
ネフロンの数と出生時体重には相関関係があることが知られています。出生時体重が軽いほど、生まれもって備わったネフロンの数が少なくなります(Fig A, Fig B - Adapted from Brenner & Rector's the Kidney1,2)Fig Aのもととなるスタディーでは、growth-restricted still birthsと、生後一年以内で死亡したgrowth-restricted infants のネフロンの数を比較することで、低出生体重児のネフロンの数は生後増えないことも示しています。
生まれもって備わったネフロンの数が少ないと、ネフロンに負荷がかかり将来腎不全や高血圧になる確率が高くなるのではないか? 一般にBrenner’s hypothesisと呼ばれるこの仮説はBarry Brennerが20年以上前に提唱して以来、様々な動物実験やヒトでの観察データが蓄積し、少しずつ受け入れられつつあります。
北欧は出生時のregistry systemsがしっかりしているそうで、出生時低体重と将来の腎機能低下や、出生時低体重と将来の高血圧のデータが北欧からいくつも出ています。特にこのCirculationに出たスウェーデンのスタディーは 双子に焦点をあてており重要だと思います。Fig C はまた別のスタディーですが、事故死した人のネフロン数を高血圧の有無に分けてプロットしてあります。残念ながらこのスタディーでは出生時体重のデータがありませんが、非常に興味深いデータであることには違いありません。
ヒトで、ネフロン数減少と腎機能低下や高血圧との因果関係(causation, not association)を示すのは非常に困難ですが、腎移植後のデータはとてもsuggestiveです。Fig Dはフランスからのデータで、移植腎の重さとレシピエントの体重のミスマッチの有無による腎機能の推移を示しています。腎臓の重さとネフロンの数は比例します。ミスマッチがあると、移植後6年ほどはhyperfiltrationがあり、その後腎機能が急に低下しています。
最後に、生体腎移植に着目してみます。生体腎ドナーは献腎後ネフロンの数が半減します。しかし、生体腎ドネーションは一般に”安全“と言われています。本当に献腎後問題がないのかどうかは議論の余地が残るところです。特にNEJMに掲載された、オーストラリアの原住民アボリジニーとその地域に住む白人との献腎後のデータの比較は特筆に当たると思います。アボリジニーは出生時低体重が多く、また、ネフロンの数が少ないことが知られています。生体腎ドナーの安全性について次回以降もう少し掘り下げてみたいと思います。
波戸 岳