以前にも書きましたが、アメリカの腎臓内科医の人気は年々落ちており、かなり深刻な問題となっています。その理由は様々なのですが、大きい理由の一つに、仕事の質や量、病態の複雑さが年収につり合わないことです。特に複雑な病態をもつ透析患者を敬遠しがちです。そして研修後の腎臓内科医のポジションがJ1ビザで研修をした人にあまり選択肢がなく、特に都市部で腎臓内科医のポジションが不足しているなどがあります。これに関して、ASNはworkforceを立ち上げていていろいろと人気を取り戻す案を試みています。例えば医学生の早い段階から、腎臓生理にふれさせるために、メーン州でとても良いリサーチの研修を米国の医学生を対象に無料で提供するなどしてなんとか、腎臓内科の人気をあげようとしていますが、現実はやや厳しいのです。以前はフェローも参加できたので、もう5年以上も前になりますが、わたしと、インディアナ大学の腎臓内科医の波戸岳先生もこのコースに参加しました。
今年のnephrology のマッチングの結果はご覧のようにフェローのポジション(466)に比べ、応募者が280人と大幅に下回り、多くのプログラムでポジションが空いているのが現状です。フェローの総ポジションが2015年から2016年に増えたのは、以前はプレマッチでとっていたプログラムが、マッチに完全参加した結果です。私のいるMUSC Nephrologyは、今年募集した6つのポジションのうち2つしか埋まらず、これは私の知る限りこの傾向は全国的なものです。この空いたポジションはスクランブルといって、不運にも第一希望にマッチしなかった人が数名入る他、他の科を志望している候補者、もしくは、ホスピタリストなどから転換する人などでなんとか埋めるわけですが、それでもやはり埋まりません。実際どこでも行われているのが、フェローが今まで診ていた患者の一部を、nurse practitionerやphysician assistantなどで補填して行っているわけです。
その一方で、内科レジデンシーへの門は、IMG(International Medical Graduates)にとって狭くなるばかりで、アメリカのNRMPレジデンシーポジションは、2015年にアメリカ医学生の数とほぼ同等になることが指摘されました。
ただ、実際はIMGは多くマッチしています。その理由の一つとしてアメリカにはMD と同等のosteopathic physician (DO) とよばれるdegreeがあり、彼らはAOAというNRMPとは別のマッチングシステムも採用しているため、2500人強のDOがNRMPの統計に含まれません。したがって、IMG はおそらくこのギャップによってできるポジションで採用されている事が考えられます。また、AMGにとっては、どんなことがあっても行きたくないプログラムは全米に多々あるため、かれらは浪人してでもそういったコースは避け、そういったポジションはIMG によって埋まることになるわけです。
腎臓内科フェローの不足をどうしたら良いかは簡単ではありませんが、一つの案として、IMGは腎臓内科フェローをはじめにするという方法です。これには利点欠点があります。利点はフェローのポジションがレジデンシーにマッチするより取りやすいこと。欠点は、アメリカの医療に制度に慣れていないと、いきなりフェローのポジションはきつい可能性があります。また、フェロー終了後に専門医の資格が、レジデンシーをその後、修了しないと取れないことです。ただ、フェローの研修中、良い評判を得て、良い推薦状が取れると、その後内科のレジデンシーに入る可能性は高くなるため、必ずしも悪い方法とは思いません。もし、米国で臨床留学を考えていて、腎臓に興味があり、内科のレジデンシーに思うように入れない方などは一考です。ちなみに、私のいる施設では、IMGをレジデンシー無しで雇った経験がありませんが、優秀な候補者に対しては、ポジションを考慮できますので、CVを添えて下記のemailまでご連絡いただければ幸いです。Skypeなどで電話面接をした後、有力候補者には数週間、nephrologyのコンサルチームでオブザーバーなどを行ってもらい、最終的に採用になるか決めるといった流れを考えています。
TS
email: saigusa(アット)musc.edu
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