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糖尿病薬によるCKD患者の血糖コントロール (その1)

腎排泄性の糖尿病薬は、腎機能の低下とともに減量したり、インスリン治療に変更しますが、日本と米国で適応が異なる薬があります。
速効型インスリン分泌促進薬を進行したCKD患者に投与すると、血漿中薬物未変化体濃度の消失半減期が延長し、低血糖を起こす可能性があり、日本では、因果関係がはっきりしていないもののナテグリニドの重篤な腎障害患者への投与により、低血糖昏睡や死亡例があり禁忌になっています。米国の添付文書では、「No dosage adjustment is necessary in patients with mild-to-severe renal insufficiency」と記載されており、特に注意喚起されていません。一方、日本では、ミチグリニドは重篤な腎障害患者へは慎重投与になっており、透析患者にも使用されています。
rosiglitazone.jpg

 インスリン抵抗性を改善するチアゾリン誘導体(ピオグリタゾン)は、日本では、重篤な腎障害があると禁忌ですが、米国の添付文書では、「The serum elimination half-life of pioglitazone, M-III, and M-IV remains unchanged in patients with moderate (creatinine clearance 30 to 60 mL/min) to severe (creatinine clearance < 30 mL/min) renal impairment when compared to normal subjects. No dose adjustment in patients with renal dysfunction is recommended」と記載されており、腎障害患者でも減量せずに、透析患者にも投与されています。日本で禁忌な理由は、製薬会社が治験を実施しなかったためと思われ、我々は、倫理委員会の承認を得て、血液透析患者から文書で同意を得た上で臨床研究を行い、ピオグリタゾン30 mg/日を12週間投与し、蓄積性を認めませんでした。ピオグリタゾンは、透析患者の血糖コントロールやインスリン抵抗性が改善するだけではなく、総コレステロール・中性脂肪・血圧・TNF-α・IL-6、HS-CRPが低下し、HDL・アディポネクチンを上昇させる上、エリスロポエチン投与量を減少させます(1)(2)
海外で広く普及する薬を国内でも早期に使用できるようにすることを目的に厚生労働省が2009年に公募した未承認薬・適応外薬に、生命予後を改善する可能性が高いピオグリタゾンを申請しました。検討会議の結果、学会や患者団体から要望のあった374の医薬品のうち109品目(未承認薬 50品目、適応外薬 59品目)が「医療上の必要性が高い」と判断されましたが、ピオグリタゾンは「検討中」の129件に入っているのではないかと思います。

同じチアゾリン誘導体であり、日本では未発売のロシグリタゾンは、ピオグリタゾンより、LDL粒子数の変化が大きく、HDL上昇が少なく、中性脂肪を上昇させます。メタ解析により、ロシグリタゾンは心筋梗塞の発症を増加させるため、FDAは2007年に、ロシグリタゾン(商品名:アバンディア)の黒枠警告に心筋虚血リスクに関する項目を追加したと聞いています。また、高齢者において、ロシグリタゾンはピオグリタゾンより脳卒中・心不全・総死亡が多いことも報告されました。北米で行われたACCORD trialにおいて、通常血糖管理群のチアゾリン誘導体内服率は58.3%(ロシグリタゾン57.3%)、厳格血糖管理群の内服率は91.7%(ロシグリタゾン91.2%)と、ロシグリタゾンは依然として多くの患者に使用されています。米国では、ピオグリタゾンは1999年から発売されており、2005年前後よりロシグリタゾンの処方数を上回ったと聞いています。

日本大学医学部附属板橋病院
腎臓高血圧内分泌内科 岡田一義
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