「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
<< July 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

Acute kidney injury and repair

病棟でうけるコンサルトで最も多いのはAKI、その中でもacute tubular necrosis (ATN)は最も頻繁にみられます。ATNという名前からは尿細管細胞のsloughing, necrosis, apoptosisなどの病理所見に基づいた診断を匂わせますが、実際の現場ではATNは臨床的に診断するものであり、ATN疑いで腎生検をすることはまずありません。尿中の”muddy brown cast”を毎回ドキュメントしてATNと診断を下す腎臓内科医もいれば、そんなものは飾りで、臨床的にATNが強く疑われればATNと診断するべきで、尿中にgranular castが存在してもしていなくても関係ない、主張する医者もいます。
ATN.jpg
さて、ATNと診断した後の根本治療は、、、皆無です。我々は腎組織の自然治癒をひたすら待つことしかできません。”ATNだから待っていればよくなる”、と言って、そこで思考停止に陥っている臨床医が少なくありません。我々がこの思考停止から抜け出すことが治療の第一歩なのかもしれません。AKIからの修復のプロセスはあまりよくわかっていません。一方で、かなりのダメージをうけても、多くの症例で、腎機能が回復する事実には驚きを隠せません。

以下、AKI repairに関して最近の論文をここにいくつかあげてみたいと思います。
HarvardのDr. Bonventreのグループが昨年発表した、尿細管のcell cycle arrestとそれに伴うfibrosisは、ATNから回復せずに透析に至るケースを理解する手がかりになる可能性があり、非常に重要と思われます(Nature Medicine)。また同グループは、近位尿細管の修復は近位尿細管細胞によってなされることをつい最近発表しています(PNAS)。彼らの仕事から推測できるように、Bonventreはstem cell, bone marrow cell, epithelial mesenchymal transitionなどに対して否定的です。BonventreはAKIマーカー、KIM1で有名ですが、それに対抗するAKIマーカーNGALに関する論文も数多く発表されています。数ヶ月前に発表された論文では、NGALの発現を時間的、空間的に詳細に分析しています(Nature Medicine)。 シスプラチンやエンドトキシンなど近位尿細管に通常ダメージをきたす物質を用いても、なぜか遠位尿細管にばかりNGALの発現をきたしていたのが印象に残りました。いずれにせよ、AKIマーカーが乱用される時代が遅かれ早かれやってくると予想され、その時代の到来前にマーカーの理解をさらに深める必要があると思います。最後に、zebrafishは生後もnephronが増え続けるそうで、哺乳類でも”nephron progenitorsの抑制”を解けば、AKI repairに応用できるのでは、仮説をたてているグループもあります(Nature)。

波戸 岳
固定リンク | この記事を編集する | comments(1) | trackbacks(0)
< サイアザイドについて | 不法移民の透析 >
ARCHIVES
OTHERS