臓器分配と応需率の現状 その2

質のいい腎臓は小児や免疫学的に強く感作されている患者に優先的に分配されると述べましたが、感作の程度はCPRA(Calculated panel reactive antibody)という検査で計測します。0-100まであり、高値であるほどレシピエントは強く感作されていることを示しています。CPRAが20以上だと移植可能な臓器を見つけるのが困難になるため、患者はポイントが加算され待機リストの順位が上がります。CPRA100の患者は待機リストのほぼトップに載りますが、理論上全てのドナーに対し抗体を持っているため、10年以上待機する患者もいます。

しかし、CPRAはヒトが持つコモンなHLAに対する抗体価であることと、また多少変動することから、ドナーが比較的稀なHLAを有している場合には抗体が検出されず、移植が可能となります。KDPIが20未満の腎臓は、まず小児、そして全国規模でCPRA98以上の患者にオファーされます。

応需は時間との戦いです。臓器搬送時間、クロスマッチにかかる時間を勘案する必要があります。例えば、CPRA100の患者にオファーが来たとします。受け入れると判断をした場合、まず毎月検査されるレシピエントの既存のHLA抗体とドナーのHLAをコンピューター上でマッチさせるバーチャルクロスマッチを行います。これには数時間かかります。バーチャルクロスマッチが陰性でも、CPRAが極めて高いため、患者の血液に新規の抗体が産生されている可能性は排除できません。したがって、レシピエントとドナーの血清/血球を実際に用いたフィジカルクロスマッチをほぼ全例で行う必要があります。

それにはドナーの血液サンプルを取り寄せる必要がありますが、遠距離の場合血液サンプルだけを運搬(空輸または陸路)する訳にはいかないので、腎臓と血液サンプルを一緒に搬送することになります。この場合、搬送に数時間以上、フィジカルクロスマッチに8時間は要します。当然その間腎虚血は進行し、臓器の質は低下します。もしクロスマッチが陽性になった場合はオファーを却下しなければなりません。OPOとUNOSは新たなオファー先を探しますが、鮮度の落ちた腎臓を受け入れる施設は減りますので、最悪臓器廃棄ということになるのです。結局、費用対効果の観点から、地理的に離れた病院からのオファーの多くは自動的に却下せざるを得ないということになります。

ハワイは離島州なので、上記の理由から殆どの腎臓は州内で発生したドナーで賄われています。

次回は、「腎移植の質と量、両方を担保することの難しさ」についてお話ししたいと思います。

GU


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