ご存じのようにアメリカは資本主義国の最たるものですから、全てが数字(金)と直結しています。一定の収益を上げなければ移植プログラムを維持させることができません。移植件数が増えると病院への収入も増えます(腎移植内科医の給与が増えるわけではありません)。前述したように、一般の人々は「移植件数」と「どれだけ早く移植受けられるか」に基づいて施設を決める傾向にあるため、競争に勝つためにはハイリスク症例に手を出さざるを得ない状況になります。腎機能が芳しくない場合、腎移植内科医や移植コーディネータは患者さんの不満や苦痛と長きにわたり向き合うことになります。その一方で、移植件数のみを喧伝して“We are saving lives !”と喜んでいる管理職をみると、どうにもやり切れなくなります。大規模な移植施設だと風通しも悪くなりますからチーム内に軋轢が生まれ易く、内科外科を問わず医師の大量退職に繋がることもあります(手前味噌ですが、当施設では外科チームと常にコミュニケーションをとり適切に移植を行っていると自負しています。小規模施設の利点です)。
これまで色々述べてきましたが、結局死体腎移植が上手くいくかは運が全てという思いを強くしています(身も蓋もないですが)。グラフト予後予測因子の中でもKDPIと虚血時間がきわめて重要であることは論を俟ちません。「質の良い腎臓」を「タイムリーに」移植できるかどうかは運次第です。オファー応需の際、患者には予想されるアウトカムについて一通り説明し、手術を受けるか見送りたいか訊くことになっています。パーフェクトな腎臓であれば文句なしに手術しましょうと言えますが、困るのは質が微妙な腎臓の場合です。死体腎移植は不確定要素が多く、腎予後を明確に予測することは難しいからです。患者さんから「Whatever you recommend」と言われてしまうとこちらも困ってしまいます。移植に踏み切るのは簡単ですが、うまくいかなかった場合必ずしも再移植できるとは限りません。かと言って、移植を見送った場合、次いつオファーが来るかは予想出来ませんし、よい腎臓がオファーされる保証はどこにもありません。透析患者の生命予後には大きなばらつきがあり、例え今問題なく生活が送られていたとしても、オファーを断った場合、2-3か月後に移植可能な健康状態であるかもわかりません。結局移植に踏み切る場合が多いのですが、移植後腎機能が芳しくなかった場合、「もう少し待つべきだったかな」と思うこともあります。
グラフトロスが生じた場合、移植後年数に関わらずUNOSに報告することになっています。しかし、移植後1年から数年経つと多くの患者は地域の腎臓内科クリニックに紹介されていくことが多いので、報告されないことも多く、自施設の長期予後を把握することは容易ではありません。結局は日々の診療の肌感覚で判断するしかなく、ましてや一般の人々が実情を把握することは不可能に近いのです(一番いい方法は、そこで働いている人に自分の施設で移植を受けたいと思うか訊いてみることです)。殆どの患者は自分の居住地域近隣の移植センターに登録することになりますが、いい質の移植が受けられるかどうかは神のみぞ知るというところです。中には他州から移植のためだけに転居する人たちもいます。
繰り返しになりますが、移植に対する患者の期待と現実には隔たりがあります。ハイリスク症例を移植する大規模センターであれば、いっそのこと「当施設では移植腎の質は保証できないが、早く移植を受けられます!」と大々的に宣伝してしまった方がお互いスッキリしていいのではないかと常々感じています。
次回は典型的な腎移植の術後経過についてお話ししたいと思います。
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