない人をドナーとして腎臓移植を受けることができます。教会で知り合った人、知人、全く知らない人がドナーとなっています。以前に比べると待機期間は延びてきていますが、血液型により若干異なるものの、3~5年で移植を受けられます。
これに対して日本では献腎移植の待機時間が15年と米国とは比較にならないほど長くなっています。透析患者さんの5年生存率が60%であることを考えると、多くの透析患者さんが、移植を希望しても、その前に亡くなってしまうというのが現実です。

腎臓移植患者の管理は腎臓内科医の仕事になります。米国は日本に比べて患者さんの入院日数は極端に短かく、腎臓移植患者も順調であれば手術後5日ほどで退院していきます。その間、移植外科医と腎臓内科医が同時に患者さんをフォローし、免疫抑制剤、降圧薬などの薬剤管理を共同で行います。
無事に退院後は、基本的には腎臓内科医の外来に通院することになります。移植後、5年、10年といった長いスパンで患者さんを診ること、その間の高血圧、糖尿病などの管理を行いながらフォローしていくのが、米国では腎臓内科医の重要な役割の一つになっているのです。

私は、このような日本と米国で腎臓内科をめぐる状況の違いを踏まえ、黒川清先生に顧問になって頂き、同志数人とともに「日米腎臓内科ネット」を今年、立ち上げました。腎臓内科における臨床教育、研究、移植の発展に興味を持つ日米の腎臓内科医が、メーリングリストやブログ、セミナーなどを通じて情報交換をしています.
メーリングリストには全国の腎臓内科や腎臓移植医療に興味のある医学生、研修医を中心に既に約100人の方に加盟して頂いています。さらには、聖マリアンナ医大の安田隆先生の御協力をいただき、日本腎臓内科学会の卒前卒後教育委員会のメーリングリストとも情報を共有させていただいています。
ブログでは、腎臓内科についての話題はもちろん、イベントや書籍のご案内、日本・アメリカそれぞれで活躍するメンバーのエッセイなど、様々な情報を発信しています。興味のある方はぜひ参加いだければと思います。

今井直彦
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