Origins of Renal Physiology のコースでとても印象的だったのがsalt secretionのモジュールです。一般的に海水魚は主に塩を排出し、淡水魚は水を排出することにより周囲環境から身を守っています。海水の浸透圧は1000 mOsmと高く、魚(bony fish)はえらから塩水を分泌してこの浸透圧下に適応します。ところがサメやエイなどのElasmobranch(軟骨魚類)は塩水を主にCl-チャネルを有するrectal glandから分泌します。
Rectal glandはとてもユニークな構造をしています。血管側(basolateral)に NKCC2 transporter、Na-K-ATPase、K チャネル、CNP(C-naturetic peptide)などいくつかのトランスポーターやレセプターがありますが、分泌側(apical)にはATP依存性のCFTR(Cl-チャネル)しかないため、Cl-分泌の重要な実験モデルとなります。またこの器官は一つの動脈と静脈でfeedingされているため扱いやすいという利点もあります。
ここではdogfish sharkのrectal glandを摘出し、adenyl cyclaseやphosphodiesterase:PDE阻害薬を投与することによってATP↑からCl-の分泌を観察しました。また、NKCC2はループ利尿薬、Na-K-ATPaseはOuabain、Kチャネルは臭素で阻害可能ですから、こういった薬剤を投与することによって腎臓に存在する重要なトランスポーターの機能を見ることもできます。
軟骨魚類の多くは血漿の浸透圧が海水と同様に高く、ureaは350-400mOsmと極めて高値です!これは海水の高浸透圧環境から身を守るためですが、尿毒症の症状はないのでしょうか?実はこの高いureaは軟骨魚類の細胞が正常に機能するためには必須でることが分かっています。すなわち浸透圧をurea以外で高く保った環境においても細胞は正常に機能しません。きっと彼らには、高いurea濃度を要しかつそれから身を守る物質があるのでしょう。これが何かを解明できれば人の尿毒症の治療に応用できるかもしれないですね。それとも、ureaは尿毒症物質ではないのかもしれません。
Bull sharkやAtlantic Stingray (エイ) は海水のみならず淡水でも生きていけます。彼らは淡水環境(浸透圧の低い)にいくと、浸透圧差から水分をより多く吸収しますが、腎臓(糸球体と尿細管)が頑張って水を排出していて、rectal glandの機能も極めて抑制されます。Bony fishと違い、軟骨魚類は体液管理に関しては腎臓が大きく関与していることが分かります。Bull sharkは淡水で産卵しますが、これは他のサメから子供を守るためとされています。塩水、淡水の両方で生きていける環境適応機能の高い魚は生存能力が高いのです。
T.S
Salt Secretion(MDIBL: Origins of Renal Physiology)
October 29, 2010 (14 years ago)
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