新章スタート!スタンフォード大学での腎臓内科フェロー体験記1

いよいよ7月1日より、念願の腎臓移植内科フェローとして働き始めました。

思えば、初期研修2年目の初めの4月頃に北海道大学で腎臓内科をローテーションし、移植の患者さんを目の当たりにしたことがきっかけで、腎臓内科。そして8月には渡米の決断、後期研修を行わない選択をして、東京で浪人のような生活を送りながら、USMLEと米軍基地でのインタビューの準備を進めました。その後、湘南鎌倉で腎臓内科を本格的に学び、なんとか辿り着けたのが3年前の内科レジデンシーです。そしてそこから、アメリカ生活での良し悪しを経験し、いい意味で肝が座り、いざ腰を据えてしっかりと勉強できることが楽しみでしかたありませんでした。

スタンフォード大学と私の生活
スタンフォード大学は、サンフランシスコとサンノゼのほぼ中間に位置しています。別称で「The Farm」と呼ばれます。というのも大学が作られる前は牧場だったそうで、牧場主が開いた学校だったからとか。また、最近では花巻東の佐々木麟太郎選手が進学したことで名前を聞いたことがあるかもしれません。東のハーバード、西のスタンフォードと言われるように、アメリカでは知らない人がいない大学だと思います。日本の東大・京大のような感じでしょうか。なので、いい感じに学歴ロンダリングできるかもしれませんね(笑)。

スタンフォードがあるあたりは、まさに郊外といった趣で、高い建物は一切なく、遠くの山々がとてもきれいに見えます。私が住んでいるあたりはマウンテンビューという街で、名前の通り、きれいな山が見える穏やかな地域です。ニューヨーク・マンハッタンでの3年間は、喧騒、怒号、クラクション、救急車のサイレンと、文字通り眠らない街が私の知るアメリカでした。そのため、今こんなに穏やかに生活しているのが嘘のようです。毎日晴れていて、遠くの山々が見守ってくれている姿は、自分の故郷である十勝を思い出させます。日照時間が日本一長い十勝晴れの中、あの山々を見て通学していた頃に帰ったような気持ちになります。

アメリカでの研修スタイル
さて、スタンフォードでの研修は、外来のローテーションから始まりました。日本での研修では、どちらかというと「習うより慣れよ!」というスタイルでトレーニングを積んできました。他のプログラムはわかりませんが、往々にしてそういうスタイルの気がします。

しかし、アメリカではレジデントやフェローは、指導医が責任を持ってその医師をトレーニング期間中に一人前にすることを目的としています。というのも、2年間のプログラムを卒業すると、腎臓内科専門医を取得することができ、一人前の医師として完全に独り立ちして診療を行うことになるからです。そのため、この期間に基本的なことを一通り学ばなければいけません。

という前提があるため、例えば本日は午前中に透析の患者さんと話したり、データを見て透析のオーダーを調整したり、トラブルシューティングをします。午後は、指導医のクリニックに5人の患者さんが予約されています(「たったの5人!!!」と日本の先生はびっくりすると思いますが)。その患者さんを診察し、プランを考え、指導医にプレゼンをします。それを指導医が適宜修正し、指導してくれるという形です。もちろん指導医によってプレゼンで好まれるスタイルも違いますし、得意分野も変わってくるので、その辺りを見極めながら、一緒に働いていくという形です。とっても丁寧ですよね!!!治療についてこの論文は知ってるか、とかこのStudyではこういう患者が適応だったから、この患者さんには合わないかもね、などなど、そういうDiscussionをしながら学んでいきます。指導医は1週間ごとに変わるので、偏ったスタイルにもならず、自分の中で各々の先生から好きなスタイルを取り入れながら、自分の形を作っていくことができます

今後の挑戦
これまで2週間のローテーションをしてきましたが、毎日何かしら一つ以上の勉強するテーマを見つけられるのでとても楽しいです。特に、現在ローテーションしているサンタクララバレーメディカルセンターでは、ISPD(International Society for Peritoneal Dialysis)の北米支部の元会長であるDr. Saxenaのもとで週1回PD(腹膜透析)外来の患者さんを担当させてもらえます。PhysiologyやAnatomyの基本から処方、トラブルシューティングまで、包括的に学ぶことができる機会はなかなかあることではないので、このような機会を最大限に活用できるよう頑張っていきたいです。

来週はClinic Conferenceといって、30分程度の症例発表と勉強会が義務付けられています。先週に診断・治療した原発性アルドステロン症の症例を発表する予定ですが、複数の指導医が見に来てディスカッションをするので、しっかりと準備していきたいと思います。

タイムリーなことに、7月14日に原発性アルドステロン症の関連ガイドラインに関する重要な論文が発表され、勉強をするのにとても良い機会になりました。この論文では、高血圧の既往がある人には全例スクリーニングをすることが"Suggestion"(recommendationではない)されていました。とても勉強になりましたので、高血圧を診断・治療する方には是非ご一読をおすすめします。2016年ぶりの改訂という記載もあり、非常に注目されているようです。
https://academic.oup.com/jcem/advance-article/doi/10.1210/clinem/dgaf284/8196671?searchresult=1

外来ローテーションは全体のローテーションの中で「癒し」とされているので、朝8時までに病院に到着し、夕方5時ぴったりに帰宅できる生活が1ヶ月続きます。8月からはコンサルトサービスなので、怒涛の日々が始まるため、それに向けて心の準備をしています。

また、定期的にフェローの生活をここに残していけたらと思います。それではまた!
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