
副腎皮質ステロイドはループス腎炎の維持療法には必須で、多くの臨床医はステロイドを1-6カ月の間にtaperし中止する場合が多いのですが、そういった効果を示したstudyは現在のところ示されていません。ただし、投与量の制限や長期投与による骨粗鬆症の予防薬の投与は行うべきです。寛解導入で頻繁に使用されるcyclophosphamideは維持治療では長期使用(6カ月以上)はIVや経口ともに避けるべきです。主な副作用は脱毛、出血性膀胱炎、膀胱ガン、早期閉経、生殖器障害です。
MMFとAzathioprine (AZA)はともにループス腎炎の再発や再燃を予防する有効な薬です。最近のOpen labeled randomized trial (MAINTAIN)ではLupus nephritis(ISN 3-5)の患者さんをcyclophosphamideで導入治療をしMMF(平均2g/day)とAZA (平均124mg/day)で維持療法を行い3年観察した結果、寛解維持率、再燃、ステロイド使用量に差はないとしています。一方、Aspreva Lupus Management Study maintenance resultsによると同じような設定で最大3年まで観察した結果MMFのほうがAZAと比較してrenal benefitがあったとしています。 MMFかAZAかの答えははっきりしませんが覚えておくべきことは、MMFはcylophosphamideと比較して感染症の合併が少なく薬価はMMF>>AZAであり、MMFは妊婦には使用できないということです。
ISN5は膜性腎症です。WHO分類のClass 5(WHO Vc Vd)は膜性腎症に増殖性変化(現在ではISN3か4に含む)を呈していた腎炎も含んでいたことによる理由から過去のデータを見るとLupusのクラス5の予後はさまざまです。最近のISN5におけるstudyは原発性膜性腎症と同じ治療法に準じています。このstudyは42人のISN5患者を1) steroid+ cyclosporine 2) steroid + IV Cyclophosphamide/隔月 3) Steroids (隔日)で治療した結果、1年寛解は1)83% 2)60% 3)27% となっています。MMFとIV cyclophophamideで寛解導入を比較したstudyのサブ解析によるとISN5の患者(84/510人)の寛解率、再発率、臨床経過に差はないとしています。
また興味深いことにMNだけではないですがネフローゼ症候群全般への効果が発表されているのがACTHです。蛋白尿を減らす機序は不明ですがこのstudyからもcyclophosphamideとACTHいずれもMNの蛋白尿を減少させたとしています。今後RCTがその効果のほどを証明してくれると思われます。
日本ではステロイド単独でも腎予後は比較的よいのですが欧米での結果はいずれも不良であることが分かっています。人種の違いからなのでしょうか?
そのほか、immunomodulatorは主にISN3や4を対象に適用されますがそれ単独では使用せずMMFやcyclophosphamaideなどに加えて相乗効果を試したものが大半です。B cell をターゲットにしたrituximubについては前述したとおりです。B cellではなくT cellをターゲットにした薬剤もループスにためされています。抗原提示細胞(APC)はT cellに情報を伝達する際、T cell receptorのほかco-stimulatory signalを必要としますがこのpathwayを阻害する作用をもっていて、リウマチに効果のあるabatacept(APCのB7へ結合)は現在2つトライアルが進行中です。
T.S