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糖尿病性腎症 (DMN) の進行

1型糖尿病性腎症(DMN)は前回書いた通り自然経過としては血糖/血圧にかかわらずmicroalbuminuriaの存在はDMNへのリスクファクターではあるのですが、microalbuminuriaははたして不可逆性なのでしょうか?これを示したのはPerkinsらの2003年のstudyです。これによるとmicroalbuminuriaを呈した1型糖尿病性腎症の患者386人(平均DM罹患年数11年)を2年ごとにフォローし8年間追跡した結果、ACE-Iの使用に関係なく、初期のmicroalbuminuriaおよびA1C、BP、脂質が低いほどmicroalbuminuriaはなくなる傾向にあり、"初期のDM(1)ではmicroalbuminuriaは可逆性を持つ"と結論しています。最近発表されたDCCTのstudyによりますと、1型糖尿病患者が持続性のmicroalbuminuriaを呈しても、血糖、血圧、脂質を改善することによりなんと40%!もの患者はアルブミン尿から正常尿所見にもどったとしています。このstudyとてもよくできててもっと注目されるべきと思いますが、、、、なぜNEJMやLancetにのらなかったかが不明です。
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また興味深いことに病理所見で糖尿病性変化が見られても、膵移植をすると10年かけて徐々にそれが薄れていくことが示されています。
顕性蛋白尿を呈するDMNに至るには10-20年必要であるとさまざまな文献が示しています。Krolewskiらは1939ー1959年の間Joslin clinicを訪れた1型糖尿病性腎症の患者292人を20-40年間!も見た結果顕性蛋白尿の出現はDM発症後5-15年にかけてピークがありそれ以降は減るとしています。また一旦顕性蛋白尿が見られると、ほとんどがESRDへと進行していくことは多くが報告している通りです。
ではどういった要素がDMNの進行に関与しているのでしょうか?Hovindら はアルブミン尿(>200mcg/min)を呈している1型糖尿病性腎症301人を平均7年毎年BP、A1C、脂質、GFR、蛋白尿を計測し重回帰分析を行った結果、カットオフ値は提示されませんでしたがBP、A1C、脂質、蛋白尿各々がGFR低下に関連しているとしています。
腎臓の大きさですが、一般的には糖尿病の腎臓は大きいことは前回述べましたが、ESRDに至るころには一般的には他の腎症よりも大きいものの、おおまかには1/4は小さく、1/4は大きく、1/2は正常の大きさになるようです。また糖尿病によるESRD患者のほとんどは糖尿病性網膜症の罹患があることも数多くの文献が示している通りです。
さていままでほとんどが1型DM腎症ばかりでしたが、2型糖尿病のstudyで有名なのはPima Indianのstudyです。彼らは高率にDMになる部族で、ESRDへの進行も高いです。彼ら194人を正常、IGT、新規糖尿病、糖尿病(平均12年の罹患)にわけその進行を見た結果、数々の1型糖尿病のstudyと同様に2型糖尿病でも、アルブミン尿の存在はその後のDM腎症の進行を予想できたとしています。このfigure1&2は教科書に載っているいわゆる典型的なDM腎症の経過を示していますので参照してください。
そしてRitzはここで1型DMでも2型DMでも極めて似たような臨床経過をたどることを指摘しています。

まとめますと、糖尿病性腎症は1型でも2型でも多かれ少なかれhyperfiltrationを起こし、その後、数年アルブミン尿を呈し、5年から10年程度かけて蛋白尿の出現そしてCKDへ移行し、最終的にはESRDへと進行していくのが一般的です。今の医療では多少なりともその進行を遅くすることができてもcureは難しく、DMの極めて初期(アルブミン尿)に血圧、血糖や脂質の管理を施すと可逆性もあることが指摘されています。
DM腎症の自然経過、アウトカムに関する文献はさまざまですがいくつか重要だと思ったことを中心におさらいしてみました。

T.S

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