免疫抑制剤の役割も絡めると臨床免疫の理解が深まります。以前述べたように、ステロイド、タクロリムス(CNI)、マイコフェノレート(MMF)がスタンダードな免疫抑制維持療法です。免疫抑制剤はリンパ球の機能を抑制することでその効果を発揮しますが、それぞれ得意不得意な分野があります。
ステロイドとCNIはT細胞の中でも急性拒絶の主軸であるエフェクターT細胞の抑制に優れた力を発揮しますが、濾胞T細胞の抑制はあまり得意ではありません。したがって、ステロイドとCNIは急性TCMRの予防および治療に使用されますが、AMRの治療には有効ではありません。重篤なAMRの場合は炎症を全体的に抑える意味でステロイドを増量する場合もありますが、個人的にはおまじないのようなものだと捉えています。
MMFはステロイドやCNIとは別の作用機序でT・Bリンパ球全体の機能を抑制するので、TCMRとAMRどちらの治療にも有効です。
免疫抑制導入および中等度以上のTCMRの治療に使用されるサイモグロブリンは、T細胞膜上に表現されているCD3,4,8など中核となるレセプタに結合しアポトーシスに導くことでほぼ全てのT細胞を機能不全に陥らせる破壊力を持っています。Banff 1B以上のTCMRが適応になります。当然感染症のリスクが高まるので、慎重に適応症例を選び投与量を調整します。
AMRの標準治療は免疫イムノグロブリン(IVIG)と血漿交換(TPE/PLEX)です。IVIGは抗体に直接作用しその機能を抑制します。TPEは抗体そのものを物理的に除去します。TPEの治療回数は施設で異なりますが、米国では隔日で6-7回が一般的です。前述したように、メモリーB細胞の働きにより抗体は持続的に産生されるため、TPEの治療効果は一時的です。したがって、治療後はMMFを増量するなどしてAMRの進行をブロックします。
慢性AMRに関してはこれまでリツキシマブが治療の中心でしたがアウトカムは芳しくありませんでした。理由はリツキシマブは既存のB細胞の機能を抑制できるのですが形質細胞に対する効果が不十分なためとされています。しかし、最近ダラツムマブの慢性AMRに対する有効性が示されました。同剤は本来は多発性骨髄腫に対する治療薬なので、B細胞および形質細胞への優れた抑制効果が期待できます。しかし、拒絶に対してはoff-label useなので使用できるかどうかは保険会社次第です。
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