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アメリカの医療:薬物中毒

アメリカでは日本に比べて薬物中毒が多い。従って、薬物使用やそれに関連した疾患を診る機会があり、薬物使用を疑う時には尿のドラッグスクリーンをする。アンフェタミン(覚醒剤)、コケイン、マリワナ(大麻)、オピエート(モルヒネ、ヘロイン・麻薬)、などが一般的なドラッグスクリーンである。
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最も手軽に使用される薬物がマリワナ(大麻)で、タバコのようにパイプで吸う。マリワナの使用頻度は統計によるとアメリカ人の5%であるが、これは今現在マリワナを使用している人の数字であって、使用歴まで含めるとずっと高くなる。アメリカ人でマリワナを吸ったことがない人を探す方が難しいくらいだ。ホンワカと気持ち良くなり、激しい中毒症状は無いので手軽に使用されるが、もちろん依存性はある。
次に多いのがオピエート(モルヒネ、ヘロイン)、いわゆる「麻薬」である。麻薬は強力な鎮痛剤で、医学的には術後やガン疼痛などに使用される。呼吸抑制もあるため、術後に投与された少量の麻薬で呼吸が止まりかけ、あわててICUに運ばれることもある。やはり気持ちが良いらしい。病院でも頻繁に使用される薬剤なので、麻薬を目当てに痛みを訴えてERに来る麻薬中毒患者は日本にでさえいる。禁断症状で発汗したり、ヨダレが垂れたりするが、社会的に問題なのは情緒不安定になり、犯罪につながることである。
アメリカのスゴイところは、この麻薬中毒者の治療として「メサドン」という、これまた別な種類であるが、結局は経口の「麻薬」を使用することである。ヘロイン中毒患者は「メサドンプログラム」という、公にメサドンを与えてくれるプログラムで麻薬をもらい続けることによって禁断症状を起こさず、且つ静脈注射による感染の防止もできる。恐ろしいことに、実はメサドンの方がヘロインよりも依存性が高いと言われている。つまり、アメリカは麻薬中毒患者による犯罪を抑えるために、別な形の麻薬を与え続けているということである。究極の選択であり、エイズの蔓延を防ぐために清潔な注射針を配る発想と似ている。
麻薬中毒者は注射針を使用することが多く、静脈に沿った注射の跡を「トラックマーク」と呼ぶ。「トラックマーク」の探し方であるが、薬物中毒者も見えやすいところは目立つので避ける。見えにくく手頃な静脈というと、足首から甲にかけての血管になる。従って、右利きならば左の足首、左利きならば右の足首に「トラックマーク」を探す。
最後にアンフェタミン(覚醒剤)、コケインであるが、これらは交感神経刺激薬であり、基本的には興奮状態になる。だから、薬物中毒者は気持ちが良くなる状態を「High」と表現する。コケインは鼻から吸引するか、タバコで吸うか、静脈注射する。血管収縮作用があるので、鼻から吸引した場合に局所の血管を収縮しすぎて壊死するため、鼻中隔に穴が開くことが古典的には有名である。ただ、臨床上で重要なのはコケイン由来の胸痛で、これはコケインによる血管収縮が心臓の冠動脈にも起こるために発症する狭心症や心筋梗塞である。

長浜 正彦

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