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Hypernatremia, Hyponatremia

中軽度の高Na、低Na血症は院内で頻繁にみられます。多くの症例はレジデントによって診断治療され、腎臓内科コンサルトとなる例は限られています。Pocket Medicineなどのマニュアル本には”公式”が載っていて、これらの式に従ってxx mEq のNaClが必要、とか xx ml/hの水 が必要、など計算したことがある先生方も多いかと思います。Naは細胞外に偏在した、細胞外のメジャーなcationです。それなのになぜこれらの” 公式”に細胞外volumeでなく、total body water volumeがいつもでてくるのでしょうか?
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一言で言えば、高Na、低Na血症は浸透圧の異常です。 [Na+]の値が体の浸透圧を反映するので[Na+]値をみる、と言っても良いのかもしれません。そして[Na+]値の異常(=浸透圧の異常)は通常(稀な病態を除いて)水の過多、喪失を反映します。NaCl量の過多、喪失の反映ではありません(これはvolumeの異常につながります)。

細胞内外を出入りする水により、浸透圧は細胞内外同じです。それゆえ[Na+] の補正イコール細胞内外の浸透圧の補正という図式が成り立ちます。したがってtotal body water volumeが” 公式”に使われるわけです。低Na血症で痙攣などの神経症状がでているときは3%高張食塩水を投与しますが、[Na+]値自体が問題なのではなく、神経細胞内の低浸透圧が問題と考えられています。繰り返しですが、NaはNa-K-ATPポンプにより事実上細胞外に偏在しています。そのため、高張食塩水は超過している細胞内の水を細胞外に引きつけ、浸透圧を補正するのに都合が良いので使用します。一過性に細胞内の低浸透圧を補正し神経症状を止めるためには、理論上はマンニトール等、他の物質でも可と言えます(もちろん実際の臨床では使用していませんが)。例えば、3%高張食塩水を投与して[Na+]値が110 mEq/Lから111 mEq/Lになっただけなのに神経症状がおさまった、というのは[Na+]値自体の改善でなく、水が細胞内から細胞外に移行して細胞内浸透圧改善したことが神経症状改善に寄与していると考えるべきです。

SickなICU患者や熱傷患者に高Na血症を伴った例で、色々理由があって[Na+]補正のための水をあげたくない、という旨のコンサルトを受けます。話を聞いてみると、多くの場合は[Na+]値の異常(=浸透圧の異常)とvolumeの異常(=塩分過多)の混同からきています。水もvolumeではないか、と言われれば確かにそうですが、与えた水は細胞内>>細胞外に移行するため、血管内に残るvolumeはごくわずかです(水のあげすぎにより心不全をきたす前に、超低Na血症になります)。浸透圧は細胞内外同じレベルに保たれなければならないので、水のみが間質にいくこともありません。当然、[Na+]値の異常とvolumeの異常という二つの問題はいかなる組み合わせでもありえます(hypo-, eu-, hypernatremia x hypo-, eu-, hypervolemia)。鑑別診断の観点からこの二つの異常は組み合わせて語られることが多いので、これが学生やレジデントの混乱のもとになっているのではないかと思っています。

波戸 岳
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