「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
<< July 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

透析はいつ導入しますか?

透析がESRD患者に導入されはじめて50年以上がたつ今も、適切な導入時期に関しては議論が多いです。NKF-KDOQIによると、透析の開始はGFR=10.5ml/minを一つの目安とし、それ以下でも体液量や栄養状態、尿毒症がなければ、導入を遅らせてもよいとなっています。
image.jpg
早期vs晩期透析導入に関する以前の文献はretrospectiveで、主に1980~90年代にかけては早期透析導入による利点を示したものが多く、いずれも年齢や合併症によるadjustmentがなされてなかったわけですが、早期導入は患者の栄養状態を改善し、入院率の低下およびコスト削減につながり、死亡率の低下につながったというものでした。

2000年以降は逆に透析早期導入の利点はなしという報告が多く、理由は過去の文献には「lead time bias」があったため正確な生命予後を予測できないとされています。「lead time bias」=Error occurs when patients are entered at different stages in the course of their illnesses. Prolonged survival may simply be due to earlier registration of patients by recording a longer lead time.
この文献はlead time bias を除外するため透析患者の腎機能をe-GFR=20ml/minからさかのぼり計算した結果、早期でも晩期でも透析導入時期にかかわらず生命予後に有意差はみられないとしています。ただし、DMなどの基礎疾患があり、状態の悪い患者が早期に導入された場合やlate referralの患者は除外されています。
また最近のこの文献はcomorbidityがあると早期導入の傾向がある可能性があることを示しています。

先月NEJMにはじめて透析導入時期に関するrandomized control study(RCT)が発表されました。進行性のCKD患者(800人ほど)の腎機能をCockcroft-Gault (CG) equationにより算出し(MDRDよりもGFRは20%程度高めに算出される)
1) GFR=10-14ml/min での早期導入と
2) GFR=5-7ml/min での晩期導入
の2つのグループにランダムに患者を振り分け3年以上観察した結果、死亡率、合併症に関して差は見られなかったという結論です。ただし、多くの晩期導入患者は尿毒症や肺水腫などの症状が見られたため、実際は平均9.8ml/minでの導入だったそうです。そもそも一般的に栄養状態の悪いESRD患者では腎機能の指標としてCrを使用したe-GFRはMDRDでもCGでも正確性を欠くので、早期と晩期導入のGFR2-3ml/min程度の差に果たして意味があるのかという疑問もあります。またこのスタディーはオーストラリア・ニュージーランドの施設で行われたものですが、半分近くは腹膜透析患者であることも、一般の透析人口とは異なります。

早期導入は患者のQOLの低下や医療費の増大につながるという欠点もあり、晩期では尿毒症状や栄養状態の悪化などがありますので、適切な透析導入のタイミングを設定することはとても大事なことであると考えられます。このNEJMのスタディーからはタイミングに関して答えは出ませんでしたが、今後はcystatinCなどCr以外のマーカーを使用した、RCTが必要なのかもしれません。またESRD患者のe-GFRは正確性を欠くことはお覚えておく必要があり、あくまで、透析の導入は患者さんの症状で判断することは言うまでもありません。

T.S
固定リンク | この記事を編集する | comments(0) | trackbacks(0)
< 腎結石update | 降圧目標は130/80? >
ARCHIVES
OTHERS