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Medulla I: Urine concentrating mechanism

尿濃縮は、水へのアクセスが限られた陸上での生活を可能にする、非常に重要な腎臓生理のひとつです。我々霊長類の尿濃縮能は1,000 – 2,000 mOsm/kgH2Oですが、マウスやハムスターは4000 mOsm/kgまで尿を濃縮します。砂漠に生息する哺乳類などは10,000 mOsm/kg近くまで濃縮可能なものもいます。小さな哺乳類の、数センチにも満たない腎臓髄質でこれを成し遂げるのは驚異的なことです。
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尿濃縮にあたって、thick ascending limb (TAL)での能動的なNaClの再吸収をdriving forceとする、 countercurrent multiplicationが重要なのは言うまでもありません。Outer medullaにおける尿濃縮はこのcountercurrent systemに全面的に依存していることは、1950年代にこのシステムが提唱されて以来、micropunctureやcomputer simulationなどで多角的に証明されています。臨床ではfurosemideで容易にTALでのNaCl再吸収の重要性を理解できます(高Na血症)。

しかしながら、このcountercurrent systemのみではそれより深部(inner medulla)での尿濃縮の説明をつけることができません; Inner medullaではpapilla方向に進むにつれ尿素の濃度が急速に上昇しますが、NaClの濃度もouter medullaから引き続き上昇を続けます。
まず一点は、尿素の急速な濃度上昇がUrea transporterを介して受動的におこりますが、その背景となるdriving forceが何なのかいまひとつはっきりしません。二点目は、能動的なNaClの再吸収はTALのみなのに、どうしてinner medullaでNaClの受動的な再吸収が持続するのか不明です。以前はNaClの受動的な再吸収が尿素濃度に依存しているという説 ”passive hypothesis”が有力でしたが、現在は疑問をとなえるグループが少なくありません。事実、2000年代前半に、いくつかのUrea transporter knockoutsが検証されましたが、それらは腎臓髄質の尿素濃度低下を示したものの、髄質のNaCl濃度に影響を及ぼしませんでした。ここここのレビューを参照。
数ヶ月前に、尿濃縮のメカニズム解明をライフワークにしているグループのトークを聴く機会がありましたが、実際のところまだまだ尿濃縮の解明は遠そうです。彼らは腎臓髄質の秩序だった構造が尿濃縮に関与していると仮説をたてて、髄質の3D構築computer simulationを中心に研究をしています。他のグループもいくつか異なる仮説を発表していますが、いずれも仮説にとどまっています。

波戸 岳
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