臓器分配(allocation system)と応需率の現状 その1

ドナーから臓器を調達するのは病院ではなく、OPO(Organ Procurement Organization)と呼ばれる機関です。OPOは家族との話し合いなど臓器提供に関する準備全般と臓器の運搬を担います。意外かもしれませんが、移植外科/腎移植内科はこれらのプロセスには一切関与しません。ドナーが発生するとOPOはさらに上の機関UNOS(United Network for Organ Sharing)に連絡します。UNOSは複雑なアルゴリズムに則ってオファーする病院を決定します。自施設でドナーが発生しても、必ずしもその臓器を貰えるというわけではありません。臓器摘出予定時刻が決まっていることがあるため、オファーを受けた施設は臓器の応需を1時間以内に判断します。原則として、ドナー病院から半径250海里(約460km)以内に位置する施設にまずオファーされます。それらの施設が断った場合は、より遠くに位置する施設に順にオファーされます。理屈では、東海岸のあらゆる施設で断られ、最終的に中西部の施設が受け入れるということもあり得ます。しかし、その頃にはかなりの時間が経過していて臓器の質が落ちているため、結局は断られる、或いは手術が直前でキャンセルになることが多いのです。米国での腎臓の廃棄率は約20-25%に上ります。

オファーを断る理由は様々ですが、腎臓の質(心停止後提供、長時間虚血、KDPI高値)、クロスマッチ陽性が主な理由です。KDPI(Kidney donor profile index)とはドナーの年齢、クレアチニン、死因などに基づいて算出され、0-100%まであります。値が高いほど質が悪くなります。KDPIが0-20%の腎臓は良質な腎臓を必要としている患者(小児など)に優先的にオファーされます。KDPIが85%を超えると生着率が極めて悪くなることが知られており、患者の同意がない限りオファーされません。患者は移植評価外来でこのオプションを提示されます。これらの腎臓は移植後機能するかは不透明ですし、たとえ機能したとしても数カ月から数年で廃絶する可能性が高いです。唯一の利点は早く移植できるということのみです。患者が興味を示した場合はこれらのリスクを重々説明するようにしています。希望する患者の殆どは、維持透析がきわめて苦痛で、一刻でも早く透析が離脱できる可能性があるならそれに賭けたい、という方々ですが、中には十分に理解していない方もおり、カウンセリングの必要性を感じています。

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