「日米腎臓内科ネット」活動ブログ

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酸塩基平衡(4)

実際、人が食事から産生する酸はHClではありませんので、これを仮にHA(A- はCl-以外の陰イオン)とします。HAはHCO3-によって緩衝を受けますので
HA + HCO3- → A- + CO2 + H2O
となり、このA-は普段直接測定しない陰イオン(UA)となります。
体内に陽イオンと陰イオンは等量存在しますが、K+と普段測定しない陽イオン(UC)は極めて少ないので大まかに陽イオンはNa+です。また陰イオンはCl-と HCO3-で残りがUAということになります。このUAをアニオンギャップ(AG)ともいって、通常は8-10meq/L程度になります。体内で有機酸(HA)が増えると、A-が増加しAGも増加します。
mudpiles.JPG
それでは、AGが増加する状態(有機酸が増えた状態)にはどんなものがあるでしょうか?
アメリカでは語呂合わせで“MUDPILES”と覚えます。内容ですが
M: Methanol
U: Uremia
D: DKA/alcohol ketoacidosis
P: Propylene glycol (古くめったに見ないものとしてPhenformin, paraldehyde)
I: Isoniazid
L: Lactic acidosis
E: Ethylene Glycol
S: Salicylate
をさします。
すべて説明はしませんがもっとも多いのが乳酸アシドーシスですので例をみてみます。

68 男性、3日間の排尿痛、発熱、倦怠感を主訴に来院。 BP 90/50 HR 110
Na 138, K 3.1, Cl 110, HCO3 18, Glu 125, BUN/Cr 26/1.1, alb 2.0
pH 7.30 pCO2 33

まず
1.pHが7.30とアシドーシスがあります。
2.HCO3が18と低く代謝性アシドーシスがあります
3.呼吸性代償は予想CO2= 1.5 x 18 +8 ±2=33からされています
4.AGは138-110-18=10ですが低アルブミン血症があるので(メモ参照)2.5x2=5を加えAG=15とAG性代謝性アシドーシスがある

したがってこれは正常に呼吸代償されているAG性代謝性アシドーシスです。
実際この症例は尿路感染症による低血圧、循環不全から乳酸性アシドーシスを呈している症例でした。

次回は混合性酸塩基異常の鑑別方法(ΔAG/ΔHCO3)についてです。

T.S

メモ)AGの多くはマイナス荷電した血漿タンパクで、アルブミンはマイナス荷電している代表的なタンパクです。したがって低アルブミン血症があるとAGも低くなるので注意が必要です。具体的にはアルブミンが1g/dL↓につきAGは2.5meq/L↓となります。一方、免疫グロブリンはプラスに電荷しているため、多発性骨髄腫など免疫グロブリンの上昇がみられる場合などはAGが陰性になることもあります。
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