「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

   日本・アメリカそれぞれの話題をお届けします日米腎臓内科ネット
<< January 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

CRRTも高血流

前回、欧米では血液透析の血流が日本に比べて速いことを書きましたが、これは持続血液透析に関しても同様なことが言えます。CRRT(Continuous Renal Replacement Therapy)はこちらではCVVH(DF)(Continuous Veno-Venous Hemo(dia)filtration)と呼ぶことが多いです。CRRTは、Sepsisなど血行動態が不安定な患者さんに対して、通常のBUNやCrなどの小分子を透析の拡散作用(diffusion)によって除去するほか、インターロイキンなど炎症に伴う液性因子などの中分子を濾過(filtration)することにより血行動態を安定させる目的で使用されます。その特徴は通常の血液透析に比べ、血流や透析液流を低く設定し、時間も通常は24時間以上かけてゆっくり回すことです。少なくともそれが血行動態の安定を図る重要な要素であると思っていました。

CVVH.jpg

しかし、こちらでは全くその理論が通用しないといいますか、やはり通常の血液透析同様、血流は当院では200ml/min程度で回します。さらに先日、透析器を作るN社の説明を聞いて正直驚きました。最近の持続透析器は大変にコンパクトで、外見からはCRRTの機械とは思えないほどでした。Volumetric balancing fluid managementと呼ばれる機能が付いていて、要は透析液や補液バックの計量計がついていなく、ICUなどで人が機械にぶつかってもアラームが鳴らないようになっています。回路も小さく体外循環量も少なくてすみます。一番驚いたのはCHDFの設定が付いてないことです!CHDかCHFしかないのです。この理由を聞くと、最新のダイアライザーは高性能な膜を使用しているため、通常の透析でも中分子の除去にも優れ、diffusionでもconvectionでもあまり分子の除去に差をきたさないようです。実際CHDかCHFによる透析と生命予後の差をはっきりと証明した文献はありません。

この透析器を使用している施設は全米で多々あるのですが、いずれも高血流(300ml/minから400ml/min)で、透析液流も通常よりは高めの設定をしているようです。といっても、通常のIntermittent HDに比べ、透析液流は比較にならないほど遅いわけですので、これだけの高血流が透析効率にどれだけ寄与しているかは疑問です。

しかし高血流の利点は、抗凝固剤を必要としないことです。こういったCRRTを必要とする患者さんは重症かつ易出血性があることも多く、抗凝固剤を使用しないに越したことはありません。またコストの面でもナファモスタットなどの抗凝固剤は高価です。ちなみにアメリカでは抗凝固剤であるナファモスタットはFDAの認可が下りていないため、もっぱらcitrateを使用します。Citrateはいいのですが、Caと結合するため、イオン化Caの測定を定期的に行い、Caの補充を調整する必要があります。
また余談ですがそもそも急性腎障害を呈した患者さんに持続血液透析と通常の血液透析のどちらを選ぶべきかという問題もあります。この文献からはいずれの透析法でも生命予後に差はないことが報告されています。またSLED(Sustained low efficiency dialysis)と呼ばれる通常の透析を長くゆっくりと行う方法もあります。しかし実際、CRRTが行える環境ならCRRTを選ぶところが多いようです。

以上、通常透析でもCRRTでも、日本では高血流透析は主流ではありませんが、「血流を早くすると血圧が下がる、血行動態を不安定にする」ことはなく、血圧に関与するのは1)除水量、2)体外循環量、3)透析流量であること、欧米で高血流透析は普通に行われていることから、その利点(透析効率を上げることや抗凝固剤を必要としない)は十分にあることは特筆すべきことです。

T.S
固定リンク | この記事を編集する | comments(0) | trackbacks(0)
< 日帰り腎生検 | 腎結石update >
ARCHIVES
OTHERS