Urine Protein-to-Creatinine Ratio

尿蛋白の測定に24時間蓄尿でなく、スポット尿蛋白/Creatinine比をよく使用します。例えばこの比が3であった場合、その患者は一日おおよそ3 gramsの蛋白尿がでているととらえます。このurine protein/creatinine ratioは過去10年で非常に頻繁に使用されるようになったにも関わらず、この比がなぜ使われているのか意外に知られていないように思います。二つポイントがあると思います。
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1)人間のcreatinine排泄量は1 gram/day
我々人間は偶然にもおおよそ1 gram/dayのcreatinineを尿中へ排泄するため、これを分母にとったdimensionlessな比が成立します。もちろん体格、性別、人種などにより実際のcreatinine排泄量は多少前後します。体格の良い男性で24時間蓄尿creatinine排泄量が1.5 grams/dayだったとすれば、本当はurine protein/creatinine x1.5と1.5倍した比を使ってフォーローしたほうが正確なわけです。

2)Steady stateの理解 
このurine protein/creatinine ratioは腎機能が低下していても同様に使用されています。これはGFRが低下していても、おおよそ1 gram/dayのcreatinine排泄が維持されるというassumptionに基づいています。なぜGFRが低下していてもcreatinine排泄量が変わらないのでしょうか?血中creatinine値が上昇していれば、ろ過されて尿中へ移行するcreatinine濃度も上昇します。その結果、GFRが低下していても総creatinine排泄量は維持されるためです。非常にlooseな説明ですがこれがsteady stateという概念です。
我々のGFRが100/day、血中creatinine濃度が1、そして筋肉などからのcreatinine産生量が一日100だととします(Day 1、例えばの話なので単位は無視してください)。これで一日のcreatinine産生量と排泄量が釣り合っています(下表)。ところが、GFRが100から20に低下した場合、その日の尿中へのcreatinine排泄量は20のみになります(Day 2)。一日creatinine産生量100は変わりません。その結果、余分なcreatinine 180が体に残り、血中creatinine値が上昇します(Day 3、Cr 2という数値は任意)。しかしながら、下表のように、やがては一日creatinine産生量と排泄量が一致して、血中のCr濃度上昇がストップします(at the cost of high serum creatinine)。
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このsteady stateという概念は非常に大切だと思います。例えば、CT造影剤によるAKIでは通常数日後にcreatinineが上昇します。多くのレジデントは、造影剤投与後、腎機能が持続的に悪化しているのでcreatinineが徐々に上昇してくると思っているようです。しかし実際には、CT造影剤投与直後に一気にGFRが低下して、GFRはその後プラトーに近い状態になっていると考えられます。Steady stateを理解するのに良い例だと思い、ここにあげてみました。

波戸 岳
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