1.地理的要因
米国は国土が広大なうえ病院の数が少なく、医療アクセスが日本に比べて物理的にも悪いです。僻地に位置する医療センターでは自宅から病院まで5―8時間かかるということもあります。その場合、緊急時は近隣の病院を受診しますが、移植内科医/外科医はいませんので転院を待つことになります。移植センターも常に満床であることが多く、転院に1週間以上かかることもあり、診断や治療の遅れに繋がります。電話で担当医とやり取りをし応急的治療を行ってもらいますが、限界があります。
2.患者的背景
米国では人種が移植のアウトカムを大きく左右します。私が以前勤務していたサウスカロライナは黒人の多い地域で、レシピエントの75%が黒人でした。肥満率が高く、心血管イベントなど多くの既往歴を抱えており、ハイリスク患者が大勢いました。現在勤務するハワイは殆どがアジア人なので痩せており、創部感染等の合併症が格段に少ないことに驚いています。
3.各施設の特色
米国には約250の移植センターがあり、移植件数には大きくばらつきがあります。施設の位置する地域も件数を左右しますが、それ以外にその施設がどれだけアグレッシブに臓器を応需するかが重要なファクターです。
件数(量)とアウトカム(質)のバランスについて考えてみます。理想は質のいいドナーからリスクファクターのない若年のレシピエントに移植するパターンですが、実際にはそうもいきません。前述したように、地域によってはハイリスクのドナーおよびレシピエントがどうしても多くなってしまうからです。
移植後のアウトカムはUNOSによってモニタリングされ、2年半ごとに各施設のデータが一般に公開されます(SRTR:Scientific Registry of Transplant Recipients)。SRTRウェブサイトでは、各施設毎にどれだけ早く移植が受けられるか、移植1年後(長期ではないことに注意が必要です)の生着率はどれぐらいかがデータ化されています。
レシピエントの生存率、腎臓の1年生着率が全国平均を下回ると、UNOSからの監査を受けます。成績が極めて悪い場合は移植プログラムの一時停止などの措置が取られることもあるため、全施設は移植件数と生着率/患者生存率を計算しながら移植を行うことになります。
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