「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
<< April 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

腎不全における薬物動態 (その2)

透析によりほとんどの薬は除去されますが、除去率にどういった要素が関与しているのでしょう?
除去されやすい要素
1) 体内分布(Volume of distribution: Vd <0.7 L/kg)の小さな薬剤
2) タンパク結合率の小さな薬剤(透析膜とおりやすい)
3) 分子量の小さな薬剤(小分子<300Da, 中分子300-12,000Da, 大分子>12,000Da)
4) 水溶性薬剤(透析液に拡散しやすい)
pict.jpg
ほとんどの薬は<500Da以下です。(例外:Vancomycin 1500Da, Daptomycin 1620Da)また最近の透析膜はいわゆるHigh Flux Membraneですのでpore sizeは20-30,000Daという大きさを持っていますので、タンパク結合(分子量>50,000)しない限り透過性は良いはずです。
気をつけるべき点は、薬剤の血中濃度を測定するタイミングです。特にVancomycin AminoglycosideなどはRe-equilibrationをするめ、透析後(vancomycinは4-6時間、aminoglycosideは1-2時間後)しばらくして測定しないと誤差を生じる可能性があります。

Aminoglycoside
この薬剤の使用量の目安にされていたpeakとtroughいう概念は透析患者においては最近は使用されません。投与量はその用途により変わってきますが
1) Synergy (他の抗生剤の相乗効果として使用した場合)
-loading dose 1.5-2 mg/kg
-maintenance dose 1 mg/kg (透析後投与)
2) 中等度から重症の感染症(例:Hospital acquired pneumonia)
-血中濃度 8-10を目指す
Aminoglycosideは4時間の透析で約50%が除去されるとされます。ただし、透析患者はこのピークを次回透析まで維持することになるので現実的には他の薬剤を使用するべきです。

Vancomycin
VancomycinはMICが1mg/Lである場合、効果的な最低血中濃度は15mg/Lです。MICが1以上の場合、使用は薦められません。薬力学効果は血中濃度がMICよりどのくらい高くそして長く維持されるかによるからです。
1) Loading dose 20-25mg/kg
2) Maintenance dose 10-15mg/kg
次回透析前にrandomの血中濃度を測定し以下のようにdosingしなおす。
>25 mg/L:再投与は控える
10-25 mg/L:500-750mg
<10 mg/L:1000mg

CRRT(continuous renal replacement therapy)における薬剤の投与
はどうするか?
適切なdosingはきわめて困難です。ほとんどのstudyはUFが1L/hrという実際よりも少ない透析で計算されていることにも注意が必要です。糸球体でろ過され、尿細管で再吸収され、Vdが小さく、タンパク結合がない薬剤であれば、ほとんどCRRTで除去されるため正常量を使用することが薦められます。投与の詳しい目安はここここに詳細に書かれています。

腎不全における抗菌薬の投与方法で覚えるべき点
抗菌薬(time dependant killing)投与量を減らす
-Cephlosporins
-Vancomycin
-Azole (抗真菌薬)
-acyclovir
抗菌薬(concentration dependant killing)投与間隔をあける
-Aminoglycoside
-Quinolones
-Daptomycin

以上簡単に腎不全における薬物動態に関して書いてみました。

T.S
固定リンク | この記事を編集する | comments(0) | trackbacks(0)
< Brenner’s hypothesis - Size Matters | Angiogenesis: Friend or Foe? >
ARCHIVES
OTHERS