「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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腎不全における薬物動態 (その1)

腎臓内科医はしばしば腎不全における薬の投与量や排泄経路について質問を受けます。
腎不全に関わる薬物動態に関して知っておくべきことを書いてみます。
CrCl.gif
A) MDRD vs CrCl
腎不全における薬の投与量はほとんどCockcroft-Gault (CG)によるCrClに基づいています。
MDRDとCGを比較したstudyいくつもありますがいずれも違いを指摘するも、どちらの計算式がより有効でかつ腎毒性が少なかったかについては触れていません。CrClは尿細管からの分泌がある分、MDRDに比べ20%程度高く計算されます。またMDRDは体表面積をCGは実体重で計算するためCGは体の小さな人ではunderestimateする可能性があります。その例をここに示します。

B) 薬の吸収を低下させるsituation

1)Uremia: 胃のpHを変化させるため
2)DM: 機能性障害(gastroparesis) を伴った場合
3)りん吸着やアルミ含有antacidsなど多価陽イオンを含む薬剤の使用
4)浮腫

C) 薬物の体内分布 (Volume of distribution:Vd)

1) Small Vd (<0.7L/kg)
-タンパク結合率が高い場合
-水溶性
-例:フェニトイン, Vd= 0.7, タンパク結合90%
2) Large Vd(>0.7L/kg)
-脂溶性
-例:Digoxin (Vd = 8 L/Kg) and 三環系抗うつ薬(Vd = 36 L/Kg)

浮腫を伴った腎不全では、小さなVdを有する薬剤はそのVdを増加させる可能性があります。
体表面積あたり脂肪の分布が多い人は当然、脂溶性薬剤のVdを増加させます。Vdが大きいほど透析により除去されにくいことも理解できるかと思います。

次回は透析による薬の除去について書いてみます。

T.S
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