腎移植評価から移植を受けるまで

CKD患者やESKD患者が移植を希望する場合、まずは移植評価を行う必要があります。腎移植内科医と移植外科医が別々に診察し、それぞれリスクを評価します。評価基準の詳細は施設によって違いはありますが、心機能評価、悪性腫瘍スクリーニング、感染症スクリーニング、画像評価、ADL評価、社会的サポートの評価は必須です。移植評価外来では移植に関する一般的事項に加え、内科的リスク(糖尿病、感染症、悪性腫瘍)を重点的に説明します。殆どの患者は同意しますが、中には希望の意思を撤回する人もいます。移植はうまくいけば患者のQOLは劇的に改善しますが、深刻な合併症が起こった場合の心理的・身体的負担は大きいので、それ以上深追いすることはしません。希望があればまた受診してもらいます。

米国では外来や検査の予約に時間がかかり、全ての評価を終えるのに数カ月から半年、長いときは1年以上かかることがあります。評価が完了したら、移植選考委員会で最終決定をし、承認されれば患者を待機リストに載せるということになります。移植までの待機期間は年齢や抗体価など多くの要因が絡んでおり一概には言えませんが、大まかにAB型は3年、A型は4年、O型は5年、B型は6年です。原則待機期間は透析開始日、透析未導入のCKD患者では待機リストに載った日(GFRが20以下になれば載せることができます)から始まります。例えば、6年間透析している血液型ABの患者が待機リストに載った場合、数日以内に移植が行われるということもあります。これが、米国に行けば移植をすぐしてもらえるという誤解の一つです。実際は臓器不足は深刻な問題で、待機中に死亡する患者が多いのも事実です。特に、輸血や妊娠、過去の移植等で免疫が感作されている場合移植可能な腎臓を見つけることは困難で、10年以上待機してる人たちもいます。日本と比べ透析患者の予後が圧倒的に悪い米国では、移植医療は救命医療の一つと捉えられている側面があり、なるべく多くの透析患者をリストに載せるようすすめられています。しかし、移植の合併症の怖さを知っている身としては盲目的に全ての患者をリストに載せる訳にもいかず、ジレンマを抱えることが多いです。

移植リストに載った後は、年に一回の外来受診が必須となり、そこで新たなイベントがないか、移植の意思に変化はないか確認します。待機ステータスにはactiveとinactiveの2つがあります。例えば入院などで移植が受けられる状態でない場合、待機ステータスをinactiveに変更します。Inactiveの間は移植オファーが届くことがなくなりますが、待機時間は稼ぐことができます。状態回復の見込みなしと判断された場合は選考委員会で吟味され、待機リストから除外されます。

次回は、臓器分配の仕組み(allocation system)と応需率の現状について説明したいと思います。
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