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血漿交換ガイドライン2010(その2)

 Category 1(血漿交換が標準的治療として推奨される)に分類された疾患はこの表のとおりです。
今回のガイドライン改定で腎臓に関して新たにcategory 1に加わったのは下記です。
1) 透析を要するANCA腎炎、
2) 腎移植後の再発性FSGS
3) Complement factor H (CFH) 関連のHUS

1)ANCA血管炎に伴う急速糸球体腎炎の治療の原則は、副腎皮質ステロイド・サイクロフォスファマイドですが、それに血漿交換を併用したスタディーがいくつかあります。いずれも血漿交換併用による患者死亡率の改善は見られなかったのですが、最近のこの研究からもわかるように、Cr>5.8や透析を要した患者をサブ解析した群では血漿交換の併用による腎予後の改善がありました。

2)FSGS→腎不全患者における腎移植後のFSGS再発率は20-30%で、グラフトの予後もあまりよくありません。血漿交換は原発性FSGSには無効ですが、なぜか腎移植後の再発性FSGSには有効です。その機序はよくわかっていないのですが、血清中のcirculating permeability factorを除去するからではないかと推察されています。この後ろ向き研究からは、FSGS→腎不全で腎移植を受け、のちにFSGSが再発した患者50人程度にcalcineurin inhibitor、ACE阻害薬に加え、血漿交換を行うと、再発性FSGSの8割を完解(かそれに近い)に持ち込めたと結論しています。
DDD.jpg
3)CFHは補体(alternative pathway)の活性を抑制する働きをもっていますが、なんらかの原因で抗CFH抗体ができるとCFHが消費され、補体の活性異常を招き、血管内皮細胞障害を呈します。ところで、category 1に位置づけられているTTPですが、これはADAMTS13と呼ばれる酵素が関与しています。ADAMTS13は血管内皮細胞にあるvWFを開裂する作用をもっていますが、何らかの原因でこの酵素に抗体ができADAMTS13が消費されるとvWFに血小板が異常凝集を起こしTTPを発症します。CFH抗体によるHUSはTTPに類似していますしmedical emergencyの一つです。

遺伝的にCFHが欠損もしくは減少することにより生ずるHUSがありますが、これはcategory 2に入ります。CFH 欠損のHUSはCFH遺伝子のheterozygous mutationにより発症します。また、とても稀なのですが、以前MPGN type2と呼ばれていた疾患は現在ではDense deposit disease(DDD)と呼ばれ、CFH遺伝子のhomozygous mutationによることが分かっています。 この図からもわかるように、CFHが欠損または減少するとC3bがfactorBを介しC3bBbを形成しますが、このC3bBbはなぜかDDDでは安定化してしまい、最終的にはMembrane attack complex (MAC) へと変わり内皮細胞障害をおこします。またDDDの80%以上にC3bBbを安定化させる、C3NeF抗体の存在が確認されています。

興味深いのが、マウスのCFH遺伝子をノックアウトするとDDDをおこすのですが、このマウスのfactorBも同時にノックアウトするとDDDは発症しないそうです!このあたりに治療のターゲットが潜んでいるかもしれませんね。実際C5 inhibitorを用いた実験ではよい結果が出ているようです。DDDは基本的には小児の疾患で、小児ネフローゼ症候群の1-2%程度と稀ですが、腎移植による疾患の再発率は100%で、CFH遺伝子異常によるHUSも高率に移植後、TMAをおこすことが知られています。

次回はcategory 2 の腎疾患について書いてみたいと思います。

T.S
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