先日、フロリダにいる日本人の先生から教えて頂いたのですが、世にある論文がどれだけ信用のおけるものかを試したおもしろい記事を紹介します。最近は、open access journalとよばれるオンライン出版のみのジャーナルが増えています。投稿する方からしてみると出版の機会は増えて嬉しいのですが、問題はその質です。今までの学会誌ジャーナルは学会メンバーの会費で運営がなされているのに対して、オープンアクセスジャーナルは投稿者により出資されることが大きな違いです。つまり、投稿論文が少ないとお金になりません。
質に関してはいずれのジャーナルも投稿内容はpeer reviewといって、出版前に専門家により通常は査読されます。このpeer reviewという制度はしっかりと行われれば素晴らしい制度だと個人的には思っています。投稿内容に対して、専門家が手直しや追加により改善できることを示してあげるなど、内容をより良くする手伝いをするといった具合です。しかし、査読という作業は一般の科学者が奉仕的に行うもので、とても時間と手間がかかり、大変なわけです。また査読はどこかでしっかりとやり方を学ぶ機会はほとんどなく、なんとなく習っていく人が過半数だと思います。査読の現在の問題点やどうしたらよいかについて「査読の心得」という素晴らしい記事がありますので読んでみてください。
さて、本題の記事ですが、筆者はニセの名前、所属、国!を作りあげ、高校卒業程度の知識があれば、偽であることがすぐに判明する内容のニセ論文を300通り作り、世にあるオンラインジャーナルに一斉に投稿したそうです。その結果なんと、半分以上のジャーナル(神戸大学を含め)で受理されたそうです!受理しなかったジャーナルはおそらくpeer reviewに出されたのでしょうが、受理されたものはそういった過程を全く踏んでいないことになります(reviewを受けて受理されていたらもっと問題ですが)。論文の質よりも多く出版することに重点をおいてしまうオープンアクセスジャーナルの実態を見事に暴いた内容です。したがって、世にある論文の中には、査読を受けていなく、科学的な内容、実験方法や統計学的分析などに関して基準を満たしていない、読む価値の低い論文が多々あることが予想されます。さらに問題なのが他の論文や総説などによりこういった科学的に価値の低い内容の論文を題名や要旨だけで内容を判断し、引用してしまうことです。この論文はさらに次から次へと違う論文へ引用されてしまう。
これをgarbage in garbage outといいます。門番のいないオープンアクセスジャーナルが次々とあらわれ、garbage in garbage outはますます加速する可能性があります。困ったものです。
では、インパクトファクターの高いジャーナルは本当に内容的に信用していいのでしょうか?次回はそのあたりについて書いてみます。
T.S
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