酸塩基平衡(3)

HCO3-による酸の緩衝から遅れてH+は細胞内や骨内に移行します。ここでH+はタンパク、リン酸、炭酸カルシウムなどにより緩衝されます。したがって同じように12meq/LのH+負荷をした場合、実際HCO3-はもう少し減少し19meq/L程度になると考えます。PCO2は40mmHgで変わらないと仮定した場合、
[H+] =24×40/19=51nanoeq/LとなりpHは7.29となります。

このように細胞や骨の緩衝はpHの変化を更に少なくとどめるよう調整しているわけです。
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実際、酸の負荷は呼吸換気を促します。したがって換気によりCO2は排出され、血中のCO2は低下します。これが呼吸代償です。呼吸代償の程度はある程度予測できます。
極端なアシドーシスがなければ大まかには
予想CO2はHCO3-に15を足した値になります。
(正確にはWintersの公式:予想CO2=HCO3-x 1.5 + 8 ±2) 

したがって前回書いた通り、HCLを投与した直後のHCO3が12だとすると、呼吸代償により予想されるCO2は12+15=27となり

[H+] =24×27/12=54nanoeq/LとなりpHは7.10ではなく7.25程度となります。

さらに、しばらくして細胞や骨での緩衝が加わると
上記からHCO3-が19として予想CO2は19+15=34となり

[H+] =24×34/19=43nanoeq/LからpHは7.37程度とほぼ完全にアシドーシスが代償されたことになります。

このように、人はHCO3などの緩衝システムと呼吸代償により産生される酸の多くを処理できるのです。

次回はアニオンギャプについてです。

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