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尿細管性アシドーシス(RTA)part 2

RTAは腎臓が原因で高Cl-性代謝性アシドーシスをきたす病態であるとPart 1で書きましたが、厳密には“正常または正常に近い腎機能”で酸の排泄障害がある病態を示します。高Cl-性代謝性アシドーシスの原因で大事なのは慢性腎臓病(CKD)です。特にGFRが40ml/min以下になるとネフロン数の減少からアンモニアの産生が低下するため、腎臓は体内で作られた酸を十分に排泄できなくなり、高Cl-性アシドーシスを呈します。GFRが20ml/min以下とさらに低下すると陰イオンを排泄できなくなるため、「アニオンギャップ」(=通常計測されない陰イオン)が増加します。したがって通常CKDでアニオンギャップがみられるのは腎機能が進行した場合であることがわかります。

3型RTAは1型と2型RTAが混在した小児にみられる稀な病態です。

RTAで最も多いのが4型RTAです。病態は“低レニン性-低アルドステロン症”です。臨床上1) 軽度のCKD 2) 糖尿病3) 高K血症4) 高Cl-性アシドーシスを呈していることが多いです。4型RTAの正確な機序は不明ですが以下のことが指摘されています。

腎臓:低レニンの機序は不明ですが、それに伴う低アルドステロンは高K血症をきたします。腎機能が正常だと高K血症そのものが集合管からのK排泄を促すため高K血症は改善しますが、CKD(特にGFR 40ml/min以下)ではネフロン数の減少から高K血症とアンモニアの減少からアシドーシスをきたします。またCKDは体液過剰にある場合が多く、これがレニンの分泌を抑制していることが考えられます。その証拠に、利尿剤などでhypervolemiaを改善するとKや血圧は正常化します。ただし、両側の腎臓を摘出してもアルドステロンは産生されることと高K血症がアルドステロン産生を刺激することから、低レニンだけが4型RTAの原因とは考えらていません。

副腎:糖尿病によるインスリン抵抗性からか、副腎のzona glomerulosaの機能障害を引き起こしアンジオテンシンII不応の低アルドステロン症を呈します。
実際このstudyではACTHによるアルドステロンの分泌は正常であったため、DMは副腎におけるpost receptor defectを引き起こすと考察しています。

薬剤:レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とヘパリンは高K血症を助長します。RAS阻害薬はその名のとおりです。NSAIDsはプロスタグランディン(PG)の合成を阻害しPGはレニンを刺激することがわかっていますので、低レニンから低アルドステロンに関与します。ヘパリンは副腎におけるアルドステロン合成を抑制するため低アルドステロンとなります。

4型RTAの治療はK制限のほか血圧が正常なら、fludrocortisoneなどの鉱質コルチコイドの投与が有効ですが、体液過剰や高血圧がある場合は利尿剤です。
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またRTAではありませんが、“高K血症と代謝性アシドーシス”を呈する病態で重要なのは、鉱質コルチコイド受容体(Mineral Corticoid Receptor:MR)の障害です。遺伝的にMRに変異があるため、アルドステロンの感受性の低下した偽性低アルドステロン症(psuedo-hypoaldosteronism: PHA type1)という病態がありますがこれは小児でみられアルドステロンの産生に異常がないが高K血症や代謝性アシドーシスを呈する病態です。また米国で好まれる黒いlicorice(甘草)に含まれるglycyrrhizic acidは腎臓で11-β-hydroxysteroid dehydrogenase [コルチゾール(MRに作用する)→コルチゾン(MRに作用しない)の変換酵素]を阻害するため、腎臓における鉱質コルチコイドを増加させるためPHA の治療としても使用されます。

T.S

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