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降圧目標は130/80?

血圧が腎不全の進行に大きな影響を与えることは以前にも取り上げましたが、どこまで降圧するべきか?という指標は実は明確ではありません。高血圧は140/90mmHg以上と定義されますが、糖尿病や腎臓病がある場合130/80mmHg以下を目標としています。ところでこの数字はどうやって決められたのでしょう?
このreviewからは目標血圧135/85以下vs.140-160/90-100mmHgで治療した場合、現在あるデータからは生命予後に明確な差は結論付けられないとあります。また最近発表されたこの文献は2型糖尿病における目標血圧を140以下120以下で比較したところ心血管系、脳血管系eventに影響がなかったと結論付けていますし、この文献からは糖尿病患者でかつ冠動脈病変のある患者における血圧を130未満と通常の降圧140未満で比較した結果、心血管系eventに関してその差はないと結論付けています。
abpm.jpg
タンパク尿のある糖尿病性腎症の降圧はCKD の進行を抑制することは多くの文献が示していますが、高血圧性腎症における降圧に関してはよくわかっていません。黒人には高血圧がとても多いので彼らを集め行ったAASKというstudyがあります。CKD(GFR20-65ml/min)の黒人患者1000人ほどを目標平均血圧(MAP)を102-107か92以下のグループに分け各々ACE阻害薬/カルシウム拮抗薬/βブロッカーで治療した結果、腎予後に差はみられませんでした。ただしACE-Iを使用した患者はタンパク尿の減少が見られたため、このstudyはさらに期間が延長され、ほとんどの患者にACE-Iを投与して合計10年ほど観察した結果、54%の患者が適切な降圧にかかわらず腎臓のendpoint(透析、死亡)に達しました。高血圧性腎症の治療は降圧だけでは不十分であることがこのstudyからは示唆されます。

また一方で、外来で測定する血圧だけではその人の本当の血圧を知ることができないのも事実です。ABPM(ambulatory blood pressure monitoring:24時間血圧測定)を使用したstudyからはnon dipperの存在が明らかになっています。これは夜間血圧が日中に比べ10%以上、下がらない人のことを指し、とくにCKD患者には多くみられることが分かっています。このstudyからnon dipperは「腎機能の低下した患者」と「タンパク尿のある患者」と相関することが分かり、腎機能低下とタンパク尿に関連した心血管系のeventにこのnon dipperは重要な要素となりうることを指摘しています。

AASKから学ぶことはレニンアンジオテンシン系の阻害と適切な外来血圧コントロールにかかわらず長期的には腎機能が低下するという事実で、ABPMを用いた24時間血圧のコントロールや適切な降圧目標は重要な要素です。またこの黒人にはFSGSがとくに多いのも事実で遺伝的要素、を追求する研究は現在とても盛んに行われています。

T.S

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