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ドーパミンの利尿作用

ドーパミンはdopaminergic effect (dopamine receptor)とadrenergic effect (αとβ receptor)をあわせもつ昇圧剤ですが、利尿作用もあります。この図からわかるようにL-dopaは近位尿細管の尿細管側(apical)と血管側(basolateral)から取り込まれ、ドーパミンに変換されると、細胞外に分泌されG protein coupled receptor (GPCR) であるドーパミンレセプターに結合します。この結果Na+cotransporter、 Na+K+ATPaseが阻害され、尿細管におけるNa+の再吸収を阻害することにより利尿をもたらします。したがってドーパミンは尿細管ではパラクリン作用があるといえます。
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少量のドーパミンはdopaminergic effectによる血管拡張作用とadrenergic effect心拍出増加(β)及び renal perfusion増加(α)作用に加え、上記の利尿作用を期待できることから、少量点滴(0.5-3ug/kg/min)を用いてさまざまなstudyが過去には行われましたが、結論からいうと少量のドーパミンやFenoldopam(D1 receptor agonist)はsepsis、心臓手術後、contrast inducedなどに伴う乏尿性のAKIには利尿効果がみられない上、AKI、生命予後を改善しないため、現在ではその使用は推奨されていません。ICU管理されるようなAKIは概して交感神経系がすでに過剰に亢進している上に、ATNなどにより尿細管のmembraneが損傷していることまたドーパミンが正常な状態で尿細管にとどかないなどさまざまな理由が考えられます。また少量でもむしろ腸管壊死を招きやすいなど副作用も指摘されています。ただしループ利尿薬ほどではないですが、正常の腎臓にドーパミンを使用すると高い利尿作用が上記の機序から期待できます。

T.S

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