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Acute Kidney Injury, GFR

急性腎不全の診断をいかに迅速につけるかは、臨床腎臓領域の重要な課題のひとつです。以前にもふれましたが、例えば、CT造影剤によるAKIをきたした患者は、造影剤投与直後にGFRが低下しています。しかしながら臨床の現場では、実際にcreatinineの上昇としてAKIの診断がつくまでに数日もかかります。心筋梗塞時のEKG変化やtroponinのようなマーカーが腎臓領域にも必要です。
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数多くの基礎、臨床系の研究室がNGALやKIM-1といった“AKI marker”の研究に関わっています。Proteomicsとその周辺の技術を使った臨床研究は今後もさらに出てくると思われます。例えば、私の知っている限りでは、VA/NIH ATN Studyで最終的に透析に至って回復しなかった群と回復した群に分けて、保存されている血液や尿を”-omics”にかける計画があります。

Paul Palevsky, Mark Okusaらなど多くの著名人が指摘していますが、prospectiveな研究デザインであろうとなかろうと、creatinineの上昇をAKIの診断に用いる限り、多くの例で、本当の急性期を見逃していることになります。Creatinineの上昇が見られ、スタディーに登録された時点ではすでに進行したATNになっており、どんなインターベンションも”無効“になってしまうことが懸念されます(集中治療領域の臨床研究でよくあると感じています)。それゆえ、例えば今年KIにでたNew Zealand発のprospective臨床研究では、AKI患者を早期に捕らえるために、独自のbiomarkerの組み合わせを使ってAKIを定義しましたが、こうなると患者は本当にAKIだったのかどうかという疑問がでてきます 。ちなみに、この研究で使われたerythropoietinは動物実験では過去に多くのポジティブな結果がでています(動物実験では多くの場合、AKIをおこす前にerythropoietinが投与されていますが)。

リアルタイムなGFRを急性期臨床の現場で(ベットサイドで)測定できるようにしよう、という試みは何年も前から行われております。イヌリンのような糸球体を自由にろ過する物質と、分子量の大きいしばらくは血管内にとどまる2つの蛍光抗体物質を血管内に投与し、高分子物質の濃度から血液ボリュームを定義し、低分子物質の濃度低下速度からGFRを測定する、というのが大まかな原理です。コンセプト自体は20世紀前半から存在しています。蛍光抗体を付与した糖物質などを投与して、それを持続的に末梢静脈や皮膚などから測定できるポータブル機器は既に開発されており、現在ブタやラットなどを使って研究が進められています。当然この方法にはボリュームの定義などいくつかのpitfallsがあり、ヒトで臨床応用され、急性期のAKIの診断に使われるようになるにはあと何年もかかると思われます。ちなみに、GFRは正常腎でもかなりの幅をもって変動することが知られています(朝空腹時と食後など)。実際にGFRが迅速にモニターできるようになったら、腎臓内科フェローはICUから頻繁に呼ばれて大変なことになりそうです。

波戸 岳
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